上 下
234 / 1,544
第六部・社内旅行 編

だだ漏れるイケメンオーラ

しおりを挟む
 そしてこういう時しか使わないだろう、高級ブランドのど派手なスカーフをクルクルと折り、ヘアバンドにした。

(こういう使い方、勿体ないんだけどなぁ……。でもスカーフって上級すぎて他に使いどころが分からないし……)

 佑から色々プレゼントされるのだが、中には使い方が分からない物も多くて困る。

 スカーフだって今まで〝大きなハンカチ〟程度しか思っていなかった。
 しかし調べてみたら、首に巻く、肩からかける、ベルト代わり、ヘアバンドなど、色々使用方法があるようだ。

 佑は一枚五、六万円するスカーフを、何枚もプレゼントしてくれていた。

 正直今まで使い方が分からずしまったままにしていたのだが、箪笥の肥やしにするぐらいなら、積極的に使わねば! と思って使用方法を調べたに至る。

 佑はファッションアイテムをプレゼントしてくれる割には、「何と何を組み合わせるといい」とか、「これはこうしてコーディネートする物だ」などまったく言わない。
 彼自身、ファッションは自由であるもの、その人の感性に任せるべきと思っているからこそ、何も言わないのだと思う。

 けれどプレゼントするからには、香澄に似合うと思って選んでいるだろう。

 香澄はもとからファッションにこなれている訳ではないので、「最初から使い方や合わせ方を教えてくれたらなぁ……」とも思ってしまっていた。

(恵まれてるなぁ)

 札幌にいた時はカットソーやシャツにジーンズを穿くだけで、それ以外のお洒落アイテムを使う事はなかった。

 今ではカラーコーディネートも勉強しだし、色の相性などが分かると楽しくなってくる。
 またパーソナルカラーというものも診断してもらい、自分がブルベ夏と言うことも分かった。

(佑さんといると、世界が広がるなぁ)

 やがて支度もできあがり、最後に初めて佑からプレゼントしてもらった、ブルートパーズのペンダントをつけた。

「んー……、手首少し寂しいかな」

 姿見の前に立ってバランスを見ると、剥き出しになった腕が少し寂しい気がする。

「えっと……、あのブレスレットどこにあったっけ。沢山あって……。えっと……」

 アクセサリー用の引き出しをああでもないこうでもないとあさると、青い石がついた華奢なブレスレットを取り出した。
 これだけでも数万円するのを知っているので、できるなら着けたくないが、佑を喜ばせるために勇気を出した。

「うん! これでいいかな?」

 満足して姿見の前で微笑むと、ドイツに向かう前に「夏用に」とプレゼントしてもらった、血色感を引き立たせるリップが艶めく。

「よしっ、佑さん迎えに行くよ。待っててね」

 嬉しくなってまた微笑むと、香澄はスマホと財布、タオルハンカチとティッシュをポシェットに入れた。



**



 佑の飛行機は木曜日の午後に羽田に着陸した。
 すぐ車に乗り換えようとすると、松井がいつもの柔和な笑みを浮かべ「社長」と話しかけてくる。

「何ですか?」
「瀬尾さんから連絡がありました。赤松さんが空港まで、社長を迎えにいらしているようです」

「! 本当ですか?」

 どうして直接言ってくれないんだと私用スマホを見てみても、コネクターナウには何の連絡も入っていなかった。

(……さてはサプライズのつもりなのかな)

 可愛い事をしてくれる、と思うのと同時に、情報が行き違った時の恐ろしさは半端ない。

「どこで待っているという情報はありますか?」
「到着する前に入っていた連絡では、もうすでに展望デッキにいらっしゃり、機体をご覧になろうとしていたようです」

「だとしたら、もう移動している可能性が高いですね」
「どこにいるのかな……。電話するしかないか」

 とりあえず車に乗ったあとは、香澄が迎えに来ているだろう第三ターミナルに向かう事にした。

 第三ターミナルに着くと、佑は薄いブラウンの色がついているサングラスを掛け、勝手知ったる足取りで歩いて行く。

 佑は背が高く色素も薄めなので目立つ。
 おまけにサングラスを掛けていても顔立ちがいいのも丸わかりで、周囲の人々がチラチラと彼を見ていた。

 カジュアルなTシャツにジーンズという格好でも、そのスタイルや姿勢の良さでイケメンオーラがだだ漏れている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

処理中です...