162 / 1,544
第五部・ブルーメンブラットヴィル 編
明日の体力がなくなっちゃう
しおりを挟む
「何のつもりだ?」と香澄のファッションにはうるさい佑が睨めば、「俺たちもカスミに服を贈りたい」との事。
「好きな女に服を送るのは、男が脱がせるためだ」と佑が独占欲を露わにし、女性店員に「Entschuldigung(失礼)」と言って香澄を連れ出すに至った。
その後双子にさんざん「独り占めしてずるい」だの「僕らにも日本女子を!」とブーイングをされた。
さらに佑を懐柔するつもりなのか、郊外にあるワイナリーに連れて行かれる。
香澄は美味しいワインを飲めて幸運だったが、佑は奥の方で双子に肩を抱かれ、値打ち物らしいワインを前に何やら言われていた。
様子を伺っていると「断る」と言ったあと、よほどそのワインがお気に召したのか、佑は自分の金でワインを買っていた。
夕方前にはホテルに帰り、そのあとにクラウザー城に向かって皆に挨拶をし、「疲れたねー」と言いながらゴロゴロしていたはずなのだが……。
(……どうして、こうなる)
避妊具を手にしたまま、佑がじっと香澄を見下ろしている。
まるで獲物を目の前にした捕食者のようだ。
「……したくない?」
「そういう……聞き方は、ずるい」
ハァーッと溜め息をつくと、避妊具を脇に置いた佑がのし掛かってきた。
心地いい重みが体に加わり、「ん」と香澄の呼気が漏れる。
内腿には熱く昂ぶったままのモノが、押しつけられていた。
「……はぁ。結婚できるとなると嬉しくて興奮してるの、俺だけなのかな。何か恥ずかしい……」
佑が手と膝を突いて体を浮かしたかと思うと、頭を掻いて息をつく。
「そ、そうじゃないよ。私だって嬉しくて興奮してるけど……」
起き上がり正面から彼を見ると、嫌でもアレを目にする事になる。
香澄を欲しがってビンと天を突いたままのモノを見ると、折角勃ってくれたのに……と申し訳なくなった。
「けど?」
熱い目で見つめられ、香澄の輪郭を知り尽くした指が頬を撫でる。
「……あ、明日。の、体力がなくなっちゃう」
目を伏せてポショポショと呟くと、佑が真っ直ぐ香澄を見つめたまま何やら思考を巡らせたようだ。
「明日の予定と言っても、オーマに昼食に呼ばれているだけだろう?」
「う、うん。お気に入りの和食レストランに連れて行きたいからって……」
「……十時までに起きれば、完全に間に合うよな?」
彼が何を考えているのか、一瞬にして分かった気がした。
香澄の体力や翌日どれだけ疲労を引きずるかを計算し、このまま何時まで続けても大丈夫なのか逆算しているのだ。
ソレを察した香澄の頬が、ヒクッと引き攣る。
(ダメだ……。この人ダメだ。私、抱き潰される……)
佑に対して「セックスばかりしてる」など言うつもりはない。
自分だからこんなに求めてくれている――のだと思っている。
いつも日本ではマスコミに騒がれる生活を送っていて、気を張ってピリピリしているような気がする。
それから解放され、ドイツに来てから佑はのびのびしているように感じられた。
堂々と外で手繋ぎデートしても、日本にいる時のように衆目を集めない。
街頭でチュッとキスをされても、何ら違和感のない文化圏だ。
そのあからさまな好意の表し方に、ベタベタの日本人である香澄はまだ慣れていない。
思えば健二と付き合った時は、恋人繋ぎをして肩を寄せ合い、街をブラブラ歩いてデートをして……、などしなかった。
外で手を繋ぐには香澄が恥ずかしがって嫌がり、デートと言えば健二の家でゲームをしたり、ケーブルテレビを見たりなど。
ムラムラしたのか、暇つぶしなのか「セックスしたい」と言われた時は、理由をつけて逃げ帰っていた。
今思えば、やりたい盛りの青年に対してひどい事をしてしまった。
彼の性欲が高まりすぎて浮気や暴走に向かってしまったのも、自分のせいでは……と考えてしまう。
けれど当時は身の危険を警戒してばかりで、健二が免許を取って支笏湖などにドライブに行っても、ドキドキ……とは縁が遠かった気がする。
ドライブは確かに好きだし、友達として健二と話しているのはアリだった。
けれど車内でキスをされ、ついでに助手席のシートを倒され、悲鳴を上げて天井を見上げた事があった。
胸をまさぐられ健二がのし掛かってきて……。
『今、生理なの!』
とっさにそんな言い訳をして――。
「香澄?」
「ひっ!?」
耳元でフッと息を掛けられ、ビクンッと体が跳ねた。
「好きな女に服を送るのは、男が脱がせるためだ」と佑が独占欲を露わにし、女性店員に「Entschuldigung(失礼)」と言って香澄を連れ出すに至った。
その後双子にさんざん「独り占めしてずるい」だの「僕らにも日本女子を!」とブーイングをされた。
