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第六部・社内旅行 編
余裕のある男になりたい
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学生時代の恋愛では、目が合っただけで一日ドキドキしたとか、夏服を見ると浮き足立つなど。
ポニーテールが揺れる首筋を見て劣情を刺激される――という問題がどこかであった気がする――など、中高生時代は今思えば可愛い些細な事で刺激を受けるようだ。
残念ながら、佑はその頃からモテすぎにより、女子生徒にときめくなどはなかったのだが――。
あの時はこれから自分が展開していく事業で頭がいっぱいで、恋愛や結婚など考えていなかった。
(学生時代に香澄と同じ学校だったとしても、今までの俺ならやっぱり恋はできなかったのかな)
そう思うと、自分の青春がとても味気ないものに思える。
兄たちがクラウザージャパンに入ろうとしている姿を見ていたからこそ、佑は「自分は祖父の家に頼らず大成してみせる」と躍起になっていた。
結婚を考えた美智瑠と出会うまではほぼまともに付き合った事がなかったので、結局自分の人生にとっての恋愛はそんな程度だったのだろう。
いわば、大器晩成型の恋愛というべきか。
「……なに、考えてるんだろうな」
昔の女を思い出し、佑は溜め息をつく。
「あいつの事を考えるだけでも、香澄に申し訳ない」
つるんとした剥き玉子のような彼女の頬に、ちゅっとキスをした。
「ごめんな」
――他の女のことを考えて。
――疲れさせて。
色んな意味を含めて謝ったあと、佑は手早くシャワーを浴びて自分も眠る事にした。
正直、最近は心配とストレスであまり良い睡眠をとれていない。
自分よりも、骨折してドイツに一人で置いて行かれていた香澄の方がもっと大変なのだ。
そう思うと、あまりに情けなくて自分に嫌気が差す。
今まで周囲に「考え方が欧米的」と散々言われたが、双子たちと比べれば佑はずっと日本人的な性格をしている。
ストレスを溜めやすいし、やっとできた大事な女のためなら短気にもなる。
「……やっと連れ帰ったのに、毎日のように無理をさせて……。……本当に何やってるんだか……」
深く深く、溜め息をつく。
自分が人に思われているような立派な人間でない事は、誰よりも佑本人が分かっている。
「もっと、余裕のある男になりたい」
呟いてもう一度香澄にキスをすると、佑は着替えを手にしてバスルームに向かった。
**
翌朝目覚めると、傍らに佑はいなかった。
代わりにベッドサイドにメモがあった。
『今は療養中だからしっかり休んで。斎藤さんのご飯をしっかり食べる事。今日は帰りは少し遅くなると思う』と書いてあった。
その隣に香澄のスマホもあった。
なんとはなしにスマホを起動させると、コネクターナウの赤いバッジに39という数字があった。
「……きっとアロイスさんとクラウスさんだよなぁ。内容はなんとなく予想はつくけど」
それでも無視はいけないと思い、香澄はアプリを開いた。
スタンプ欲しさに友達になった企業アカウントを既読にし、友人とのトークはあとでじっくり返事をするので後回しにする。
アロイスとクラウスとのグループメッセージを開いて閉口した。
昨晩の続きで、彼らは延々と自分たちが香澄とどういうセックスをするか、熱弁を振るっていたのだ。
やれどんな体位がいいだの、シチュエーションだの。着せたいコスチュームの話から、そのうち三人でのプレイに発展し、二人のどちらが香澄のどこを使うだの、失礼も甚だしい内容になっていた。
「……はぁ。セクハラだなぁ!」
思っていた通りだが、何と言うか……疲れる。
「とりあえず……と」
『おはようございます。昨晩はありがとうございました。よい一日を』
色気もへったくれもないメッセージを送り、そのまま双子とのトークルームは閉じてしまった。
「さて……。八時過ぎ……か。ちょっと寝過ぎちゃった。療養中とはいえ、もっとちゃんとした生活リズムにしないと」
枕元には松葉杖も立てかけてあり、ありがたく使って立ち上がる。
