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第七部・双子襲来 編
心当たり
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「……撮られてますね」
「まぁ、慣れてるから大丈夫。もしSNSにカスミの写真が載るような事があったら、俺たちからSNSの運営に削除依頼するから、そこは任せといて」
こともなげにアロイスが言い、香澄は少し意外に思う。
「いつもそういう対処をしているんですか?」
「いや? だってカスミ、勝手に撮られて拡散されるの嫌でしょ? 僕たちは広告塔でもあるから別にいいんだけど、カスミは一般人だし」
「あ……はい。ありがとうございます」
クラウスが常識的な事を言うので、意外に思ってしまった。
「ま、俺たちは勝手にカスミを撮るけどね!」
「そこは威張る所じゃありません」
会話をしている間も、「すっごいイケメン双子」「あの人いいなー。逆ハーじゃん」という声が聞こえ、なんとも居たたまれない。
「ねぇ、カスミってさ。あのメールの送り主、ちょっとでも想像つく?」
ふとそんな事を聞かれ、少し気持ちを重たくさせながらも「そうですね……」と思考を巡らせる。
しかし考えてもきりがない。
一番最近の出来事で言えば、飯山たちだ。
もしかしたら香澄が仲良くしている社員伝いに、フリーメールのアドレスを教えてもらっていてもおかしくない。
けれど、簡単に他人の個人情報を教える人と仲良くしている……とも考えたくない。
成瀬たちについては、飯山と仲が悪いので彼女たちの可能性は除外している。
札幌にいる友人に嫉妬された……という可能性を考えても、ここまでの行動を見せる人ではないと思う。
学生時代何だかんだでこじれた人はいるけれど、卒業したあとは音信不通なので、向こうも興味を失っているだろう。
そもそもにして、学生時代の香澄は地味だったので、あまり敵を作るタイプではなかったと思っている。
八谷時代に迫ってきた客や、香澄に告白をしてきたBow tie clubの店長も、そこまで深追いする人ではないだろう。
ドイツではクラウザー家の人以外と面識はないし、皆、アドラーが認めた事により一族総出で味方になってくれたと思っている。
あとは、見ず知らずの人に恨まれている……としか考えられない。
「……分からないんですよね。難癖つけようとしたら全員疑わしいですが、逆に全員そこまでの動機はないと思うんです。誰かがその気になったとして、ちょっとコンピューターに詳しい人に依頼したら、ハッキングって言うんですか? ワールドガーデンのIDやパスワード、メールアドレスを知るなんて簡単そうです」
「まぁ、悪さをするならハッカーっていうかクラッカーだけど」
「クラッカー?」
思わず香澄の頭の中に、ベージュ色のサクサクしたお菓子が浮かんだ。
「ハッカーもクラッカーも、両方コンピューター知識に長けた人間だけど、基本的にイイヤツに分類されるのはハッカーだよ。クラッカーっていう奴の方が悪者で、ワルイコトをするのをクラッキングっていうんだ」
「へええ……。知りませんでした」
「警察に協力するハッカーもいるしね。ま、特殊な存在だし、一度メディアが悪い事件に『ハッカーが……』って言ったら、そういうイメージつくんじゃないの?」
「詳しいんですね」
「別に普通だよ。っていうか、知り合いにハッカーがいるからっていうだけ」
「それも凄いですね」
双子は歩いては歩行者の服装を見て、時々立ち止まって何やらメモをしている。
頭に浮かんだアイデアでも書き留めているのだろうか。
「さっき僕もさ、その知り合いに頼もうかなって思ったけど、ワールドガーデンの事なら、会社内から調べた方が手っ取り早いと思って」
「そうそう。弁護士使うのは正当な手だけど、多少の我が儘が効くなら〝上〟から言ってもらって、カスミにメールを送った人を特定できそうじゃん。まー、あんまり意味はなさそうな気がするけどね。東南アジアとかインドとか、頼まれたらSNSのいいねフォロー稼ぎも、何だってする組織があるし。大元がカスミのアカウントをクラッキングして、下請けにこういう内容のメールを送ってほしいって言ったら、そこで蜥蜴の尻尾切りができる」
「その末端を調べて依頼者をゲロさせるのも、ちょっと時間かかるしね。だからカスミは基本的にオーパに任せておけばいいよ」
「……なんか、すみません。私なんかのために。嫌がらせのメールもらっている人は、他にも大勢いるのに」
視線を落とした呟いた時、グイッと腕を引かれアロイスの腕の中に収まっていた。
顎をしっかりと掴まれ、キスをする時のように上向かされる。
「カスミ、それダメ。日本人の悪い癖だよ。『私なんか』って」
「あ……」
しまった、と香澄は内心顔を歪める。
佑にも常々言われている事が、落ち込んで卑屈になったせいで、ついポロリと出てしまった。
「まぁ、慣れてるから大丈夫。もしSNSにカスミの写真が載るような事があったら、俺たちからSNSの運営に削除依頼するから、そこは任せといて」
こともなげにアロイスが言い、香澄は少し意外に思う。
「いつもそういう対処をしているんですか?」
「いや? だってカスミ、勝手に撮られて拡散されるの嫌でしょ? 僕たちは広告塔でもあるから別にいいんだけど、カスミは一般人だし」
「あ……はい。ありがとうございます」
クラウスが常識的な事を言うので、意外に思ってしまった。
「ま、俺たちは勝手にカスミを撮るけどね!」
「そこは威張る所じゃありません」
会話をしている間も、「すっごいイケメン双子」「あの人いいなー。逆ハーじゃん」という声が聞こえ、なんとも居たたまれない。
「ねぇ、カスミってさ。あのメールの送り主、ちょっとでも想像つく?」
ふとそんな事を聞かれ、少し気持ちを重たくさせながらも「そうですね……」と思考を巡らせる。
しかし考えてもきりがない。
一番最近の出来事で言えば、飯山たちだ。
もしかしたら香澄が仲良くしている社員伝いに、フリーメールのアドレスを教えてもらっていてもおかしくない。
けれど、簡単に他人の個人情報を教える人と仲良くしている……とも考えたくない。
成瀬たちについては、飯山と仲が悪いので彼女たちの可能性は除外している。
札幌にいる友人に嫉妬された……という可能性を考えても、ここまでの行動を見せる人ではないと思う。
学生時代何だかんだでこじれた人はいるけれど、卒業したあとは音信不通なので、向こうも興味を失っているだろう。
そもそもにして、学生時代の香澄は地味だったので、あまり敵を作るタイプではなかったと思っている。
八谷時代に迫ってきた客や、香澄に告白をしてきたBow tie clubの店長も、そこまで深追いする人ではないだろう。
ドイツではクラウザー家の人以外と面識はないし、皆、アドラーが認めた事により一族総出で味方になってくれたと思っている。
あとは、見ず知らずの人に恨まれている……としか考えられない。
「……分からないんですよね。難癖つけようとしたら全員疑わしいですが、逆に全員そこまでの動機はないと思うんです。誰かがその気になったとして、ちょっとコンピューターに詳しい人に依頼したら、ハッキングって言うんですか? ワールドガーデンのIDやパスワード、メールアドレスを知るなんて簡単そうです」
「まぁ、悪さをするならハッカーっていうかクラッカーだけど」
「クラッカー?」
思わず香澄の頭の中に、ベージュ色のサクサクしたお菓子が浮かんだ。
「ハッカーもクラッカーも、両方コンピューター知識に長けた人間だけど、基本的にイイヤツに分類されるのはハッカーだよ。クラッカーっていう奴の方が悪者で、ワルイコトをするのをクラッキングっていうんだ」
「へええ……。知りませんでした」
「警察に協力するハッカーもいるしね。ま、特殊な存在だし、一度メディアが悪い事件に『ハッカーが……』って言ったら、そういうイメージつくんじゃないの?」
「詳しいんですね」
「別に普通だよ。っていうか、知り合いにハッカーがいるからっていうだけ」
「それも凄いですね」
双子は歩いては歩行者の服装を見て、時々立ち止まって何やらメモをしている。
頭に浮かんだアイデアでも書き留めているのだろうか。
「さっき僕もさ、その知り合いに頼もうかなって思ったけど、ワールドガーデンの事なら、会社内から調べた方が手っ取り早いと思って」
「そうそう。弁護士使うのは正当な手だけど、多少の我が儘が効くなら〝上〟から言ってもらって、カスミにメールを送った人を特定できそうじゃん。まー、あんまり意味はなさそうな気がするけどね。東南アジアとかインドとか、頼まれたらSNSのいいねフォロー稼ぎも、何だってする組織があるし。大元がカスミのアカウントをクラッキングして、下請けにこういう内容のメールを送ってほしいって言ったら、そこで蜥蜴の尻尾切りができる」
「その末端を調べて依頼者をゲロさせるのも、ちょっと時間かかるしね。だからカスミは基本的にオーパに任せておけばいいよ」
「……なんか、すみません。私なんかのために。嫌がらせのメールもらっている人は、他にも大勢いるのに」
視線を落とした呟いた時、グイッと腕を引かれアロイスの腕の中に収まっていた。
顎をしっかりと掴まれ、キスをする時のように上向かされる。
「カスミ、それダメ。日本人の悪い癖だよ。『私なんか』って」
「あ……」
しまった、と香澄は内心顔を歪める。
佑にも常々言われている事が、落ち込んで卑屈になったせいで、ついポロリと出てしまった。
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