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第七部・双子襲来 編
三人組と遭遇 ★
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彼らといると緊張続きだが、美味しい物を食べてリラックスし、笑顔で会話を続けていた時――。
(げ)
聞き覚えのある声がしたかと思うと、もう二度と会いたくないと思っていた三人――飯山と子分格の二人、――益田、明野が二階に上がってくるところだった。
『カスミ、知り合い?』
アロイスがなぜかドイツ語で話し掛けてきたので、香澄もそれに応じる。
『会社の人です』
『へぇ、平日なのにこんな所にいるんだ?』
クラウスの青い目は何か楽しそうな事を考えるように、キラキラと光っている。
「赤松さん偶然だね。その外人は彼氏? すっごいゴージャスだね?」
「社長がいるのに、双子の外人とよろしくやってるの? 凄いねぇ……」
なぜだかドン引きされた顔をされ、香澄は慌てて弁明する。
「いえ。こちらは社長の従兄さんなんです。クラウザー社の会長のお孫さんで、『アロクラ』のデザイナー兼社長です」
できるだけ正確に双子の立場を説明すると、三人の双子を見る目が変わった。
「すっご……。で、こんなに美形なの?」
「赤松さん、なんでそんな人と一緒にランチしてるの?」
手に取るように三人の羨望が分かり、非常にやりづらい。
「彼らはバカンス中でして。親日家な事もあり、日本に遊びに来られたようです」
「へぇ……。で、東京案内してるんだ? 役得だね?」
「社長はいま出張中なの?」
「はい」
嘘をつく訳にもいかず、香澄は素直に答える。
ここで変に誤魔化してバレてしまえば、何を言われるか分からない。
飯山が皮肉げな顔をし、赤いルージュを塗った唇をせせら笑いの形に歪めた。
「赤松さんがシンデレラガールなのはいいけど、社長がいない隙にハメ外さないようにね? 誰と何をしても勝手だけど、もし証人として何か情報提供するような事があれば、私たち嘘つけないし」
浮気を疑われ香澄は呆れ顔になる。
「そんな事にはなりません」
「そうそう。社長って赤松さんに本当にご執心みたいだしね? お陰で私たちクビになったけど」
益田に憎々しげな目で見られ、香澄は「え……っ」と息を呑む。
「知らなかったの? 私たちが赤松さんとちょっと話しただけで、クビにされちゃった。あの時だってちょっと飯山さんの足がぶつかっただけなのにね? 観光地に松葉杖で来る方がどうかしてると思うけど」
「そ……れは……」
現在進行形の陰湿な言葉も、彼女たちがクビになったという衝撃で頭に入ってこない。
(佑さん、いつの間に……!?)
「私たちをクビにするほど社長に愛されてるんだからさ? 赤松さんもあんまり勘違いされるような事してると、他の人にビッチって言われても仕方ないよ? 外人ってキスとかハグとか当たり前にしてくるんでしょ?」
「そうそう。それだけイケメンでいい体してるから、ちょっと迫られたら赤松さんも断れないんじゃないの?」
もうクビ宣告されたからか、開き直った飯山たちの言葉は容赦がない。
カフェなので「ガバガバ」など言わないが、かなり際どい事まで言われている。
アロイスとクラウスの事も、日本語が分からないと思っているのかお構いなしだ。
「イケメンとかいい体とか、色々ありがとね。お礼に抱いてあげようか?」
不意に、脚を組んだクラウスがニッコリと微笑みながら、それは流暢な日本語で言い返した。
飯山たち三人はギョッとし、表情を強張らせる。
「キスもハグも普通に挨拶としてするよ? 〝ガイジン〟だから当たり前にね?」
(あ、やばい)
双子の声音を聞いただけで、香澄は彼らが苛ついているのが分かった。
逆に彼らからすれば、北アジア人の顔つきを判別するのは難しいらしい。
しかし人付き合いをする時は、個人を尊重して名前と顔をきちんと覚えている。
それなのに飯山たちには〝外人〟と他の国の人と一緒くたにされ、カチンときたのだろう。
「え? やだちょっと日本語ペラペラなんですね? 赤松さんと一緒にいるのに、抱くとか軽々しく言ったら駄目ですよぉ。本当にフレンドリーなんですね?」
双子の外見が好みなのか、明野が顔を赤らめてしなを作る。
「僕たち日本人好きだから、今度デートしようか?」
クラウスが微笑んで三人を誘うが、その青い目は笑っていない。
――のに、彼女たちは気付いていない。
「やだぁ。赤松さんと一緒にいるのにそんな事言ったら駄目ですよぉ。赤松さんかわいそー。一緒にいる女の子ぐらい、ちょっと立たせてあげないと。魅力がないって言ってるも同然ですよぉ?」
