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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編
贅沢なバスタイム
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「香澄の髪はまっすぐで綺麗だからな。俺もこの髪質をキープする方法を、もっと知っておきたい」
こだわった高級ブラシで丁寧に髪を梳かされ、なんだかくすぐったい。
ふと子供時代に母親に髪を弄ってもらい、甘えていた記憶が蘇る。
「そんな。週一でトリートメント行かせてもらってるのでも、やりすぎなぐらいだよ」
「だって香澄と出会った頃、トリートメントは自宅でのみって言ってたし、手を掛けるに超したことはないだろ? それにいつも忙しくさせてしまっているしストレスが溜まるから、トリートメントやヘッドスパはいいストレス解消になると思うんだ」
「それはありがたいけど……。でも、佑さん私にお金出させてくれないしね?」
「あそこは俺の行きつけでもあるから、支払いは一緒でいいんだ」
代官山にあるヘアサロンは、シックな内装で鏡も二面と少ないプライベートサロンだ。
目立った看板は出さず、ごく限られた知る人ぞ知るという店になっている。
店長は陣内(じんない)という男性だが、佑が信頼しているだけあり、香澄の髪に触れるのを特別に許されている感じだ。
もう一人奥さんだという女性もいて、彼女はネイリストだ。
ヘアカットや香澄はしないがカラーをしている間、ハンドケアやフットケアをしてもらっていた。
二人で訪れると、ダブルデートのような雰囲気になるので、香澄にとってお気に入りの場所でもある。
「しばらく行ってないから、陣内さんも香澄のヘアチェックしたがっていると思う」
「うーん。でもこの脚じゃねぇ……」
「瀬尾に頼んでいつでも乗せてもらうといいよ。久住と佐野も常に同行させて」
「う、うん……」
「慣れないかもしれないけど、慣れて」
ブラシが置かれ、佑が目の前に回り込み目線を合わせ微笑んだ。そうされると、香澄は弱い。
「……うん」
了承したところで、ポンと頭を撫でられた。
「じゃあ、俺もパンツ脱いで……と」
そう言って佑が下着に手を掛けるので、香澄はとっさに横を向いた。
一緒に風呂に入ったりセックスする仲でも、やはり不用意に人の裸体を見てはいけないと思っている。
「さて、香澄。だっこ」
「ん……うん」
先にバスルームにバスチェアを出した佑が、香澄の背中と膝の裏に手を回す。
恥ずかしいし申し訳ないが、抱き上げられると同時に佑の首に手を回し、少しでも負担にならないよう協力した。
バスルームは佑の拘りが出ていて、長方形の檜の浴槽と円形のジェットバスがある。
必要な場所には手すりなども設置されていて、ユニバーサルデザインにもなっていた。
洗い場は広く、ちょっとした銭湯ぐらいの規模がある。
浴室内にはステレオやテレビ、それに観葉植物にキャンドルを置く場所もあり、くつろいで入れるようになっていた。
客人が来た時用なのか、シャワーも複数設置されている。
「音楽でも流そうか」
佑がそう言ってやがて流れてきたのは、バッハの『G線上のアリア』だ。
「あ、好き」
思わず呟くと、佑がサラリと頭を撫でてきた。
「『好き』は俺以外に言わなくていいよ」
「っふふ、何それ」
「香澄のためなら、バッハにだって嫉妬するよ?」
佑も少し笑いつつシャワーのコックを捻った。
丁度いい温度になるまでお湯を出し、それから「髪から洗っていくよ」と告げられる。
少し俯いて目を閉じると、背中や肩にお湯が掛けられてからうなじ、後頭部と濡らされてゆく。
程よい水圧のシャワーが香澄の髪を濡らしてゆき、佑の指先が地肌を丁寧に洗ってゆく。
「〝世界の御劔〟に洗ってもらうなんて、贅沢」
「俺は香澄を好きにできて贅沢だと思ってるよ」
薄目を開くと、佑の裸足が見える。「足の形まで良くてイケメンだな」と、変な事を考えてしまった。
「元気になったら、色んな事してあげるからね」
「確かにいまの状態だと、立ちバックとか無理だもんな」
「もしもし!?」
恥ずかしくて佑の脛をピシャッと叩くと、彼が愉快そうに笑う。
「ごめん。いや、でも結構重要だよ? 現状、香澄の負担にならない体位って言ったら割と限られているし」
