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第六部・社内旅行 編
終わりのない悪意 ★
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「赤松さんって地味だけど、どっかエロさがあるから、絶対社長は性的に見てるよね。オフィスでの服装だって、どっか狙ってない?」
(狙ってません!)
むしろ、会社で見る飯山の方こそ、ボディラインを強調するデザインの服を着ていたり、ヒールの高い靴を履いていて女性らしさを強調している。
けれど服装なんてものは公序良俗に反さず、会社が認める範囲内でなら、誰が何を着ても自由だ。
香澄は秘書というだけあり、清潔感を第一に毎日着る服を考えている。
何を着ていても、「エロい」と思う人はどんな格好をしていてもそう思う。
(自分たちがそう言われたら嫌がるくせに)
心の中で文句を言うが、口に出せばさらなる口論のもとになるので、絶対に言わない。
「だって怪しいじゃない? 高学歴で仕事ができるなら納得できるけど、札幌で他業種の仕事をしていた赤松さんに、Chief Everyの社長秘書が務まるはずがないじゃない」
また痛いところを突かれ、香澄は怒りを抑える。
(高学歴じゃなくてすみませんでしたね! あなた達はさぞ立派な大学を出ているんでしょうね! すごーい!)
「そんなの、枕で勝ち取ったに決まってるよねー」
「していません!」
さすがに否定したが、三人は聞き入れてくれない。
「はいはーい、分かるよ。知られたくないよね。今日だって社長と温泉旅館でしっぽりなんでしょ?」
(しっぽり……)
ついぞ聞かない単語に一瞬固まるが、彼女たちの態度にはもう溜め息しか出てこない。
「社長に飽きられないようにね? ベッドのテクぐらいしか長所がないんだろうけど、四十八手マスターしても、仕事ができなかったら秘書でいる意味なんてないからね?」
侮辱の言葉に、もう一人が便乗する。
「やだぁ。こっそり裏バイトで風俗して、レベルアップしてるとか?」
「社長以外に『売れっ子香澄ちゃん』の常連いたりしてー」
「ドイツでも社長だけじゃ我慢できなくて、極太フランクフルトでも頬張ってたんじゃないの?」
「うけるー。っていうか、あっちの男って日本人より大きいみたいだから、赤松さんもそっちで慣れてガバガバになったんじゃない?」
どんどん会話が下品になり、収集がつかなくなっている。
(終わらせないと)
そう思った香澄は、空気をぶった切るつもりで口を挟んだ。
「すみません。あまり過ぎた事を言われますと、私としましても社長に報告しなければいけませんので」
本当はマグマが煮え立ったような怒りを得ているが、グッと押し殺してビジネススマイルを浮かべる。
「やだ、こわーい。怒った? 怒っちゃった?」
「これぐらいの事で怒ったら、秘書できないんじゃないの?」
「せっかく社長秘書になったのに、短期でクビになったら赤松さんどうするの? 北海道に戻るの?」
彼女たちを怒鳴りつけたい気持ちがこみ上げるが、必死に大人の対応を取った。
「申し訳ありませんが、私も予定がありますので失礼しますね」
そう言って松葉杖に頼りつつ歩き出そうとした時――。
「あっ、ごめーん」
「!!」
足で松葉杖を払われ、香澄は転倒した。
ガンッと脚に強い衝撃が加わり、あまりの痛みに悲鳴すら出せない。
久住と佐野が血相を変えて駆けつけてくる傍ら、飯山たちは「じゃあねー。ガバガバ香澄ちゃん」とけたたましく笑って立ち去っていった。
「――――っ」
地面に這いつくばったまま、香澄はギプスを抱えて悲鳴を押し殺す。
「赤松さん!」
真っ青になった久住が香澄の様子を見て、胸ポケットからスマホを取り出す。
「だいっ、……じょ、……ぶっ、…………ですっ」
佐野に抱き起こされた香澄は、額にひどい脂汗を浮かべていた。
「御劔様に報告します」
「やめてください!」
久住の言葉に、香澄は大きな声を上げる。
驚いて瞠目する久住に、香澄は真っ青になった顔で必死に笑う。
「お願いします……。佑さんに余計な心配をさせたくありません。これからきっと、こういう事が沢山あるんだと思います。社内だけじゃなく、海外とかもっと大きな舞台で似たような事が。私は……負けません。これぐらい、丁度いい洗礼なんです」
グッと目の奥に強い力を込め、香澄は松葉杖を握り締める。
(狙ってません!)
