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第七部・双子襲来 編

第七部・序章1 お盆の札幌行き ☆

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「ん……、あぁ……、――ぁ……」

 自分の中で佑がビクビクと跳ね、最奥を温かく濡らしてゆく。
 充足感を覚えつつ、香澄は佑にキスをねだった。

「佑さん……キス……」
「香澄……」

 少し掠れた声が名前を呼び、熱くなった手が香澄の顎を捉える。
 汗で濡れた顔の輪郭をなぞり、濡れた唇を最後に確認して――唇が重なった。

「ん……、ふ、……ん、ちゅ……」

 八月に入り、佑の仕事も少し落ち着いてきた。

 店頭は夏物セールと同時に秋物の入荷が始まり、十二月の次年度春夏展示会に向けてまたスタートの時期だ。
 全国、世界にある店舗から売り上げ変動などを毎日チェックし、店の拡大縮小など考えつつ〝次〟のステップへ慎重に進めてゆく。

 佑がいま視野に入れているのは下着専門のブランドだ。

 出張でも例のピコ・フルールの社長兼デザイナーと会う事も多く、フランス、イタリア、サイズ展開の広さではアメリカ、そして情熱的なスペインやコルセットに拘ったイギリスなど、世界に目を向けると果てがない。
 加えて国内でも都内の高級下着ショップに足繁く通い、気になった物を買っては香澄につけさせている。

 ここのところ、香澄にあちこちの下着をつけさせては、付け心地や鏡で見た時の気分を聞き、その上で男受けとして自分がどう興奮するかをベッドでもって確認していた。

 なので、ベッドの上には脱がされた高級レースと刺繍の下着が無造作に置かれ、香澄はガーターベルトをつけ片方だけガーターストッキングを穿いていた。

 現在ギプスは寝る時と入浴時のみ外していい事になっている。

 手術跡にはまだテープがあるが、香澄は大喜びで風呂に入り、ずっと洗えていなかった脚を念入りに洗った。
 佑も「手伝おうか」と言ってくれたのだが、匂いケアをしていたとはいえ、しばらくぶりの我が素肌である。

 ギプスの下に隠れていた肌には、生理的に仕方がないが垢が分厚い層のように重なっていた。
 香澄は内心「ひええ……!」と思いつつ、満足いくまで脚を洗った。

 その結果、膝上と色が違っていたように見えた脚は元の色を取り戻し、臭いも収まった。
 最後に大好きなジョン・アルクールのボディクリームを塗り込めば、いつもの香澄が完璧に戻って来る。

 その上で佑に抱いてもらったので、今夜は本当に幸せなセックスができた。

「明日……、月曜日か」

 屹立を抜き、佑が気だるげに呟く。

「私、お盆過ぎには復帰するから。それまでに問題なく歩けるようにする」
「ん……」

 もう一度キスをし、佑はこれからの香澄とのイイコトを探す。
 ステーキデートは昨日、土曜日の夜に済ませた。

 次に香澄を喜ばせるには何を……と思い、お盆という単語にピンときた。

「香澄、お盆休みは札幌行こうか」
「えっ?」

 驚いて佑を見ると、楽しそうに目を輝かせている。

「お義父さんもお義母さんも、怪我の様子とか心配しているだろ。メッセージやビデオ通話していても、やっぱり直接会えるって大事だと思うし」

「でも……佑さんの方のお墓参りは?」

「あぁ……。それは金曜日に終業したら、その日のうちに向かうよ。ちょっと家族に会って、それから夜の便で札幌に向かえばいい。そうしたら三連休のうち中二日は確保できるだろ。月曜日も祝日だから、昼近くの便に乗れば大丈夫だ」

「けど今時期、チケット取れる?」
「俺の飛行機を飛ばすから問題ないよ」

 こともなげに言うので、一瞬「へ?」と間抜けな声が漏れた。

「休ませてばかりも元手が取れないし、たまに香澄と二人で空の旅もいいな」
「う、うん」

 そういえば佑は自分の飛行機を持っていて、ドイツに行った時もお世話になった。
 しかし国内の近い距離で使うとなると、いささか色んなものが無駄になってしまうのでは……? と心配になってしまう。

「ありがとうね」

 佑が気を遣って札幌行きを決めてくれたと思うと、心の奥が温かくなる。
 香澄のお礼に佑は「ん」と満足気に頷き、頭をポンポンと撫でてくれた。

「それじゃあ、あと一週間仕事頑張るか……。明日も出張、と」

 はぁー、と佑は溜め息をつき、そんな彼を今度は香澄がポンポンと撫でる。

「仕事のできる佑さんが好きだよ」
「あ、もー。ずるいな、香澄は」

「んふふ。じゃ寝よっか」
「んー、また帰ってくるの木曜になるから、もう一回」
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