ワントーン上がった声で益田が笑い、飯山と明野も笑う。
(げ)
聞き覚えのある声がしたかと思うと、もう二度と会いたくないと思っていた三人――飯山と子分格の二人、――益田、明野が二階に上がってくるところだった。
『カスミ、知り合い?』
アロイスがなぜかドイツ語で話し掛けてきたので、香澄もそれに応じる。
『会社の人です』
『へぇ、平日なのにこんな所にいるんだ?』
クラウスの青い目は何か楽しそうな事を考えるように、キラキラと光っている。
「赤松さん偶然だね。その外人は彼氏? すっごいゴージャスだね?」
「社長がいるのに、双子の外人とよろしくやってるの? 凄いねぇ……」
なぜだかドン引きされた顔をされ、香澄は慌てて弁明する。
「いえ。こちらは社長の従兄さんなんです。クラウザー社の会長のお孫さんで、『アロクラ』のデザイナー兼社長です」
できるだけ正確に双子の立場を説明すると、三人の双子を見る目が変わった。
「すっご……。で、こんなに美形なの?」
「赤松さん、なんでそんな人と一緒にランチしてるの?」
手に取るように三人の羨望が分かり、非常にやりづらい。
「彼らはバカンス中でして。親日家な事もあり、日本に遊びに来られたようです」
「へぇ……。で、東京案内してるんだ? 役得だね?」
「社長はいま出張中なの?」
「はい」
嘘をつく訳にもいかず、香澄は素直に答える。
ここで変に誤魔化してバレてしまえば、何を言われるか分からない。
飯山が皮肉げな顔をし、赤いルージュを塗った唇をせせら笑いの形に歪めた。
「赤松さんがシンデレラガールなのはいいけど、社長がいない隙にハメ外さないようにね? 誰と何をしても勝手だけど、もし証人として何か情報提供するような事があれば、私たち嘘つけないし」
浮気を疑われ香澄は呆れ顔になる。
「そんな事にはなりません」
「そうそう。社長って赤松さんに本当にご執心みたいだしね? お陰で私たちクビになったけど」
益田に憎々しげな目で見られ、香澄は「え……っ」と息を呑む。
「知らなかったの? 私たちが赤松さんとちょっと話しただけで、クビにされちゃった。あの時だってちょっと飯山さんの足がぶつかっただけなのにね? 観光地に松葉杖で来る方がどうかしてると思うけど」
「そ……れは……」
現在進行形の陰湿な言葉も、彼女たちがクビになったという衝撃で頭に入ってこない。
(佑さん、いつの間に……!?)
「私たちをクビにするほど社長に愛されてるんだからさ? 赤松さんもあんまり勘違いされるような事してると、他の人にビッチって言われても仕方ないよ? 外人ってキスとかハグとか当たり前にしてくるんでしょ?」
「そうそう。それだけイケメンでいい体してるから、ちょっと迫られたら赤松さんも断れないんじゃないの?」
もうクビ宣告されたからか、開き直った飯山たちの言葉は容赦がない。
カフェなので「ガバガバ」など言わないが、かなり際どい事まで言われている。
アロイスとクラウスの事も、日本語が分からないと思っているのかお構いなしだ。
「イケメンとかいい体とか、色々ありがとね。お礼に抱いてあげようか?」
不意に、脚を組んだクラウスがニッコリと微笑みながら、それは流暢な日本語で言い返した。
飯山たち三人はギョッとし、表情を強張らせる。
「キスもハグも普通に挨拶としてするよ? 〝ガイジン〟だから当たり前にね?」
(あ、やばい)
双子の声音を聞いただけで、香澄は彼らが苛ついているのが分かった。
逆に彼らからすれば、北アジア人の顔つきを判別するのは難しいらしい。
しかし人付き合いをする時は、個人を尊重して名前と顔をきちんと覚えている。
それなのに飯山たちには〝外人〟と他の国の人と一緒くたにされ、カチンときたのだろう。
「え? やだちょっと日本語ペラペラなんですね? 赤松さんと一緒にいるのに、抱くとか軽々しく言ったら駄目ですよぉ。本当にフレンドリーなんですね?」
双子の外見が好みなのか、明野が顔を赤らめてしなを作る。
「僕たち日本人好きだから、今度デートしようか?」
クラウスが微笑んで三人を誘うが、その青い目は笑っていない。
――のに、彼女たちは気付いていない。
「やだぁ。赤松さんと一緒にいるのにそんな事言ったら駄目ですよぉ。赤松さんかわいそー。一緒にいる女の子ぐらい、ちょっと立たせてあげないと。魅力がないって言ってるも同然ですよぉ?」
ワントーン上がった声で益田が笑い、飯山と明野も笑う。
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