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第六部・社内旅行 編
回想
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しかし、関係はそれだけだ。
時間になると彼女は料金を受け取り、「また呼んでくださいね」とお辞儀をして去っていく。
実に割り切った関係だ。
柔らかくいい匂いのする女性の体を抱いている時は安堵する。
しかし恋をした相手でないという事実は、佑を非常に落ち込ませた。
――どうせ俺は、本当に愛してくれる女性に縁のない男だ。
いじけて自分をそう評価し、随分色んな事を斜に構えて見ていた時期もあった。
だからこそ、心から好きになってもいないのに恋愛をしようとして、失敗した事が何度もあった。
「優しくしたら好きになってくれるかな?」と思ってそうすれば、予想以上の反応があり、まだ付き合ってもいないのに、向こうが恋人面をする事もあった。
佑としては、話のきっかけを作るために食事に誘っただけだ。
しかし女性はそのあと酒を飲んでのワンナイトラブを求め、佑の家に上がりたいと言っていた。
初めて食事をしただけなのに、いきなり自宅でセックスは……とドン引きすると、女性は逆ギレをする。
もしくはさらに甘ったるい声を出し、しなだれかかってくる。
そんな事を何回も繰り返し、週刊誌にもすっぱ抜かれたあと、すっかり嫌になった佑は無理に恋人を作ろうとするのをやめた。
女性たちは佑は美形だし、ドイツにルーツがあるところから、女好きで遊ぶのが好きなのだと思い込んでいるようだった。
そんなステレオタイプで見られるのも、こりごりだった。
以降、佑の周囲で女性の気配がするのは、例のデリヘル嬢のみ。
そんな彼女とも、仕事が軌道に乗って忙しくなると共に、疎遠になっていった。
佑は本当の恋がしたかった。
幸せな気持ちになり、相手から大切にされて想い返されたかった。
自分のために笑ってくれて、泣いて、怒ってくれる人が家族以外にほしかった。
抱き締めて幸せなキスをして、セックスをしてもしなくても、深く想い合える女性がほしかった。
趣味や嗜好が合っても合わなくても、同じ価値観を持って似たタイミングで笑える人に側にいてほしかった。
――そんな人は、当時の彼には現れなかったのだ。
社員の中に自分を想っている者がいるのは分かっていたが、社員にだけは絶対手を出さないと決めている。
社員は第二の家族で、雇用し、守るべき存在であり、恋愛をする対象ではないからだ。
そんな風に無味無臭の数年を過ごしたあとの三十一歳の冬。
香澄と出会った。
札幌で行われるファッションコレクションに、参加企業の社長として足を向け、関係者の接待で『Bow tie club』へ向かった。
香澄を見た時の第一印象は、清潔感があり感じが良く、仕事ができそうだな、だった。
勝手なイメージかもしれないが、北海道の女性という事で純粋そうと思ったのもあった。
申し訳ないが、どこかまだ垢抜けていない田舎臭さが、彼を安堵させたのだ。
しかしその後、いきなりバニーガール姿になって出てきて、危うく酒を噴きかけた。
おまけに姿勢がよくて胸が大きく、尻の形もいい。
ここのところずっと女性の肉体を意識していなかったので、衝撃を受けた。
他のスタッフもバニーガールの格好をしていたが、彼女たちの事は最初から〝キャスト〟として捉えていた。
銀座の高級クラブで一流の接客をされても、佑は決して揺るがない。
しかしパンツスーツ姿を見せられたあとのいきなりのバニーガール姿は、「何であの女性が!?」というギャップを佑に与えたのだ。
男性的な視線で言えば、「仕事相手の下着姿を見てしまった」という感じに似ている。
とても動揺して、そういうものに慣れていない子供のようにドキドキした。
そんな自分に「あれ?」と思ったのだ。
女性を見てこんなに動揺し、胸を高鳴らせているなんて何年ぶりだ……? と。
接待してくれている人の話もろくに耳に入らず、香澄ばかり気になった。
そうすれば、顔を知っている八谷社長と一緒にいる、福島重工の社長の暴言が耳に入った。
流れを聞いた限り、福島社長の無茶ぶりで香澄はバニーガールの格好をした。
それだけでも耐えがたいのに、彼女はアンダーヘアの手入れまで質問されていた。
聞いているだけで腸が煮えくりかえりそうになり、鳥肌がたつほど感情を高ぶらせた。
それでも感情の赴くまま動く前に、理性を働かせられて良かったと思う。
接待してくれている人に挨拶をし、福島重工の社長がいるテーブルに乗り込んだ。
できる限り冷静な声を出して反論すれば、香澄はポカンとした顔で佑を見上げている。
その目は潤んでいて、いきなりの登場人物に驚きを隠せていない。
それでも追い詰められていたのは確かで、彼女のくりっとした目に安堵が浮かんでいたのも確かだったのだ。
――――――――
色々、重複してしまう箇所があるかもしれませんが、旧バージョンに沿っていますので、ご容赦ください。