「……佑さんは、エッチに対してあれこれ考えすぎ……っ」
羞恥のあまり声が小さくなるが、彼はちゃんと拾い上げてくれたらしい。
こだわった高級ブラシで丁寧に髪を梳かされ、なんだかくすぐったい。
ふと子供時代に母親に髪を弄ってもらい、甘えていた記憶が蘇る。
「そんな。週一でトリートメント行かせてもらってるのでも、やりすぎなぐらいだよ」
「だって香澄と出会った頃、トリートメントは自宅でのみって言ってたし、手を掛けるに超したことはないだろ? それにいつも忙しくさせてしまっているしストレスが溜まるから、トリートメントやヘッドスパはいいストレス解消になると思うんだ」
「それはありがたいけど……。でも、佑さん私にお金出させてくれないしね?」
「あそこは俺の行きつけでもあるから、支払いは一緒でいいんだ」
代官山にあるヘアサロンは、シックな内装で鏡も二面と少ないプライベートサロンだ。
目立った看板は出さず、ごく限られた知る人ぞ知るという店になっている。
店長は陣内(じんない)という男性だが、佑が信頼しているだけあり、香澄の髪に触れるのを特別に許されている感じだ。
もう一人奥さんだという女性もいて、彼女はネイリストだ。
ヘアカットや香澄はしないがカラーをしている間、ハンドケアやフットケアをしてもらっていた。
二人で訪れると、ダブルデートのような雰囲気になるので、香澄にとってお気に入りの場所でもある。
「しばらく行ってないから、陣内さんも香澄のヘアチェックしたがっていると思う」
「うーん。でもこの脚じゃねぇ……」
「瀬尾に頼んでいつでも乗せてもらうといいよ。久住と佐野も常に同行させて」
「う、うん……」
「慣れないかもしれないけど、慣れて」
ブラシが置かれ、佑が目の前に回り込み目線を合わせ微笑んだ。そうされると、香澄は弱い。
「……うん」
了承したところで、ポンと頭を撫でられた。
「じゃあ、俺もパンツ脱いで……と」
そう言って佑が下着に手を掛けるので、香澄はとっさに横を向いた。
一緒に風呂に入ったりセックスする仲でも、やはり不用意に人の裸体を見てはいけないと思っている。
「さて、香澄。だっこ」
「ん……うん」
先にバスルームにバスチェアを出した佑が、香澄の背中と膝の裏に手を回す。
恥ずかしいし申し訳ないが、抱き上げられると同時に佑の首に手を回し、少しでも負担にならないよう協力した。
バスルームは佑の拘りが出ていて、長方形の檜の浴槽と円形のジェットバスがある。
必要な場所には手すりなども設置されていて、ユニバーサルデザインにもなっていた。
洗い場は広く、ちょっとした銭湯ぐらいの規模がある。
浴室内にはステレオやテレビ、それに観葉植物にキャンドルを置く場所もあり、くつろいで入れるようになっていた。
客人が来た時用なのか、シャワーも複数設置されている。
「音楽でも流そうか」
佑がそう言ってやがて流れてきたのは、バッハの『G線上のアリア』だ。
「あ、好き」
思わず呟くと、佑がサラリと頭を撫でてきた。
「『好き』は俺以外に言わなくていいよ」
「っふふ、何それ」
「香澄のためなら、バッハにだって嫉妬するよ?」
佑も少し笑いつつシャワーのコックを捻った。
丁度いい温度になるまでお湯を出し、それから「髪から洗っていくよ」と告げられる。
少し俯いて目を閉じると、背中や肩にお湯が掛けられてからうなじ、後頭部と濡らされてゆく。
程よい水圧のシャワーが香澄の髪を濡らしてゆき、佑の指先が地肌を丁寧に洗ってゆく。
「〝世界の御劔〟に洗ってもらうなんて、贅沢」
「俺は香澄を好きにできて贅沢だと思ってるよ」
薄目を開くと、佑の裸足が見える。「足の形まで良くてイケメンだな」と、変な事を考えてしまった。
「元気になったら、色んな事してあげるからね」
「確かにいまの状態だと、立ちバックとか無理だもんな」
「もしもし!?」
恥ずかしくて佑の脛をピシャッと叩くと、彼が愉快そうに笑う。
「ごめん。いや、でも結構重要だよ? 現状、香澄の負担にならない体位って言ったら割と限られているし」
「……佑さんは、エッチに対してあれこれ考えすぎ……っ」
羞恥のあまり声が小さくなるが、彼はちゃんと拾い上げてくれたらしい。
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