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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編
地雷踏んだ
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「香澄さん、ブルーメンブラットヴィルに私以上に詳しい人はいないから、ここで何か困ったら私を頼りなさい」
「はい、ありがとうございます」
アンネまで協力を申し出てくれて、一気に百人力になった気分だ。
「俺は一度帰国しなければいけない」
最後に佑が言い、理解している香澄は「うん」と頷く。
「皆を連れて来てくれてありがとう。秘書として情けないばかりだけど、佑さんの仕事だけは邪魔しないから」
「邪魔とか思わなくていいよ」
佑が言ったあと、我慢できないというように、芳也が御劔邸と御劔ジェットの話をし始めた。
栄子とアンネは個室内にあるミニキッチンでお茶の準備をし、佑と崇はベッド脇に椅子を持って来て会話に混じった。
午後はリハビリ予定が入っていたので、そのタイミングで全員クラウザー家に向かって挨拶をしに行った。
父と芳也はトンボ帰りなので、見舞いはいいからこの際観光を楽しんでほしいと伝える。
その後、佑が家族たちを連れてきて三日目には、日本に向けて発つ事になっていた。
仕事の事も考えて、昼間には崇と芳也を新千歳に下ろしたいという佑の主張で、フライトは夕方を予定していた。
午前中、気を利かせて誰もいない病室で、香澄は佑と会話を重ねる。
「松井さんに宜しくお伝えしてね。本当に申し訳ない……」
「彼はいつも通り泰然自若としているよ。ドイツ土産も俺が松井さんの好物を買っていくから、問題ない」
「うん、ありがとう」
微笑んだ香澄に、彼が尋ねてくる。
「キスしていい?」
「ん……」
同意を示すと、佑が顔を傾けて唇を重ねてきた。
ちゅ、ちゅぷ……と何回も唇をついばまれ、優しいキスに頭の中がフワフワしてくる。
佑は香澄の頭を撫で、耳の輪郭を指でなぞってくる。
「ん……っ」
とても久しぶりに性的な刺激を得たような気がして、香澄は少し顔を離すともの言いたげに佑を見つめる。
「……駄目」
「なんで?」
楽しげに目を細める彼を見て、ピーンと「分かってて言ってる」と理解してしまった。
「……ムラムラしちゃうから」
正直に白状すると、佑がクスクス笑い出す。
「確かに、この状態だとセックスできないもんな。一人エッチも難しい」
香澄に負担を掛けないようにと、佑は耳から手を離す。
「……なんという事でしょう。それでも佑さんとイチャイチャしていたいです」
少し冗談めかして希望を述べると、彼はぶふっと噴き出した。
「俺もだよ」
肩を揺らして笑いながら、彼はポンポンと香澄の頭を撫でてくる。
そして優しい目で見つめ、頬や唇に触れるだけのキスをしてきた。
片手で手を握られ、そこから伝わる温もりだけで心がポカポカしてくる。
彼は椅子から立ち上がり、ベッドの縁に腰掛けると香澄を抱きしめてきた。
「三週間はすぐだよ。お義母さんと一緒に過ごして三週間経ったら、また元の生活に戻れるから」
「うん」
佑は香澄を励ましてくれているのに、半分ほどは自分に言い聞かせているように思えた。
「三週間、浮気したら駄目ですよ?」
「っははっ、しないよ」
「……三週間あったらできない? し放題だよね」
不意に心底疑問に思い、香澄は首をひねる。
「……俺が浮気する前提で考えてるな?」
佑がジト目になり、香澄にごつん、と頭を軽くぶつける。
「いや、世間一般の男性の話」
「んー、まぁ、ワンナイトラブなら幾らでもアリなんじゃないか? 俺はそういうのは絶対にしないけど」
「そっか」
「第一、婚活するにしても、初回に会って相性が良かったとしても、二回目を誘うのは早くて次の週末ぐらいだろ? そう考えると人って簡単に他人に深入りしないと思う。少なくとも、俺は気持ちのない相手とはできない」
「ふーん。ねぇ、これも好奇心だけど、佑さんって風俗行った事ないの?」
