【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第六部・社内旅行 編

佑の文化意識

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「……頼むから、俺の香澄の体に傷を作らないで」

 そっと唇の傷に触れられると、思わずちゅ、と彼の指先にキスをしてしまった。
 それだけで彼の気持ちがグラリと傾いで、愛撫もせず突っ込んでしまいたくなった……など知らずに。

「……私の体は私のものだよ?」

 ほんのちょっとだけ、反抗してみたくなり、香澄は悪戯っぽく笑って言い返す。

「……俺にそうやって刃向かえるのも、香澄だけだよ」

 佑は喉の奥で小さく笑い、香澄の谷間に唇をつける。

 そのあと彼女の胸元に顔を押しつけ、トクトクと高鳴る鼓動を聞いているようだった。





「俺、香澄に何かあったら、一発でダメになる自信があるな」

 佑は本音をほんの少しだけ漏らす。

「……ふふ。なぁに? それ。そんな自信いりません」

 彼女の笑い声と、サラサラと髪を撫でてくれる手の感触が気持ちいい。
 飯山のような女性と対峙したあとだからこそ、香澄の控えめで優しい性格が心を癒やし包んでくれる。
 おまけにこうして彼女に甘えていると、この上ない母性を感じた。

 アンネは日本人からかけ離れた強い女性なので、日本人男性が求め感じる母性というものを求めるのは、少し違うと思っている。

 誰かに全肯定され、甘やかされたいという子供っぽい思いは、佑の中にだってある。

 アンネの場合は基本的に大らかではあるが、放任主義の動物の母親みたいなところもあり、佑は自らの力でどんどん自分の道を切り開いていかなければならなかった。

 母親がいないと何もできないという育ち方にならなかった事については、とても感謝している。

 けれど実の母がそれであったからか、佑は穏やかで優しい女性に甘えたいという願望を持っていた。

 同時にうっすらと、アンネがたまに香澄に対して試すような言動を取るのも、そこにあるのではと感じている。
 息子が自分と真逆の女性を望んだから、母としては香澄を頼りなく思っているのだろう。

 学生時代、長期休みの時には必ずドイツに連れて行かれた。

 クラウザー家関係で招待され、友人になった女性はもれなくタフな女性という印象だった。
 エミリアは優しげな印象だが、言いたい事はハッキリ言うし、根っこの部分は強いドイツ女性だと思っている。

 アンネは日本語がペラペラだし、並みの日本人以上に日本文化に造詣が深い。
 しかし彼女の根っこの部分はドイツ人だ。
 言いたい事を言うスタイルは、双子ととても似ている。
 おっとりとした節子からよくこんな娘が生まれたと思うが、そこはアドラーの血が強かったのだろう。

 父は母の尻に敷かれているように見えるが、本当はアンネの方が、衛の物静かで穏やかな性格に惚れ込んでいる。
 佑はそんな両親が好きだし、夫婦としてバランスが取れていると思っている。

 そんな両親を持つ彼だが、生まれ持っての精神は日本人だと自覚していた。

 仕事に対するスタンスや、商談の際の押しの強さはアンネ、または祖父仕込みだ。
 だができるなら騒ぎは避けたいと思う平和主義な性格や、周囲に合わせる事を知っている和の心は、とても日本人的だと思っている。
 加えて神社仏閣を巡るのが好きで、それなのに基本は無宗教な所、おまけに味覚は完全に日本人で、刺身や寿司や味噌や醤油味が大好きだ。

 そのような文化意識なので、当たり前に日本人が好きになる。

 だから十代の時に双子に連れられての、パーティー三昧の日々は本当に苦痛だった。
 双子が選ぶ女性は何事にもあけすけなで、自分には合わない。

 日本人女性が好きな佑は、積極的すぎる面を見ると、逆に萎えてしまうのだ。

 アンネが「この子を恋人にしなさい」とヨーロッパ各国の美少女を連れて来ても、佑は頑として「好きな女の子は自分で決める」と言ってきかなかった。

 あまりにアンネや双子、アドラーの押しが強かった時は、怒って一人で帰国した事もある。

 そして現在、理想と言っていい女性が腕の中にいる。

「本当に俺は、香澄にベタ惚れなんだ」

 絶対に失いたくない女性の鼓動を聞き、佑は彼女の乳首に指を這わせる。

「ん……、ありがとう。私も佑さんが好きだよ」

 香澄は色っぽい吐息をつき、また髪を撫でてくれる。

「香澄」

 のそ……と上体を起こし、佑は肌を晒した婚約者を見下ろす。

「うん?」

 香澄はリラックスした表情で微笑む。

 だが彼女は佑がきっかけで傷付けられてしまった。

 その償いを、どうやったらできるのだろう。
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