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第五部・ブルーメンブラットヴィル 編
サプライズ
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「では、佑と香澄さんに乾杯!」
アドラーが〝日本語で〟乾杯の音頭を取り、香澄が「えっ?」と思った途端、全員が〝日本語で〟「乾杯!」とシャンパングラスを掲げた。
「えぇえっ!?」
驚愕している香澄を見て、まず手を打ち鳴らして喜んだのは双子だ。
「やったねー! サプライズ成功!」
「驚いた顔もかーわいい!」
キャッキャと笑う双子を見て、香澄は片手でシャンパングラスを掲げたまま固まっている。
そんな彼女に、佑の叔父らしい男性が申し訳なさそうに笑いかけた。
「私たちは母の教育のおかげで、第二言語的に日本語を学んでいるんだ。勿論、ドイツに生まれて国や教育としての第二言語はあるが、クラウザー家では皆日本語を話せて当たり前という環境になっている」
「そ、そうなんですね!?」
言われてみれば、ドイツにいても着物姿を崩さない節子の意志とも言える様子を見ると、日本的な教育が行き届いていてもおかしくない。
(あ、そういえば佑さんからも以前にそんな事を聞いたような……)
「かすみ、びっくりした?」
先ほど佑と挨拶をしていた女の子に尋ねられ、そのかわいさに胸がキューッとなる。
「うん。びっくりしました」
「やったー! えへへ」
無邪気に喜ぶその顔がプライスレスで、香澄は目尻を下げてニコニコした。
「彼女は姪」
佑が隣からコソッと解説してくれる。
そして両側にいる両親らしき男性と女性が、香澄に向かってヒラヒラと手を振った。
「僕ら発案のドッキリなんだけど、天才じゃない?」
クラウスが言い、佑が真顔でツッコミを入れる。
「ろくな事を考えないのは、お前達しかいないと思ってたよ」
「やだなぁ、人聞きの悪い……」
近くにいた女性が、「カスミさん、これ食べて」と料理を取ってくれ、ドイツ料理の説明をしてくれる。
「あっ、ありがとうございます! 頂きます!」
「カスミは肉料理好きだったよね。がっつり食べてってね」
アロイスに言われ、香澄は一瞬周囲を気にしてから笑う。
「は、はい」
(食いしん坊って思われたらどうしよう……)
そう思ったのとは別に、アロイスの言葉を聞いて周囲にいた大人達が内心「そうか、肉か」と自分の心のメモに書いたのは言うまでもない。
「でも、サプライズではあるんだけど、カスミが僕らの言葉で挨拶してくれたからこそ、皆最初に思っていたよりグッと親しみを覚えたのは確かだと思うよ」
クラウスが言い、周りにいた親戚達が頷いた。
「やっぱり母国語を話してくれると、慣れないだろうに練習してくれたのかと嬉しくなるな」
男性が言い、叔母らしき女性も微笑む。
「どこの国もだけど、カタコトでもその土地の言葉で挨拶をし、土地の食べ物を口にすると一気に距離感が縮まるって言うわよね」
「分かります……!」
観光客が何のために訪日したのか、追跡レポートをするバラエティ番組があり、香澄は好んで視聴していた。
それを見ていて常々思うが、日本語を話せる外国人がいると嬉しくなるし、日本の食べ物や文化が好きだと言ってくれると、テレビを見ながらニコニコしてしまう。
その後、ドイツ産のワインやビールも交えてご馳走を食べながら、会話を振られ自己紹介をされていった。
全員はすぐに覚えられないが、香澄は懸命に対応し、ドイツあるあるなども教えてもらい、楽しく過ごす事ができた。
「ふいーっ……! ちゅかれた……」
ホテルに戻り、風呂に入ったあと香澄はバフッとベッドに倒れ込む。
「お疲れ様」
一緒に風呂に入った佑はミニバーから水を持ってきてくれ、「はい、水分補給して」と差し出してくれる。
「ありがと」
モソリと起き上がったかすみは、クピクピと水を飲む。
「さて、何か忘れてないかな?」
