【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編

今日はお疲れさん

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「オーパ、カスミってこういう子だよ。自分の孫やひ孫みたいに、ただ〝クラウザー家〟の力を使って守ればいいってもんじゃないんだ」

 それに、クラウスも同意する。

「そうだよ。それにあんまりここで関わりすぎると、いざひ孫が生まれた時に近づかせてもらえなくなるよ。『金と権力で人を駄目にするじーさんだ』って」
「そっ、そんなこと言ってません!」

 助け船はありがたいが、クラウスは言い過ぎだ。
 慌てて否定した時、アドラーが溜め息混じりに笑った。

「……では、妻と孫の言葉の通り、ここは引こう」
「ありがとうございます」

 香澄は心底安堵し、お礼を言う。

「他に、望みはないかね?」

 まだ何か言うことを聞こうとするアドラーに、香澄は苦笑いする。

「いいえ。立派な個室に入院させて頂いて、これ以上の事はありません。これから日本から家族が来るみたいですが、落ち着いたころ皆で一度この街をおいとまします。また元気になったら、宜しくお願いします」

 そう言うと、アドラーが名案を思いついたという顔で笑った。

「では、香澄さんのご家族を迎えるために、ホテルの部屋を用意しておこう」
「あっ、あああ……」

 うっかり家族が来ると言ってしまったばかりに、彼にそんな事を言わせてしまったと、香澄は後悔する。

(アドラーさんがホテルを用意するっていうなら、絶対立派なホテルに決まってる……!)

 恐縮するのは香澄だけでなく、庶民代表である両親と弟もだ。
 立派すぎる部屋に無料で泊まっていいといわれ、あの堅実な家族が素直に「ありがとうございます」と思うはずがない。
 家族に余計な気苦労をさせそうで、香澄は冷や汗を流す。

「香澄さん。宿泊場所についてはあなたが折れる番だわ。ホテルはクラウザー家でも経営しているし、余計な出費なしに都合がつくもの」

 けれど節子にやんわりと言われ、それもそうだと納得した。

「分かりました。それでは、家族が滞在しているあいだ、どうぞ宜しくお願い致します」

 頭を下げると、アドラーは「任せたまえ」と嬉しそうに笑った。

「さあ、あまり長居しても香澄さんが疲れてしまうわ」

 節子に言われたあと、クラウザー家の人々が一言ずつ香澄に声を掛け、病室を去ってゆく。

 先日のパーティーの時に会った全員が来た訳ではないが、アドラーと節子の間にいる兄弟たちは、アンネを除いて全員いる。
 その上で手の空いている配偶者や、特に香澄を気に入っている他の親族などが来てくれていた。

 最後に、双子が残った。

「大丈夫? カスミ」
「はい。こんなに思って頂けて、ありがたいばかりです」

「オーパは根っこの部分は、ドイツ人らしく堅実で節約が好きな人だけど、金を使うって決めた時はすっごいからね。それは覚えといた方がいいよ」
「は、はい……」

 その「すっごい」が、香澄には想像もできない大金だろう事を思い、気が遠くなる。

「まぁ、俺たちも似たようなもんだけどね。アパレルやってるけど、普段の自分たちの服はTシャツにジーンズが多いし、見た目より機能や肌心地重視だ」
「そう……ですね」

 言われてみれば、双子……というよりも、海外の人はシンプルな格好をする人が多いとかねてから思っていた。

「ざっくりとした価値観が、見た目をどうこうするよりも、個人の幸せに向いてると思うよ。日本人に社畜が多いのに比べて、こっちは休みをきっちり取るとか言うでしょ」
「そうですね。バカンスって日本にはないですし」

「勿論、ファッションや流行に敏感な人もいるけど、本質的には休暇を取れた時にいかに楽しく過ごすかを目的にして金を貯めている人が多いかな。あと、投資とかは半数以上が普通にやっているね」
「ほぉ……」

 頷くと、クラウスが「話題がずれたね」と笑う。

「要するに、〝大切な時〟には金を使うよ、っていう事。そういう気質の人が多いし、オーパにはたんまり蓄えがある。だからもしもいつか何かしらの金を提示されても、あんまり金額にビビらないようにね」
「あ……、はい……」

 ビビらないないようにね、と言われても、彼らの金銭感覚に慣れる事は一生ないだろう。

「ま、とにかく今日はお疲れさん。もうちょっとしたらタスクが来るだろうから、ゆっくり休んでな」
「はい」

「寂しかったら、僕らが毎日お見舞いに来てあげるから」
「あはは、ありがとうございます」
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