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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編

調子に乗りました ☆

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「待ってくれ……っ、香澄、も……少し……っ」

 脱力した香澄の腰を抱え上げ、佑は最後の高まりまで香澄の蜜壷を突き上げる。
 ジュプジュプと泡立った音がしばらく続き、佑の獣めいた呼吸が漏れる。
 そのあいだ香澄は、手足をヒクつかせながら悲鳴に似た呻き声を上げるしかできなかった。

「あぁーっ、ぁ、あぁああぁーっ、うぅ、うーっ」

 涙を流し苦痛とも言える快楽にむせび泣いていると、佑が「っくぅ!」と呻いたあときつく抱き締めてきた。

「あぁ……、香澄、……っかすみ……っ」

 蜜壷の中でビクビクと震える屹立を、香澄は愛しさいっぱいに感じる。

「ん……っ、んん……っ」

 脱力した香澄は、ただ体を震わせるしかできなかった。
 熟れた蜜壷はまだ絶頂の余韻にあり、ピクピクと引き攣っている。

(……奥に……欲しかったな……)

 佑が聞けば「こら」と怒るような事を思い、そのまま香澄は目を閉じた。





「調子に乗りました」
「……うん、そうだね」

 洗面台前の籐の椅子に座った香澄は、佑によってドライヤーを掛けられていた。

 あのあと体を丁寧に洗われ、風邪を引かないようにシャワーで体を温められた。
 佑は手早く自分の体と髪を洗い、そのあと一緒に上がる。
 濡れた体を丁寧に拭かれたあと、化粧水のあとジョン・アルクールのボディクリームを塗り込まれ、用意してあったキャミソールとタップパンツのパジャマに着替えさせられた。
 佑はTシャツとハーフパンツを着たあと、自分の髪が濡れたままなのも構わず香澄の髪を優先してくれる。

「でも後悔はしてないし、謝らない」
「……佑さんってそうだよね……」

 はは、と乾いた笑いを上げ、香澄は鏡に映っている佑を見る。

 髪が濡れていてグッと色っぽい。
 社員誰一人として、佑のこんな姿は知らないだろう。

「ようやっと東京でラブラブできるんだもんな。初日からがっつきすぎた感はあるけど……」
「佑さんって、意外と『待て』ができないよね?」

 ドライヤーの熱風が冷風に変わる。

「香澄の優秀な番犬になれないかな? ……いや、男相手だったら絶対にいい番犬になれると思ってるけど」
「私は一人でも大丈夫だよ。ここは日本だし。自宅で大好きな大型犬と、『おすわり』や『待て』をして、たまに〝エサ〟をあげて楽しく過ごしたい」

「……日本にいたって、香澄には番犬が必要だ」

 少し唇を尖らせ、佑は手の中で香澄の髪を弄ぶ。
 髪が動くたびに天使の輪が踊り、その美しさを際立たせている。

「健二くんの事、まだ気にしてるの?」

 鏡越しにチラッと佑を伺うと、丁度彼と目が合ってしまった。

「……以前の〝あれ〟で完璧に追い払ったつもりではあるけど。……正直、香澄の元彼だっていうだけで、今でも胸の中を酷い嫉妬に支配されるんだ。気にするなっていう方が無理な話かもしれない」
「…………」

 フォン……とドライヤーのスイッチが切られ、今度は豚毛のブラシで丁寧に髪を梳かされる。

「……ずるいな、佑さん」
「え?」

「私だって、結婚まで考えたっていう元カノに凄く嫉妬してるのに。自分だけ嫉妬してるみたいな……。言っとくけど、重たい女って思われるのが嫌なだけで、私だって相当ドロドロしてるんだからね?」

「え、何それ。一晩中聞きたい」
「喜ばない!」

 思わず突っ込んだあと、仕方がなくてついクスクス笑い出す。

「もー……。本当にどうして佑さんみたいな人が、私にこんなに夢中なんだろうね?」
「そんなにおかしい事かな?」

 ドイツクォーターの億万長者は、さも不思議そうにヘーゼルの目を瞬かせる。

「野良猫が急にお金持ちの飼い猫になっても、すぐ環境には慣れないよなーって思うだけ」

 例えを出され、佑もやや腑に落ちたようだ。

「確かに……。そう言われれば」

「野良猫もね、優しい飼い主を信じて、与えられる環境を享受したいって思っているはずなの。でも見える風景はガラッと変わったし、とても広いお屋敷と庭でも、ある程度の自由は封じられてしまった。優しい手に『おいでおいで』ってされても、『本当にこの手を信じていいのかな?』って思っちゃう。飼い主の家族が現れると、驚いて隠れちゃう事もあるかも」

 説得力のある例えを聞いていたが、最後の言葉に思わず佑は首を振る。
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