さらに佑を懐柔するつもりなのか、郊外にあるワイナリーに連れて行かれる。
香澄は美味しいワインを飲めて幸運だったが、佑は奥の方で双子に肩を抱かれ、値打ち物らしいワインを前に何やら言われていた。
様子を伺っていると「断る」と言ったあと、よほどそのワインがお気に召したのか、佑は自分の金でワインを買っていた。
夕方前にはホテルに帰り、そのあとにクラウザー城に向かって皆に挨拶をし、「疲れたねー」と言いながらゴロゴロしていたはずなのだが……。
(……どうして、こうなる)
避妊具を手にしたまま、佑がじっと香澄を見下ろしている。
まるで獲物を目の前にした捕食者のようだ。
「……したくない?」
「そういう……聞き方は、ずるい」
ハァーッと溜め息をつくと、避妊具を脇に置いた佑がのし掛かってきた。
心地いい重みが体に加わり、「ん」と香澄の呼気が漏れる。
内腿には熱く昂ぶったままのモノが、押しつけられていた。
「……はぁ。結婚できるとなると嬉しくて興奮してるの、俺だけなのかな。何か恥ずかしい……」
佑が手と膝を突いて体を浮かしたかと思うと、頭を掻いて息をつく。
「そ、そうじゃないよ。私だって嬉しくて興奮してるけど……」
起き上がり正面から彼を見ると、嫌でもアレを目にする事になる。
香澄を欲しがってビンと天を突いたままのモノを見ると、折角勃ってくれたのに……と申し訳なくなった。
「けど?」
熱い目で見つめられ、香澄の輪郭を知り尽くした指が頬を撫でる。
「……あ、明日。の、体力がなくなっちゃう」
目を伏せてポショポショと呟くと、佑が真っ直ぐ香澄を見つめたまま何やら思考を巡らせたようだ。
「明日の予定と言っても、オーマに昼食に呼ばれているだけだろう?」
「う、うん。お気に入りの和食レストランに連れて行きたいからって……」
「……十時までに起きれば、完全に間に合うよな?」
彼が何を考えているのか、一瞬にして分かった気がした。
香澄の体力や翌日どれだけ疲労を引きずるかを計算し、このまま何時まで続けても大丈夫なのか逆算しているのだ。
ソレを察した香澄の頬が、ヒクッと引き攣る。
(ダメだ……。この人ダメだ。私、抱き潰される……)
佑に対して「セックスばかりしてる」など言うつもりはない。
自分だからこんなに求めてくれている――のだと思っている。
いつも日本ではマスコミに騒がれる生活を送っていて、気を張ってピリピリしているような気がする。
それから解放され、ドイツに来てから佑はのびのびしているように感じられた。
堂々と外で手繋ぎデートしても、日本にいる時のように衆目を集めない。
街頭でチュッとキスをされても、何ら違和感のない文化圏だ。
そのあからさまな好意の表し方に、ベタベタの日本人である香澄はまだ慣れていない。
思えば健二と付き合った時は、恋人繋ぎをして肩を寄せ合い、街をブラブラ歩いてデートをして……、などしなかった。
外で手を繋ぐには香澄が恥ずかしがって嫌がり、デートと言えば健二の家でゲームをしたり、ケーブルテレビを見たりなど。
ムラムラしたのか、暇つぶしなのか「セックスしたい」と言われた時は、理由をつけて逃げ帰っていた。
今思えば、やりたい盛りの青年に対してひどい事をしてしまった。
彼の性欲が高まりすぎて浮気や暴走に向かってしまったのも、自分のせいでは……と考えてしまう。
けれど当時は身の危険を警戒してばかりで、健二が免許を取って支笏湖などにドライブに行っても、ドキドキ……とは縁が遠かった気がする。
ドライブは確かに好きだし、友達として健二と話しているのはアリだった。
けれど車内でキスをされ、ついでに助手席のシートを倒され、悲鳴を上げて天井を見上げた事があった。
胸をまさぐられ健二がのし掛かってきて……。
『今、生理なの!』
とっさにそんな言い訳をして――。
「香澄?」
「ひっ!?」
耳元でフッと息を掛けられ、ビクンッと体が跳ねた。
42
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
結婚までの120日~結婚式が決まっているのに前途は見えない~【完結】
まぁ
恋愛
イケメン好き&イケオジ好き集まれ~♡
泣いたあとには愛されましょう☆*: .。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
優しさと思いやりは異なるもの…とても深い、大人の心の奥に響く読み物。
6月の結婚式を予約した私たちはバレンタインデーに喧嘩した
今までなら喧嘩になんてならなかったようなことだよ…
結婚式はキャンセル?予定通り?それとも…彼が私以外の誰かと結婚したり
逆に私が彼以外の誰かと結婚する…そんな可能性もあるのかな…
バレンタインデーから結婚式まで120日…どうなっちゃうの??