パンティ一枚という姿だが、まずトイレに行って用を足し、着替えを手にしてバスルームに向かう。
例のギプスカバーをつければ、一人でシャワーを済ませるのも簡単だった。
ポニーテールが揺れる首筋を見て劣情を刺激される――という問題がどこかであった気がする――など、中高生時代は今思えば可愛い些細な事で刺激を受けるようだ。
残念ながら、佑はその頃からモテすぎにより、女子生徒にときめくなどはなかったのだが――。
あの時はこれから自分が展開していく事業で頭がいっぱいで、恋愛や結婚など考えていなかった。
(学生時代に香澄と同じ学校だったとしても、今までの俺ならやっぱり恋はできなかったのかな)
そう思うと、自分の青春がとても味気ないものに思える。
兄たちがクラウザージャパンに入ろうとしている姿を見ていたからこそ、佑は「自分は祖父の家に頼らず大成してみせる」と躍起になっていた。
結婚を考えた美智瑠と出会うまではほぼまともに付き合った事がなかったので、結局自分の人生にとっての恋愛はそんな程度だったのだろう。
いわば、大器晩成型の恋愛というべきか。
「……なに、考えてるんだろうな」
昔の女を思い出し、佑は溜め息をつく。
「あいつの事を考えるだけでも、香澄に申し訳ない」
つるんとした剥き玉子のような彼女の頬に、ちゅっとキスをした。
「ごめんな」
――他の女のことを考えて。
――疲れさせて。
色んな意味を含めて謝ったあと、佑は手早くシャワーを浴びて自分も眠る事にした。
正直、最近は心配とストレスであまり良い睡眠をとれていない。
自分よりも、骨折してドイツに一人で置いて行かれていた香澄の方がもっと大変なのだ。
そう思うと、あまりに情けなくて自分に嫌気が差す。
今まで周囲に「考え方が欧米的」と散々言われたが、双子たちと比べれば佑はずっと日本人的な性格をしている。
ストレスを溜めやすいし、やっとできた大事な女のためなら短気にもなる。
「……やっと連れ帰ったのに、毎日のように無理をさせて……。……本当に何やってるんだか……」
深く深く、溜め息をつく。
自分が人に思われているような立派な人間でない事は、誰よりも佑本人が分かっている。
「もっと、余裕のある男になりたい」
呟いてもう一度香澄にキスをすると、佑は着替えを手にしてバスルームに向かった。
**
翌朝目覚めると、傍らに佑はいなかった。
代わりにベッドサイドにメモがあった。
『今は療養中だからしっかり休んで。斎藤さんのご飯をしっかり食べる事。今日は帰りは少し遅くなると思う』と書いてあった。
その隣に香澄のスマホもあった。
なんとはなしにスマホを起動させると、コネクターナウの赤いバッジに39という数字があった。
「……きっとアロイスさんとクラウスさんだよなぁ。内容はなんとなく予想はつくけど」
それでも無視はいけないと思い、香澄はアプリを開いた。
スタンプ欲しさに友達になった企業アカウントを既読にし、友人とのトークはあとでじっくり返事をするので後回しにする。
アロイスとクラウスとのグループメッセージを開いて閉口した。
昨晩の続きで、彼らは延々と自分たちが香澄とどういうセックスをするか、熱弁を振るっていたのだ。
やれどんな体位がいいだの、シチュエーションだの。着せたいコスチュームの話から、そのうち三人でのプレイに発展し、二人のどちらが香澄のどこを使うだの、失礼も甚だしい内容になっていた。
「……はぁ。セクハラだなぁ!」
思っていた通りだが、何と言うか……疲れる。
「とりあえず……と」
『おはようございます。昨晩はありがとうございました。よい一日を』
色気もへったくれもないメッセージを送り、そのまま双子とのトークルームは閉じてしまった。
「さて……。八時過ぎ……か。ちょっと寝過ぎちゃった。療養中とはいえ、もっとちゃんとした生活リズムにしないと」
枕元には松葉杖も立てかけてあり、ありがたく使って立ち上がる。
パンティ一枚という姿だが、まずトイレに行って用を足し、着替えを手にしてバスルームに向かう。
例のギプスカバーをつければ、一人でシャワーを済ませるのも簡単だった。
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