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第六部・社内旅行 編

だから連れてきてくれたの?

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 二人とも裸になった状態で、グイッと抱き上げられる。

「香澄の気持ちは分かる。それでもここ一か月近く、俺が触れられなかった部分があるのが嫌なんだ。香澄が手術を堪えた傷を愛でたいし、久しぶりに見られる脚を愛したい」

(……うん。分かってたけど、なかなかの変態だ)

 ここまでくると変態が突き抜けていて、いっそすがすがしい。

 浴室に向かうと、佑の両手は塞がっているので香澄が戸を開けた。
 手がかりのある場所で下ろされ、香澄は壁に頼って立つ。
 シャワーボックスに入ると、佑が香澄の足元から慣らすようにお湯を掛けてゆく。

「……あったかい」

 ふくらはぎ、太腿とお湯をかけられ、お尻にお湯をかけられた時はすべすべと撫で回された。

「草津のお湯って、神経痛、筋肉痛、関節痛、病後回復、疲労回復、健康増進だって。他にも色々あったけど、俺にとって大事なのはこの辺」

(あ……)

 背中から肩にかけてお湯がかけられ、温かいと感じると同時に、心の奥にホッと温もりが訪れる。

 懇親会を「いいな」と言ったのは香澄だが、そのあと遠慮する香澄を誘ってくれたのは佑だ。
 一緒に温泉に入りたいとか、泊まりがけのデートをしたいとか、口実はあった。

 しかしその奥に、湯治目的で香澄を連れ出したのだとしたら……。

「……だから、連れてきてくれたの?」

 思わず振り返ると、彼は自分の体に無造作にお湯をかけ「ん?」と目を瞬かせる。
 今の水音で聞こえなかったのだろうか。

「さっと洗おうか」

 佑はボディソープを手に取ると、香澄の体に塗りたくるように手を滑らせてきた。

「んふふっ、くすぐったい」

 シャワーボックスなので、バスチェアはない。
 壁に手をついて立っていると、あっという間に佑が香澄の体を洗ってくれた。

 そのあと、自分も手早く体を洗い、「露天風呂に入ろうか」と彼女を横抱きしてきた。

 そのまま、彼は悠々と歩いて露天風呂まで向かう。

「下ろすよ」

 檜の浴槽の中にゆっくり体を下ろされ、香澄は無事温泉に入る事ができた。
 佑も隣に座り、微笑みかけてくる。

「あったかいな」

 濡れた手で前髪を掻き上げる佑が、匂い立つほど色っぽい。
 香澄は佑の膝の上にのせられ、恥ずかしいのに逃がしてもらえないでいる。

「……佑さんって、がっつくほど私の事好きなの?」

 先ほどのブラホック問題がまだ頭にあり、香澄は聞き方を間違えた。

(あっ)

 口にした直後に「何て聞き方をしてしまったんだろう」と後悔するが、もう遅い。

「好きじゃなかったら抱かないよ。嫉妬するし、好きだから旅行に連れて来たし、結婚したいと思ってる」

 ストレートな言葉に香澄は赤面し、佑に抱きついて顔を伏せる。

「ん? 甘えんぼか?」

 佑は小さく笑い、香澄の体勢を変えて向かい合わせに跨がらせた。
 静けさが訪れ、チョロチョロと掛け流しの音がやけに大きく聞こえる。
 互いの呼吸音を意識し、触れ合った肌の奥から心臓の鼓動すら知られてしまいそうだ。

「……ごめん、なさい」

 小さな声で謝罪した香澄は、ぎゅうっと佑に抱きついた。

「ん?」
「……さっき。ブラホックを外された時。……慣れてるのかな、やだなって一瞬思っちゃった」

 顔を見ないまま告白すると、数秒佑が沈黙した。

「……あれは慣れてなくても、多分コツを掴めれば誰でもできると思うよ」
「うん。頭の中では理解してたの。……でも、佑さんが昔に誰かの下着をそうしていたんじゃないかって思うと、心の中がどす黒くなっちゃった」

 佑が掌でお湯をすくい、香澄の背中からうなじにかけて手を滑らせる。

「……俺は悪い男だから、嫉妬したって聞いて『嬉しい』って思ってしまった」
「……ばか」

 香澄はカプ、と佑の耳たぶを甘噛みし、悪態を囁く。

「俺の事好き?」

 今度は逆に質問され、じわぁっとさらに赤面する。

「香澄?」

 背中と尻を撫でられ、耳元で低く艶やかな声で尋ねられた。
 ゾクッと腰が震え、知らずと香澄の呼吸が乱れる。

「…………その……」

 急に恥ずかしくなって、声がうまく出ない。

 ゴクッと唾を嚥下した時、もう一度囁かれた。

――――――

 今日6月30日は、佑のリアル誕生日です。おめでとう。
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