【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第六部・社内旅行 編

二つ、俺に言う事があるだろ?

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 戸惑う香澄に向けて、佑はピースサインをしてみせる。

「……え? ピース?」

 思わず香澄もピースサインを真似るが、「違う違う」と苦笑いされた。

「二つ。俺に言う事があるだろ? 推測だけど、それぞれ別物で」

 ドキッと鼓動が跳ね、「どこまで知っているんだろう?」と胸の奥にさざ波が広がってゆく。
 なおも黙っていると、佑は溜め息をついてから切り出した。

「一つは婦人科。なぜ知っているかというと、香澄の行動はスマホのGPSアプリで俺に筒抜けになっている。特に咎めようとは思わない。ただ報告がなかったのが、少し寂しかった」

「……は、はい……」

 やっと返事をすると、佑は小さく頷きティーポットにお湯を注いでゆく。
 気を利かせてデザートを出そうと立ち上がると、「そっちで座ってて」とリビングのソファを示されてしまった。

 こういう時は大人しく言う事を聞いておいた方がいい。
 香澄はソファに座り、落ち着かず膝をすり合わせた。

「特に健康面に問題があるような素振りはなかったから、多分ピルの事だと思っている。当たってる?」
「うん……」

「処方してもらった?」
「うん」

「ん、分かった。ただ、具合が悪くなったらちゃんと報告して。俺にもきちんと心配させてほしい」
「……ありがとう」

 心の中にしまっていた荷物が一つ解放され、気持ちが少し楽になる。

 独断で決めてしまったのに、佑は特にうるさく言わない。
 その理解ぶりがありがたかった。

「昨日ああいう風に言ってしまったから、きっと言い出しづらかったよな。ごめん。香澄の体調が良くなればいいと思ってるし、避妊に繋がるのも嬉しい。もう飲むと決まったなら、俺は身守っているから」
「……うん」

 ホワホワと心が温かくなり、香澄はにっこり笑う。

「ほい、紅茶」

 テーブルの上にティーカップが置かれ、有名陶磁器ブランドのそれには、湯気の立った紅茶が揺らめいている。
 他にも佑がお土産に買ってきたケーキ箱、デザートプレートにスプーンもある。

「ありがとう」
「何食べたい?」

 佑が箱を開くと、シンプルなカスタードプリンと、チョコレート、ストロベリー、抹茶のムース。残りは上にフルーツがたっぷり載っているゼリーが二種類だ。

「あぁ……。ずるい、これ。一個ずつ違うやつだ」

 思わずうなると、佑が声を上げて笑った。

「っはは! たっぷり悩むといいよ。俺は何でもいいから」
「ううー。うー。……佑さんプリン好きだったよね? じゃあ私チョコムース」
「分かった」

 ガラスの器に入ったプリンとチョコレートムースをプレートの上に置き、佑は香澄の隣に座る。

「……いただきます」
「いただきます」

 甘い物は別腹というのも不思議な言葉で、先ほど食事を無理に詰め込んでいた感じがあったのに比べ、こちらはスイスイ食べられる。

「……さっきアロクラからメッセージが入ってた。向こうもちょうど仕事にきりがついた時間帯だったし、思い出したから……という感じだったけど」

 頼むから連絡しないでくれ、と思っていたのに、やはりそうはいかなかった。

「まぁ、電話で話したとかは置いておこう。どうせ向こうも酔っ払ったついでにちょっかい掛けたかったんだろうし」
「……うん」

「様子がおかしかったって……。俺の勘だけど婦人科の事じゃないだろ? 前日に話して『よく考える』って言っていたのに、それを無視して香澄が一人で行動するっていうのは考えにくい。多分、自分の体調を考えて、結構前から考えていたとは思ったんだ」

 さすが、鋭い。

「ん、……うん」

 何から切り出したらいいものか考えつつ、香澄はスプーンを動かす。

「……佑さん、プリン一口食べたい」

 その前に、余計な食い意地が張ってしまった。

「っふふふ……。いいよ。……おっかし」

 シリアスな話をしているというのに食い気を出され、佑は一人静かにツボに入っている。
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