そこまで大がかりに、全体を見直しながら直していく時間はないので……。
時間になると彼女は料金を受け取り、「また呼んでくださいね」とお辞儀をして去っていく。
実に割り切った関係だ。
柔らかくいい匂いのする女性の体を抱いている時は安堵する。
しかし恋をした相手でないという事実は、佑を非常に落ち込ませた。
――どうせ俺は、本当に愛してくれる女性に縁のない男だ。
いじけて自分をそう評価し、随分色んな事を斜に構えて見ていた時期もあった。
だからこそ、心から好きになってもいないのに恋愛をしようとして、失敗した事が何度もあった。
「優しくしたら好きになってくれるかな?」と思ってそうすれば、予想以上の反応があり、まだ付き合ってもいないのに、向こうが恋人面をする事もあった。
佑としては、話のきっかけを作るために食事に誘っただけだ。
しかし女性はそのあと酒を飲んでのワンナイトラブを求め、佑の家に上がりたいと言っていた。
初めて食事をしただけなのに、いきなり自宅でセックスは……とドン引きすると、女性は逆ギレをする。
もしくはさらに甘ったるい声を出し、しなだれかかってくる。
そんな事を何回も繰り返し、週刊誌にもすっぱ抜かれたあと、すっかり嫌になった佑は無理に恋人を作ろうとするのをやめた。
女性たちは佑は美形だし、ドイツにルーツがあるところから、女好きで遊ぶのが好きなのだと思い込んでいるようだった。
そんなステレオタイプで見られるのも、こりごりだった。
以降、佑の周囲で女性の気配がするのは、例のデリヘル嬢のみ。
そんな彼女とも、仕事が軌道に乗って忙しくなると共に、疎遠になっていった。
佑は本当の恋がしたかった。
幸せな気持ちになり、相手から大切にされて想い返されたかった。
自分のために笑ってくれて、泣いて、怒ってくれる人が家族以外にほしかった。
抱き締めて幸せなキスをして、セックスをしてもしなくても、深く想い合える女性がほしかった。
趣味や嗜好が合っても合わなくても、同じ価値観を持って似たタイミングで笑える人に側にいてほしかった。
――そんな人は、当時の彼には現れなかったのだ。
社員の中に自分を想っている者がいるのは分かっていたが、社員にだけは絶対手を出さないと決めている。
社員は第二の家族で、雇用し、守るべき存在であり、恋愛をする対象ではないからだ。
そんな風に無味無臭の数年を過ごしたあとの三十一歳の冬。
香澄と出会った。
札幌で行われるファッションコレクションに、参加企業の社長として足を向け、関係者の接待で『Bow tie club』へ向かった。
香澄を見た時の第一印象は、清潔感があり感じが良く、仕事ができそうだな、だった。
勝手なイメージかもしれないが、北海道の女性という事で純粋そうと思ったのもあった。
申し訳ないが、どこかまだ垢抜けていない田舎臭さが、彼を安堵させたのだ。
しかしその後、いきなりバニーガール姿になって出てきて、危うく酒を噴きかけた。
おまけに姿勢がよくて胸が大きく、尻の形もいい。
ここのところずっと女性の肉体を意識していなかったので、衝撃を受けた。
他のスタッフもバニーガールの格好をしていたが、彼女たちの事は最初から〝キャスト〟として捉えていた。
銀座の高級クラブで一流の接客をされても、佑は決して揺るがない。
しかしパンツスーツ姿を見せられたあとのいきなりのバニーガール姿は、「何であの女性が!?」というギャップを佑に与えたのだ。
男性的な視線で言えば、「仕事相手の下着姿を見てしまった」という感じに似ている。
とても動揺して、そういうものに慣れていない子供のようにドキドキした。
そんな自分に「あれ?」と思ったのだ。
女性を見てこんなに動揺し、胸を高鳴らせているなんて何年ぶりだ……? と。
接待してくれている人の話もろくに耳に入らず、香澄ばかり気になった。
そうすれば、顔を知っている八谷社長と一緒にいる、福島重工の社長の暴言が耳に入った。
流れを聞いた限り、福島社長の無茶ぶりで香澄はバニーガールの格好をした。
それだけでも耐えがたいのに、彼女はアンダーヘアの手入れまで質問されていた。
聞いているだけで腸が煮えくりかえりそうになり、鳥肌がたつほど感情を高ぶらせた。
それでも感情の赴くまま動く前に、理性を働かせられて良かったと思う。
接待してくれている人に挨拶をし、福島重工の社長がいるテーブルに乗り込んだ。
できる限り冷静な声を出して反論すれば、香澄はポカンとした顔で佑を見上げている。
その目は潤んでいて、いきなりの登場人物に驚きを隠せていない。
それでも追い詰められていたのは確かで、彼女のくりっとした目に安堵が浮かんでいたのも確かだったのだ。
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色々、重複してしまう箇所があるかもしれませんが、旧バージョンに沿っていますので、ご容赦ください。
そこまで大がかりに、全体を見直しながら直していく時間はないので……。
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