むしろ、会社で見る飯山の方こそ、ボディラインを強調するデザインの服を着ていたり、ヒールの高い靴を履いていて女性らしさを強調している。
けれど服装なんてものは公序良俗に反さず、会社が認める範囲内でなら、誰が何を着ても自由だ。
香澄は秘書というだけあり、清潔感を第一に毎日着る服を考えている。
何を着ていても、「エロい」と思う人はどんな格好をしていてもそう思う。
(自分たちがそう言われたら嫌がるくせに)
心の中で文句を言うが、口に出せばさらなる口論のもとになるので、絶対に言わない。
「だって怪しいじゃない? 高学歴で仕事ができるなら納得できるけど、札幌で他業種の仕事をしていた赤松さんに、Chief Everyの社長秘書が務まるはずがないじゃない」
また痛いところを突かれ、香澄は怒りを抑える。
(高学歴じゃなくてすみませんでしたね! あなた達はさぞ立派な大学を出ているんでしょうね! すごーい!)
「そんなの、枕で勝ち取ったに決まってるよねー」
「していません!」
さすがに否定したが、三人は聞き入れてくれない。
「はいはーい、分かるよ。知られたくないよね。今日だって社長と温泉旅館でしっぽりなんでしょ?」
(しっぽり……)
ついぞ聞かない単語に一瞬固まるが、彼女たちの態度にはもう溜め息しか出てこない。
「社長に飽きられないようにね? ベッドのテクぐらいしか長所がないんだろうけど、四十八手マスターしても、仕事ができなかったら秘書でいる意味なんてないからね?」
侮辱の言葉に、もう一人が便乗する。
「やだぁ。こっそり裏バイトで風俗して、レベルアップしてるとか?」
「社長以外に『売れっ子香澄ちゃん』の常連いたりしてー」
「ドイツでも社長だけじゃ我慢できなくて、極太フランクフルトでも頬張ってたんじゃないの?」
「うけるー。っていうか、あっちの男って日本人より大きいみたいだから、赤松さんもそっちで慣れてガバガバになったんじゃない?」
どんどん会話が下品になり、収集がつかなくなっている。
(終わらせないと)
そう思った香澄は、空気をぶった切るつもりで口を挟んだ。
「すみません。あまり過ぎた事を言われますと、私としましても社長に報告しなければいけませんので」
本当はマグマが煮え立ったような怒りを得ているが、グッと押し殺してビジネススマイルを浮かべる。
「やだ、こわーい。怒った? 怒っちゃった?」
「これぐらいの事で怒ったら、秘書できないんじゃないの?」
「せっかく社長秘書になったのに、短期でクビになったら赤松さんどうするの? 北海道に戻るの?」
彼女たちを怒鳴りつけたい気持ちがこみ上げるが、必死に大人の対応を取った。
「申し訳ありませんが、私も予定がありますので失礼しますね」
そう言って松葉杖に頼りつつ歩き出そうとした時――。
「あっ、ごめーん」
「!!」
足で松葉杖を払われ、香澄は転倒した。
ガンッと脚に強い衝撃が加わり、あまりの痛みに悲鳴すら出せない。
久住と佐野が血相を変えて駆けつけてくる傍ら、飯山たちは「じゃあねー。ガバガバ香澄ちゃん」とけたたましく笑って立ち去っていった。
「――――っ」
地面に這いつくばったまま、香澄はギプスを抱えて悲鳴を押し殺す。
「赤松さん!」
真っ青になった久住が香澄の様子を見て、胸ポケットからスマホを取り出す。
「だいっ、……じょ、……ぶっ、…………ですっ」
佐野に抱き起こされた香澄は、額にひどい脂汗を浮かべていた。
「御劔様に報告します」
「やめてください!」
久住の言葉に、香澄は大きな声を上げる。
驚いて瞠目する久住に、香澄は真っ青になった顔で必死に笑う。
「お願いします……。佑さんに余計な心配をさせたくありません。これからきっと、こういう事が沢山あるんだと思います。社内だけじゃなく、海外とかもっと大きな舞台で似たような事が。私は……負けません。これぐらい、丁度いい洗礼なんです」
グッと目の奥に強い力を込め、香澄は松葉杖を握り締める。
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