「ん?」
にっこり笑われ、楽しい時間を過ごしてご機嫌だった香澄の笑顔がこわばる。
アドラーが〝日本語で〟乾杯の音頭を取り、香澄が「えっ?」と思った途端、全員が〝日本語で〟「乾杯!」とシャンパングラスを掲げた。
「えぇえっ!?」
驚愕している香澄を見て、まず手を打ち鳴らして喜んだのは双子だ。
「やったねー! サプライズ成功!」
「驚いた顔もかーわいい!」
キャッキャと笑う双子を見て、香澄は片手でシャンパングラスを掲げたまま固まっている。
そんな彼女に、佑の叔父らしい男性が申し訳なさそうに笑いかけた。
「私たちは母の教育のおかげで、第二言語的に日本語を学んでいるんだ。勿論、ドイツに生まれて国や教育としての第二言語はあるが、クラウザー家では皆日本語を話せて当たり前という環境になっている」
「そ、そうなんですね!?」
言われてみれば、ドイツにいても着物姿を崩さない節子の意志とも言える様子を見ると、日本的な教育が行き届いていてもおかしくない。
(あ、そういえば佑さんからも以前にそんな事を聞いたような……)
「かすみ、びっくりした?」
先ほど佑と挨拶をしていた女の子に尋ねられ、そのかわいさに胸がキューッとなる。
「うん。びっくりしました」
「やったー! えへへ」
無邪気に喜ぶその顔がプライスレスで、香澄は目尻を下げてニコニコした。
「彼女は姪」
佑が隣からコソッと解説してくれる。
そして両側にいる両親らしき男性と女性が、香澄に向かってヒラヒラと手を振った。
「僕ら発案のドッキリなんだけど、天才じゃない?」
クラウスが言い、佑が真顔でツッコミを入れる。
「ろくな事を考えないのは、お前達しかいないと思ってたよ」
「やだなぁ、人聞きの悪い……」
近くにいた女性が、「カスミさん、これ食べて」と料理を取ってくれ、ドイツ料理の説明をしてくれる。
「あっ、ありがとうございます! 頂きます!」
「カスミは肉料理好きだったよね。がっつり食べてってね」
アロイスに言われ、香澄は一瞬周囲を気にしてから笑う。
「は、はい」
(食いしん坊って思われたらどうしよう……)
そう思ったのとは別に、アロイスの言葉を聞いて周囲にいた大人達が内心「そうか、肉か」と自分の心のメモに書いたのは言うまでもない。
「でも、サプライズではあるんだけど、カスミが僕らの言葉で挨拶してくれたからこそ、皆最初に思っていたよりグッと親しみを覚えたのは確かだと思うよ」
クラウスが言い、周りにいた親戚達が頷いた。
「やっぱり母国語を話してくれると、慣れないだろうに練習してくれたのかと嬉しくなるな」
男性が言い、叔母らしき女性も微笑む。
「どこの国もだけど、カタコトでもその土地の言葉で挨拶をし、土地の食べ物を口にすると一気に距離感が縮まるって言うわよね」
「分かります……!」
観光客が何のために訪日したのか、追跡レポートをするバラエティ番組があり、香澄は好んで視聴していた。
それを見ていて常々思うが、日本語を話せる外国人がいると嬉しくなるし、日本の食べ物や文化が好きだと言ってくれると、テレビを見ながらニコニコしてしまう。
その後、ドイツ産のワインやビールも交えてご馳走を食べながら、会話を振られ自己紹介をされていった。
全員はすぐに覚えられないが、香澄は懸命に対応し、ドイツあるあるなども教えてもらい、楽しく過ごす事ができた。
「ふいーっ……! ちゅかれた……」
ホテルに戻り、風呂に入ったあと香澄はバフッとベッドに倒れ込む。
「お疲れ様」
一緒に風呂に入った佑はミニバーから水を持ってきてくれ、「はい、水分補給して」と差し出してくれる。
「ありがと」
モソリと起き上がったかすみは、クピクピと水を飲む。
「さて、何か忘れてないかな?」
「ん?」
にっこり笑われ、楽しい時間を過ごしてご機嫌だった香澄の笑顔がこわばる。
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