上 下
205 / 1,549
第六部・社内旅行 編

双子からの立て続けのメッセージ

しおりを挟む
「あの……」
「ん?」

 佑はぐい、と香澄の二の腕を掴み、体を起こさせる。
 正面から覗き込まれ、香澄は赤面してずっと思っていた事を口にした。

「真面目な話をしているのに、よくこんなに勃……勃っていられるな、って感心してるんだけど」

 相変わらず佑の屹立はガチガチに強張ったまま、香澄のナカに潜っている。
 それを指摘すると、彼が破顔した。

「だって、好きな女と繋がれてるんだ。勃起するしかないだろう」
「で……でも、ねぇ。わっ」

 その時、デスクの上に置いてあった香澄のスマホが震えた。

「なんだろ……」

 手を伸ばして手帳タイプのスマホケースを手に取ると、パカリと開く。

「あ……」

 出てきた通知内容に、香澄は思わず言葉を失った。

「どうした?」
「や、何でもない」

 しかし立て続けに香澄の手の中でスマホが震え続け、通知が何件も続いてきているのが分かる。

「しつこいな。嫌がらせか?」

 佑が眉間に皺を寄せ、香澄は「やばい」と言い訳を考え――素直に告白することにする。

「あ……あの。アロイスさんとクラウスさんとのグループメッセージなので、と、特に気にする事じゃ……」
「気にするだろ!」

 クワッと目を見開き、佑は香澄の手からスマホを奪い取――ろうとして手を落とす。

「……いや。君のスマホを勝手に見たい訳じゃなくて」
「でも気になるんだよね? 別に見られて困るものじゃないからいいよ?」

 アプリのアイコンには、赤いバッジに22と通知数が表示されている。

「あいつら非常識だな……」

 うなるように言った佑の目の前に、香澄は開いたアプリ画面を見せる。

「わあ……」

 もし双子が目の前にいたなら、〝矢継ぎ早〟と言っていいメッセージの連続に、佑が若干引き気味の声を出した。
 噴き出しの形をしたメッセージには、さして重要でもない内容が、次々に送信されている。

『香澄! いま仕事終わった!』
『香澄! 抱かせて!』

『香澄、いまパリなんだけど、美味しいレストラン見つけたから今度三人で行こう! その後に泊まるホテルもいい場所リザーブするから』
『香澄エスカルゴ好き? 香澄がエスカルゴほじって食べてる姿見たい』

『ちょっと、Clマニアックlooooooooool』

「佑さん、お二人とメッセージの遣り取りしていると、この文末の……これ。よく出てくるんだけど、何?」

 香澄は『LOL』という単語を指さす。

「ああ、それ。ロル。日本で言うカッコワライとか、そういうのだよ。派生して数種類あるけど、lやrがつくものが文頭や文末、文中についている場合、大体あいつらがゲラゲラ笑ってると思っていい」
「なるほど! 道理で辞書を引いてもなかったんだ」

「しかしあいつら、やりたい放題だな。ガキのグループメッセージか」
「思ったより害がなくて、今のところ困ってないけどね?」

「でも時差があるから、場合によっては困るだろ。実際いまなんて真夜中だぞ? これからセックス始めようとしている時間に……」

 佑が真顔で言うので、香澄は思わず繋がった下腹部を見る。

「これから始まるの? てっきりもうずーっと最中なのかと……」
「セックスって俺的には、香澄があんあん言っている時の事を言うけど」

「…………」

 忙しいというのに、この御劔佑という人の無尽蔵な性欲には閉口する。
 その時、また通知が入った。

『香澄、いま佑とセックスしてるの?』
「!!」

 見透かされたようなメッセージに胸がドキンッと跳ね上がり、香澄は手の中でスマホをあわあわと踊らせる。

「え? え? なにこれ? マイクでもオンになってる?」
「なってる訳ないだろう。こいつらのいつもの下世話な勘だ」

『僕、香澄とならプールでヤりたいな。最近水の中でヤるの癖になってる』
『俺はバックか騎乗位かな? 香澄のおっぱいが跳ねてるの見たくない?』
『すっげぇ見たい!!』

「こい……っつら……っ」

 目の前でスマホがブーブーと震え、香澄をネタにした猥談が続いてゆく。
しおりを挟む
感想 556

あなたにおすすめの小説

『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!

臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。 やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。 他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。 (他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

処理中です...