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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編
第五部・終章
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「……分かってくれないか? いや、自分の魅力を理解できないならそれでいい。ただ、俺が香澄にベタ惚れだっていうことは、信じてほしいんだ」
「…………」
あの御劔佑が、この上なく真剣な顔で自分を口説いている。
なんとも不思議で――、幸せな心地になる。
「それとも、ちゃんと理由を理解できないと、現在の結果に納得できない? それなら多少大がかりになってでも、プレゼンするけど」
「い、いやいや! プレゼンだなんて! 分かった! うん、分かったから!」
(これはヤバイ奴だ!)
必死になってコクコク頷いてみせても、佑は心配そうに香澄を見つめている。
やがて彼は視線を外し、香澄のお腹あたりを見て――ひとつ溜め息をついた。
「……俺、駄目だな。本当に香澄の事になると、余裕がなくなって情けなくなる」
「嬉しいよ?」
目の前で床に膝をついている婚約者の髪はまだ濡れていて、香澄は洗面台に置いてあるドライヤーを手に取った。
「そのまま、ね。佑さんの髪乾かしてあげる」
スイッチを入れ熱風が吹き出すと、香澄は佑の髪を乾かしていく。
「不安にさせてごめんね。私も佑さんが大好きだから、安心して?」
彼は香澄の太腿に両手を置いたまま、じっと俯いている。
「私はきっと、もっと自分に自信を持てるようにならないと駄目なんだろうなぁ。……だから怪我が回復したら、バリバリお仕事頑張るね! 体も鍛えてボディメイクして、陣内さんの所で綺麗にしてもらう」
「……そう、だな。今度一緒に陣内さんの所に行こう。香澄のヘアチェックしたがってると思うから」
すべすべと香澄の太腿を撫で、佑は落とすように微笑む。
佑は、自分は香澄のこういう前向きな所にも惹かれたのだと思っていた。
自分が〝普通〟ではないのは分かっている。
〝普通〟である香澄が自分と共に歩むなら、並々ならぬ障害があるかもしれない、ともうっすら予感していた。
しかし香澄は自分と結婚すると勇気を出して決断してくれた。
両家の家族にも挨拶をしたし、環境的にはゴーサインが出ている。
誰だって結婚を前にすれば不安を抱えて当然だし、これから何度も迷っていくだろう。
そのたびに自分は、香澄の心で絡まった糸をほぐし、先へと導いていこうと決めた。
(それが夫になるっていう事なんだ)
ドライヤーの冷風を止め、香澄は佑の髪をサラサラと整える。
「よし、できた」
ニコッと微笑む彼女を見て、佑はこの上ない愛しさを覚えた。
「香澄、キスしよう」
「……ん」
少し照れつつも目を閉じた香澄は、ちょんと唇を突き出す。
佑は彼女の〝キス待ち顔〟を一瞬目に焼き付けてから、優しく唇を重ねた。
何度も食んでは彼女の温度、柔らかさを確認する。。
「ん……、んぅ……」
切なげな声が愛しくて堪らない。
思わず下半身がまた反応しそうになるのを、彼は必死に抑えた。
彼女の唇を味わいながら、佑はベッドでもう一回愛し合えないか考え始める。
きっと香澄はキスに夢中で、自分がそんな事を考えていると思いもしないだろう。
(怒られるかな)
愛しい人になら、怒られるのもまた楽しみの一つだ。
友達が聞いたら「重傷だな」と呆れそうな事を考え、佑はペロリと彼女の唇を舐めて、またついばんだ。
帰国してしばらくはリハビリ中心の生活になる。
けれど慣れ親しんだ御劔邸でなら、きっと楽しく過ごせるはず。
自分に言い聞かせ、香澄は佑の匂いをこっそり嗅いで微笑んだ。
東京で、二人の生活がまた始まる。
第五部・完
「…………」
あの御劔佑が、この上なく真剣な顔で自分を口説いている。
なんとも不思議で――、幸せな心地になる。
「それとも、ちゃんと理由を理解できないと、現在の結果に納得できない? それなら多少大がかりになってでも、プレゼンするけど」
「い、いやいや! プレゼンだなんて! 分かった! うん、分かったから!」
(これはヤバイ奴だ!)
必死になってコクコク頷いてみせても、佑は心配そうに香澄を見つめている。
やがて彼は視線を外し、香澄のお腹あたりを見て――ひとつ溜め息をついた。
「……俺、駄目だな。本当に香澄の事になると、余裕がなくなって情けなくなる」
「嬉しいよ?」
目の前で床に膝をついている婚約者の髪はまだ濡れていて、香澄は洗面台に置いてあるドライヤーを手に取った。
「そのまま、ね。佑さんの髪乾かしてあげる」
スイッチを入れ熱風が吹き出すと、香澄は佑の髪を乾かしていく。
「不安にさせてごめんね。私も佑さんが大好きだから、安心して?」
彼は香澄の太腿に両手を置いたまま、じっと俯いている。
「私はきっと、もっと自分に自信を持てるようにならないと駄目なんだろうなぁ。……だから怪我が回復したら、バリバリお仕事頑張るね! 体も鍛えてボディメイクして、陣内さんの所で綺麗にしてもらう」
「……そう、だな。今度一緒に陣内さんの所に行こう。香澄のヘアチェックしたがってると思うから」
すべすべと香澄の太腿を撫で、佑は落とすように微笑む。
佑は、自分は香澄のこういう前向きな所にも惹かれたのだと思っていた。
自分が〝普通〟ではないのは分かっている。
〝普通〟である香澄が自分と共に歩むなら、並々ならぬ障害があるかもしれない、ともうっすら予感していた。
しかし香澄は自分と結婚すると勇気を出して決断してくれた。
両家の家族にも挨拶をしたし、環境的にはゴーサインが出ている。
誰だって結婚を前にすれば不安を抱えて当然だし、これから何度も迷っていくだろう。
そのたびに自分は、香澄の心で絡まった糸をほぐし、先へと導いていこうと決めた。
(それが夫になるっていう事なんだ)
ドライヤーの冷風を止め、香澄は佑の髪をサラサラと整える。
「よし、できた」
ニコッと微笑む彼女を見て、佑はこの上ない愛しさを覚えた。
「香澄、キスしよう」
「……ん」
少し照れつつも目を閉じた香澄は、ちょんと唇を突き出す。
佑は彼女の〝キス待ち顔〟を一瞬目に焼き付けてから、優しく唇を重ねた。
何度も食んでは彼女の温度、柔らかさを確認する。。
「ん……、んぅ……」
切なげな声が愛しくて堪らない。
思わず下半身がまた反応しそうになるのを、彼は必死に抑えた。
彼女の唇を味わいながら、佑はベッドでもう一回愛し合えないか考え始める。
きっと香澄はキスに夢中で、自分がそんな事を考えていると思いもしないだろう。
(怒られるかな)
愛しい人になら、怒られるのもまた楽しみの一つだ。
友達が聞いたら「重傷だな」と呆れそうな事を考え、佑はペロリと彼女の唇を舐めて、またついばんだ。
帰国してしばらくはリハビリ中心の生活になる。
けれど慣れ親しんだ御劔邸でなら、きっと楽しく過ごせるはず。
自分に言い聞かせ、香澄は佑の匂いをこっそり嗅いで微笑んだ。
東京で、二人の生活がまた始まる。
第五部・完
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