お話はフィクションであり作者の妄想です。
浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。
Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。
【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが!
kana
恋愛
前世を思い出したのは階段からの落下中。
絶体絶命のピンチも自力で乗り切ったアリシア。
ここはゲームの世界なのか、ただの転生なのかも分からない。
前世を思い出したことで変わったのは性格だけ。
チートともないけど前向きな性格で我が道を行くアリシア。
そんな時ヒロイン?登場でピンチに・・・
ユルい設定になっています。
作者の力不足はお許しください。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
転生幼女の愛され公爵令嬢
meimei
恋愛
地球日本国2005年生まれの女子高生だったはずの咲良(サクラ)は目が覚めたら3歳幼女だった。どうやら昨日転んで頭をぶつけて一気に
前世を思い出したらしい…。
愛されチートと加護、神獣
逆ハーレムと願望をすべて詰め込んだ作品に…
(*ノω・*)テヘ
なにぶん初めての素人作品なのでゆるーく読んで頂けたらありがたいです!
幼女からスタートなので逆ハーレムは先がながいです…
一応R15指定にしました(;・∀・)
注意: これは作者の妄想により書かれた
すべてフィクションのお話です!
物や人、動物、植物、全てが妄想による産物なので宜しくお願いしますm(_ _)m
また誤字脱字もゆるく流して頂けるとありがたいですm(_ _)m
エール&いいね♡ありがとうございます!!
とても嬉しく励みになります!!
投票ありがとうございました!!(*^^*)
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
百姓貴族はお呼びじゃないと言われ婚約破棄をされて追放されたので隣国で農業しながら幸せになります!
ユウ
恋愛
多くの女神が存在する世界で豊穣の加護というマイナーな加護を持つ伯爵令嬢のアンリは理不尽な理由で婚約を破棄されてしまう。
相手は侯爵家の子息で、本人の言い分では…
「百姓貴族はお呼びじゃない!」
…とのことだった。
優れた加護を持たないアンリが唯一使役出るのはゴーレムぐらいだった。
周りからも馬鹿にされ社交界からも事実上追放の身になっただけでなく大事な領地を慰謝料変わりだと奪われてしまう。
王都から離れて辺境地にて新たな一歩をゴーレムと一から出直すことにしたのだが…その荒れ地は精霊の聖地だった。
森の精霊が住まう地で農業を始めたアンリは腹ペコの少年アレクと出会うのだった。
一方、理不尽な理由でアンリを社交界から追放したことで、豊穣の女神を怒らせたことで裁きを受けることになった元婚約者達は――。
アンリから奪った領地は不作になり、実家の領地では災害が続き災難が続いた。
しかもアンリの財産を奪ったことがばれてしまい、第三機関から訴えられることとなり窮地に立たされ、止む終えず、アンリを呼び戻そうとしたが、既にアンリは国にはいなかった。
従姉が私の元婚約者と結婚するそうですが、その日に私も結婚します。既に招待状の返事も届いているのですが、どうなっているのでしょう?
珠宮さくら
恋愛
シーグリッド・オングストレームは人生の一大イベントを目前にして、その準備におわれて忙しくしていた。
そんな時に従姉から、結婚式の招待状が届いたのだが疲れきったシーグリッドは、それを一度に理解するのが難しかった。
そんな中で、元婚約者が従姉と結婚することになったことを知って、シーグリッドだけが従姉のことを心から心配していた。
一方の従姉は、年下のシーグリッドが先に結婚するのに焦っていたようで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる