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第六部・社内旅行 編
目覚めの悪い社長
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「っこ、こら! 社長! 起きてください!」
両手でどんどこ佑の背中を叩いていると、ようやっと彼が目を擦り始める。
「……香澄」
「松井さんが部屋の外で待機されています。すぐ起きて顔を洗って、歯磨きと着替えです。荷物の準備はできていますか?」
「……ん、パッキングは昨晩した」
パッキングと言っても、佑の場合荷物が少ない。
大体出張先のホテルは顔なじみで、いつもグレードの高い部屋に泊まる。
アメニティなどももちろん完備されてあるので、基本的に洗面道具を用意する必要はない。
最低限下着とスーツの替え、充電器やサプリメントなどを持っていけばいいだけだ。
その気になれば下着とスーツも現地で新品を調達できるので、身軽なものだ。
「じゃあ起きてください。私もお見送りしますから」
秘書の言葉に佑は目をしばしばさせたまま、頭を掻く。
彼は腕を伸ばしてベッドサイドにある水を飲むと、いきなりキスをしてきた。
「――――!」
ドアを閉めていない壁の向こうに松井がいるというのに、佑は顔の角度を変えて何度もキスを繰り返す。
「っちょ……たす、……ん、……駄目ですっ、ん、……ん、ちょ、ホントに、……ん」
小声でたしなめても、大型犬が主人の顔を舐めているように、佑は香澄にのしかかったままたっぷりキスを続けた。
おまけに両手がもそもそと体をまさぐり、胸を揉んでくる。
「んっ、ちょ、……ん、めっ、だめっ、……ん、ん……、っぷは、だめだってば、ん……」
しかし香澄も胸の先端をスリスリと優しく愛撫されると、思わず体を震わせてしまう。
意志に反してぷくりと乳首が勃ち、泣き出したくなる。
のしかかられたままキスと胸への愛撫を続けられ、腰の奥がジン……と痺れてきた。
これ以上されると本当に発情してしまう。
そう思った香澄は内心で「佑さんごめんなさいっ」と謝ったあと、彼の背中をベシンッと思い切り叩いた。
「……あと三十分」
ちら、と時計を見て呟き、ようやっと佑はベッドから下りた。
その時になって初めて、佑が下着一枚だけなのに気付き赤面する。
自分の胸元が出たままだったのにも気付いて、慌ててバッとキャミソールを下ろした。
佑が裸足でぺたぺたと歩いていくのを追って、香澄もガウンを羽織り、松葉杖をついておそるおそる廊下に出る。
「……あれ?」
しかし部屋のすぐ外にいると思っていた松井の姿はない。
どこへ行ったのか分からないが、とりあえずホーッと胸をなでおろした。
佑は主寝室の洗面で顔を洗っているらしく、水音がする。
ひとまず香澄は一階に下りて、佑が家を出る前に何か軽く口にできる物を用意しようと思った。
エレベーターを使って階下へゆくと、松井がリビングで佑の荷物をチェックしている。
「改めまして、おはようございます。松井さん」
「おはようございます。早い時間にお騒がせ致します」
「いいえ! 本当は私も同行する出張なのに……。申し訳ない気持ちでいっぱいです」
キッチンに向かい、棚にストックしてあるトマトジュースをコップに注ぐ。
それからテキパキと小松菜とバナナをカットし、豆乳と一緒にミキサーにかけスムージーを作った。
そのとき階段を下りる足音がし、ジャケットを手にした佑がリビングに姿を現した。
(……やっぱりスーツ姿格好いい……。ベスト最高)
ニヤニヤしたいのを堪え、香澄は元気な声を出す。
「はいっ、佑さん。これ二つ飲んで」
「ん、ありがとう」
アイランドキッチンの大理石の上にあるグラスを手に取り、佑はぐいーっとトマトジュースを飲み、そのあと間髪いれずスムージーも飲み干す。
「じゃあ、歯を磨いてね。コーヒーは空港で朝食とった後ね?」
「ああ」
時計を確認すれば、出発まであと十分だ。
フロアを変えて佑が洗面所で歯磨きをし、香澄は立ったまま彼を待つ。
「出張中、どうぞ社長を宜しくお願いします」
「承知しました。加えまして第三秘書の件ですが、先日お渡しした資料の河野さんで決定しました。時期的な問題もありますが、業務内容も併せまして今回の出張から帰国したタイミングで、社長秘書室に入ってもらおうと思っています」
「はい。本来なら私があれこれ教える立場なのに、本当にすみません……」
深々と頭を下げても、松井はいつもの柔和な笑みのままだ。
「医師のOKが出ましたら、復帰を待っていますよ」
「はい! 一か月は自宅でじっとしていなさいと言われましたが、さすがに休みすぎだと思いますので……。社長に同行してあちこち出張などは無理があるかもしれませんが、会社での事務仕事のみなら、早めに復帰できると思います」
両手でどんどこ佑の背中を叩いていると、ようやっと彼が目を擦り始める。
「……香澄」
「松井さんが部屋の外で待機されています。すぐ起きて顔を洗って、歯磨きと着替えです。荷物の準備はできていますか?」
「……ん、パッキングは昨晩した」
パッキングと言っても、佑の場合荷物が少ない。
大体出張先のホテルは顔なじみで、いつもグレードの高い部屋に泊まる。
アメニティなどももちろん完備されてあるので、基本的に洗面道具を用意する必要はない。
最低限下着とスーツの替え、充電器やサプリメントなどを持っていけばいいだけだ。
その気になれば下着とスーツも現地で新品を調達できるので、身軽なものだ。
「じゃあ起きてください。私もお見送りしますから」
秘書の言葉に佑は目をしばしばさせたまま、頭を掻く。
彼は腕を伸ばしてベッドサイドにある水を飲むと、いきなりキスをしてきた。
「――――!」
ドアを閉めていない壁の向こうに松井がいるというのに、佑は顔の角度を変えて何度もキスを繰り返す。
「っちょ……たす、……ん、……駄目ですっ、ん、……ん、ちょ、ホントに、……ん」
小声でたしなめても、大型犬が主人の顔を舐めているように、佑は香澄にのしかかったままたっぷりキスを続けた。
おまけに両手がもそもそと体をまさぐり、胸を揉んでくる。
「んっ、ちょ、……ん、めっ、だめっ、……ん、ん……、っぷは、だめだってば、ん……」
しかし香澄も胸の先端をスリスリと優しく愛撫されると、思わず体を震わせてしまう。
意志に反してぷくりと乳首が勃ち、泣き出したくなる。
のしかかられたままキスと胸への愛撫を続けられ、腰の奥がジン……と痺れてきた。
これ以上されると本当に発情してしまう。
そう思った香澄は内心で「佑さんごめんなさいっ」と謝ったあと、彼の背中をベシンッと思い切り叩いた。
「……あと三十分」
ちら、と時計を見て呟き、ようやっと佑はベッドから下りた。
その時になって初めて、佑が下着一枚だけなのに気付き赤面する。
自分の胸元が出たままだったのにも気付いて、慌ててバッとキャミソールを下ろした。
佑が裸足でぺたぺたと歩いていくのを追って、香澄もガウンを羽織り、松葉杖をついておそるおそる廊下に出る。
「……あれ?」
しかし部屋のすぐ外にいると思っていた松井の姿はない。
どこへ行ったのか分からないが、とりあえずホーッと胸をなでおろした。
佑は主寝室の洗面で顔を洗っているらしく、水音がする。
ひとまず香澄は一階に下りて、佑が家を出る前に何か軽く口にできる物を用意しようと思った。
エレベーターを使って階下へゆくと、松井がリビングで佑の荷物をチェックしている。
「改めまして、おはようございます。松井さん」
「おはようございます。早い時間にお騒がせ致します」
「いいえ! 本当は私も同行する出張なのに……。申し訳ない気持ちでいっぱいです」
キッチンに向かい、棚にストックしてあるトマトジュースをコップに注ぐ。
それからテキパキと小松菜とバナナをカットし、豆乳と一緒にミキサーにかけスムージーを作った。
そのとき階段を下りる足音がし、ジャケットを手にした佑がリビングに姿を現した。
(……やっぱりスーツ姿格好いい……。ベスト最高)
ニヤニヤしたいのを堪え、香澄は元気な声を出す。
「はいっ、佑さん。これ二つ飲んで」
「ん、ありがとう」
アイランドキッチンの大理石の上にあるグラスを手に取り、佑はぐいーっとトマトジュースを飲み、そのあと間髪いれずスムージーも飲み干す。
「じゃあ、歯を磨いてね。コーヒーは空港で朝食とった後ね?」
「ああ」
時計を確認すれば、出発まであと十分だ。
フロアを変えて佑が洗面所で歯磨きをし、香澄は立ったまま彼を待つ。
「出張中、どうぞ社長を宜しくお願いします」
「承知しました。加えまして第三秘書の件ですが、先日お渡しした資料の河野さんで決定しました。時期的な問題もありますが、業務内容も併せまして今回の出張から帰国したタイミングで、社長秘書室に入ってもらおうと思っています」
「はい。本来なら私があれこれ教える立場なのに、本当にすみません……」
深々と頭を下げても、松井はいつもの柔和な笑みのままだ。
「医師のOKが出ましたら、復帰を待っていますよ」
「はい! 一か月は自宅でじっとしていなさいと言われましたが、さすがに休みすぎだと思いますので……。社長に同行してあちこち出張などは無理があるかもしれませんが、会社での事務仕事のみなら、早めに復帰できると思います」
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