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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編

飴と鞭

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「目が死んでた。この一瞬で何を思いだしてた?」

 鋭く問われ、香澄の目がスイー……と斜めに泳いだ。

「ふん……」

 四つ這いになって目を細めた佑は、問答無用で一度は脇に置いた避妊具を手に取り、容赦なく昂ぶったモノに被せる。

「夫になる男とホテルのベッドにいるのに、余計な事を考えた香澄には、やっぱりお仕置きが必要なようだ」
「そっ……そんなぁ! い、今の回想には理由があって……」

 悲鳴を上げても、グイッと脚を開かれ肉芽をピンと親指で弾かれた。

「ひぃんっ」

 まだ快楽の残滓を残していた体は、それだけでも敏感に反応してしまう。

「ゆ、許して?」
「反省せず許していたら、学習しなくなるだろう? 躾には飴と鞭が必要だ。幸い、飴と鞭が同居しているお仕置きだけどな?」

 グプ……と硬い切っ先が蜜口に当てられ、わざとゆっくり肉棒が進入してくる。

「う……うううう……、ぁ……やぁ……」

 半開きになった唇から悲鳴とも喘ぎともつかない声が漏れて――、やがてその声は紛れもない喘ぎ声となった。





 最上級の部屋から艶めかしい声が止んだのは、空が白み始めた頃である。

 海外に出て開放的になるのは、観光できるからと浮かれる気持ちだけではない。
 普段様々な制約を受けている人間が、バカがつくほど己に素直になって女を愛する気持ちもなのだ。

(何か……対策……を、至急……)

 もう指先一本ピクリとも動かせなくなった香澄は、朦朧とした頭で打開策を考えようとして――オチた。



**



「んぁ……ふ」

 ベッドの上でゆっくり伸びをすると、少し皺の寄ったシーツの上で香澄の手が滑った。半円を描くように動いて――、胴にまわった腕に引き寄せられる。

「おはよ」

 背後から低い声が耳たぶを掠り、昨晩の快楽の残滓を思い出す。
 彼の声もまた寝起きで少し掠れていたので、やけにそれがセクシーだと思った。

「ん……おはよ……。今……何時……」

 ベッドサイドのスマホに手を伸ばす前に、佑が自分の腕時計を持ち上げた。
 当たり前だが、香澄の腕より佑の腕の方が長い。
 佑がとても精巧な作りの――きっと目が飛び出るほどバカ高い腕時計を見て、無造作に戻す。

「……七時半」

 まだどこか眠たそうな声を聞いて、香澄はホ……と安堵の息をつく。

「シャワー……浴びてくる。ご飯も食べないと……」

 そう言って、香澄はゆっくり起き上がる。

(う……)

 思った通り腰が重怠く、意識せず吐息が漏れた。

「つらい?」

 振り向くと、鍛え上げられた上半身を惜しげもなく晒した佑が、髪を乱し気だるげな表情で見上げている。

 日本人的な顔なのに、鼻筋はスッと高くて目元の彫りも深い。
 肌の色も黄色人種のそれと違って、髪の色も地の色なのに綺麗な茶色だ。
 目の色だって決して日本人にはない、黄色や黄緑、緑が混じった薄茶のヘーゼル。

(……綺麗な人)

 男性に見とれるという経験は、日本に住んでいてそうそうないと思う。
 海外慣れしていない香澄にとっては、初めて間近に接したクォーターだ。

「ん? お腹痛い?」

 香澄がボゥッとしているので、何か勘違いした佑はのそりと起き上がり、指の背で香澄の頬を撫で下ろす。

「……う、ううん。大丈夫」

 昨晩、せっかく着てもすぐ剥がされてしまった、トロリとしたシルク生地のキャミソールを着て、揃いのタップパンツを穿く。
 あふ……と欠伸を噛み殺して窓辺に向かうと、重厚で高そうなカーテンを開いた。

「……朝は街が静かなんだね」
「通勤する人はいるけど、店の方は日本のように早朝から働こうっていう人は少ないからな。あと日曜日になると閉店法っていう法律があって規制がかかるから、まず店とかは機能しないよ」

「あぁー……、なんか聞いたことがある。ヨーロッパに旅行に行った同僚とか上司が、街がスッカラカンだったと言ってたような」

 カーテンを開けてからゆっくり室内を歩くが、まだ股の間に何か挟まっている感覚がある。
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