何気なく質問した直後、香澄を抱きしめていた佑がビシッと固まった。
(あ、地雷踏んだ)
ピーンと察してしまった香澄は、内心ペロリと舌を出す。
「はい、ありがとうございます」
アンネまで協力を申し出てくれて、一気に百人力になった気分だ。
「俺は一度帰国しなければいけない」
最後に佑が言い、理解している香澄は「うん」と頷く。
「皆を連れて来てくれてありがとう。秘書として情けないばかりだけど、佑さんの仕事だけは邪魔しないから」
「邪魔とか思わなくていいよ」
佑が言ったあと、我慢できないというように、芳也が御劔邸と御劔ジェットの話をし始めた。
栄子とアンネは個室内にあるミニキッチンでお茶の準備をし、佑と崇はベッド脇に椅子を持って来て会話に混じった。
午後はリハビリ予定が入っていたので、そのタイミングで全員クラウザー家に向かって挨拶をしに行った。
父と芳也はトンボ帰りなので、見舞いはいいからこの際観光を楽しんでほしいと伝える。
その後、佑が家族たちを連れてきて三日目には、日本に向けて発つ事になっていた。
仕事の事も考えて、昼間には崇と芳也を新千歳に下ろしたいという佑の主張で、フライトは夕方を予定していた。
午前中、気を利かせて誰もいない病室で、香澄は佑と会話を重ねる。
「松井さんに宜しくお伝えしてね。本当に申し訳ない……」
「彼はいつも通り泰然自若としているよ。ドイツ土産も俺が松井さんの好物を買っていくから、問題ない」
「うん、ありがとう」
微笑んだ香澄に、彼が尋ねてくる。
「キスしていい?」
「ん……」
同意を示すと、佑が顔を傾けて唇を重ねてきた。
ちゅ、ちゅぷ……と何回も唇をついばまれ、優しいキスに頭の中がフワフワしてくる。
佑は香澄の頭を撫で、耳の輪郭を指でなぞってくる。
「ん……っ」
とても久しぶりに性的な刺激を得たような気がして、香澄は少し顔を離すともの言いたげに佑を見つめる。
「……駄目」
「なんで?」
楽しげに目を細める彼を見て、ピーンと「分かってて言ってる」と理解してしまった。
「……ムラムラしちゃうから」
正直に白状すると、佑がクスクス笑い出す。
「確かに、この状態だとセックスできないもんな。一人エッチも難しい」
香澄に負担を掛けないようにと、佑は耳から手を離す。
「……なんという事でしょう。それでも佑さんとイチャイチャしていたいです」
少し冗談めかして希望を述べると、彼はぶふっと噴き出した。
「俺もだよ」
肩を揺らして笑いながら、彼はポンポンと香澄の頭を撫でてくる。
そして優しい目で見つめ、頬や唇に触れるだけのキスをしてきた。
片手で手を握られ、そこから伝わる温もりだけで心がポカポカしてくる。
彼は椅子から立ち上がり、ベッドの縁に腰掛けると香澄を抱きしめてきた。
「三週間はすぐだよ。お義母さんと一緒に過ごして三週間経ったら、また元の生活に戻れるから」
「うん」
佑は香澄を励ましてくれているのに、半分ほどは自分に言い聞かせているように思えた。
「三週間、浮気したら駄目ですよ?」
「っははっ、しないよ」
「……三週間あったらできない? し放題だよね」
不意に心底疑問に思い、香澄は首をひねる。
「……俺が浮気する前提で考えてるな?」
佑がジト目になり、香澄にごつん、と頭を軽くぶつける。
「いや、世間一般の男性の話」
「んー、まぁ、ワンナイトラブなら幾らでもアリなんじゃないか? 俺はそういうのは絶対にしないけど」
「そっか」
「第一、婚活するにしても、初回に会って相性が良かったとしても、二回目を誘うのは早くて次の週末ぐらいだろ? そう考えると人って簡単に他人に深入りしないと思う。少なくとも、俺は気持ちのない相手とはできない」
「ふーん。ねぇ、これも好奇心だけど、佑さんって風俗行った事ないの?」
何気なく質問した直後、香澄を抱きしめていた佑がビシッと固まった。
(あ、地雷踏んだ)
ピーンと察してしまった香澄は、内心ペロリと舌を出す。
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