147 / 1,549
第四部・婚約 編
親友とランチ
しおりを挟む
赤松家の家族と会ったのは土曜日の昼間で、翌日日曜日の午前中に、親友の麻衣と会う約束をしていた。
「俺も同席していいのか?」
香澄が佑を誘ったので、ホテルに戻ったあと彼が気遣わしげに言う。
「勿論! 麻衣も佑さんに会えるって興奮してたよ!」
「……ならいいけど。ちょっと緊張してきたな」
「えぇ? 家族への挨拶はもう済ませたのに?」
「意外と、女友達の方がしっかり香澄を守ってそうじゃないか。香澄ってちょっとこう、守りたくなるところがあるし」
「あはは、ないない」
顔の前でパタパタと手を振る香澄は、自分は割としっかりしている方だと思っている。
「店は?」
「すぐ目の前のカフェ。麻衣が予約してくれてるみたい」
「へぇ、いいな」
その日は明日のために風呂に入って、同じベッドで仲良く寝た。
**
翌日、ランチはコース仕立てらしいので、香澄はワンピースを着た。
トープカラーのワンピースで、スカートは細かいプリーツになっている。
その上にくすみピンクのスプリングコートを着た。
街中の道路にはもう雪がないので、靴はパンプスだ。
二人が泊まっているホテルは札幌駅から歩いてすぐで、目的のカフェは道路を挟んだ向かいのビルにある。
予約時間が十二時なので、十五分前に部屋を出てゆっくり歩いた。
佑はカーキ色のテーパードパンツに白いロングTシャツ、その上に黒いジャケットとスプリングコート姿だ。
ほんの少しだけ周囲から認識を逸らしたいのか、黒縁のだて眼鏡を掛けている。
(イケメンは何をしてもイケメンなんだけどな……。何より背が高くてイケメンオーラがバリバリ出てるから、遠目から見ても注目されるんだけど……)
香澄が思う通り、すれ違う人は老若男女問わず佑をチラ見している。
若い人は二度見ほどして、通り過ぎてから「御劔佑!?」と小さな声で言っていた。
(目立つなぁ……)
横断歩道を渡って向かいまで行くと、北海道銘菓と言えばな『浜梨亭』のビルがある。
「あ……。帰りに寄りたいな」
佑は一階にある『浜梨亭』の店舗を見て、ウズッとする。
「あはは! 私も東京で地元の味食べたいから、おやつに買ってこーっと」
そのまま二人は、九階までエレベーターに乗って向かった。
フロアに着くとすぐ向かいに目的の店、『モクレールカフェ 雨のち晴れ』がある。
円山公園前に、某ガイドで星のついている『モクレール』というフレンチレストランがある。
ここのカフェは、そのレストランの姉妹店だ。
店内に入ると目の前にハンガーラックがあり、そこでコートを預かってもらう。
「わぁ、オシャレ」
中はすぐ左手に木製のキッチン台があり、その上にフルーツがのった籠などがある。
店内は明るく、ウッド調で統一されナチュラルながら品もある。
奥はガラス張りになっていて、その向こうに二人が泊まっているホテルが見えた。
「香澄!」
待ち合わせをしていると言って麻衣の名前を出すと、窓側のテーブル席に通される。
「うわ! わ! ほっ、ほんもの……」
先に着いて待っていた麻衣は、佑を見て赤面し、わたわたと立ち上がった。
肩につくぐらいの髪の彼女は、黒いリブニットに、グレーのスウェットスカートをはいている。
店中の人から注目を浴びているからか、彼女は恥ずかしそうに店内を見回し、佑に頭を下げた。
「すみません、個室のある店にした方が良かったですね……」
「いえいえ、そんな特別な存在じゃないので、お気にせず」
佑はにこやかに対応したあと、「座ろうか」と香澄に言って椅子に腰掛けた。
麻衣が心の中で「特別な存在ですよ……」と突っ込んでいるのが、香澄にはよく分かる。
運ばれてきたお冷やを一口飲み、出されたメニューを見る。
「麻衣さん、肉は好き?」
「はっ、はい!」
佑に尋ねられ、麻衣は赤面したままコクコクと頷く。
「じゃあ、ランチのBコースの牛ロースステーキプラスを三人前、ドリンクはどうする?」
言われて、香澄も麻衣も季節のフレッシュジュースを選んだ。
佑はノンアルコールのワインを頼み、「さて」と麻衣に笑顔を向ける。
「俺も同席していいのか?」
香澄が佑を誘ったので、ホテルに戻ったあと彼が気遣わしげに言う。
「勿論! 麻衣も佑さんに会えるって興奮してたよ!」
「……ならいいけど。ちょっと緊張してきたな」
「えぇ? 家族への挨拶はもう済ませたのに?」
「意外と、女友達の方がしっかり香澄を守ってそうじゃないか。香澄ってちょっとこう、守りたくなるところがあるし」
「あはは、ないない」
顔の前でパタパタと手を振る香澄は、自分は割としっかりしている方だと思っている。
「店は?」
「すぐ目の前のカフェ。麻衣が予約してくれてるみたい」
「へぇ、いいな」
その日は明日のために風呂に入って、同じベッドで仲良く寝た。
**
翌日、ランチはコース仕立てらしいので、香澄はワンピースを着た。
トープカラーのワンピースで、スカートは細かいプリーツになっている。
その上にくすみピンクのスプリングコートを着た。
街中の道路にはもう雪がないので、靴はパンプスだ。
二人が泊まっているホテルは札幌駅から歩いてすぐで、目的のカフェは道路を挟んだ向かいのビルにある。
予約時間が十二時なので、十五分前に部屋を出てゆっくり歩いた。
佑はカーキ色のテーパードパンツに白いロングTシャツ、その上に黒いジャケットとスプリングコート姿だ。
ほんの少しだけ周囲から認識を逸らしたいのか、黒縁のだて眼鏡を掛けている。
(イケメンは何をしてもイケメンなんだけどな……。何より背が高くてイケメンオーラがバリバリ出てるから、遠目から見ても注目されるんだけど……)
香澄が思う通り、すれ違う人は老若男女問わず佑をチラ見している。
若い人は二度見ほどして、通り過ぎてから「御劔佑!?」と小さな声で言っていた。
(目立つなぁ……)
横断歩道を渡って向かいまで行くと、北海道銘菓と言えばな『浜梨亭』のビルがある。
「あ……。帰りに寄りたいな」
佑は一階にある『浜梨亭』の店舗を見て、ウズッとする。
「あはは! 私も東京で地元の味食べたいから、おやつに買ってこーっと」
そのまま二人は、九階までエレベーターに乗って向かった。
フロアに着くとすぐ向かいに目的の店、『モクレールカフェ 雨のち晴れ』がある。
円山公園前に、某ガイドで星のついている『モクレール』というフレンチレストランがある。
ここのカフェは、そのレストランの姉妹店だ。
店内に入ると目の前にハンガーラックがあり、そこでコートを預かってもらう。
「わぁ、オシャレ」
中はすぐ左手に木製のキッチン台があり、その上にフルーツがのった籠などがある。
店内は明るく、ウッド調で統一されナチュラルながら品もある。
奥はガラス張りになっていて、その向こうに二人が泊まっているホテルが見えた。
「香澄!」
待ち合わせをしていると言って麻衣の名前を出すと、窓側のテーブル席に通される。
「うわ! わ! ほっ、ほんもの……」
先に着いて待っていた麻衣は、佑を見て赤面し、わたわたと立ち上がった。
肩につくぐらいの髪の彼女は、黒いリブニットに、グレーのスウェットスカートをはいている。
店中の人から注目を浴びているからか、彼女は恥ずかしそうに店内を見回し、佑に頭を下げた。
「すみません、個室のある店にした方が良かったですね……」
「いえいえ、そんな特別な存在じゃないので、お気にせず」
佑はにこやかに対応したあと、「座ろうか」と香澄に言って椅子に腰掛けた。
麻衣が心の中で「特別な存在ですよ……」と突っ込んでいるのが、香澄にはよく分かる。
運ばれてきたお冷やを一口飲み、出されたメニューを見る。
「麻衣さん、肉は好き?」
「はっ、はい!」
佑に尋ねられ、麻衣は赤面したままコクコクと頷く。
「じゃあ、ランチのBコースの牛ロースステーキプラスを三人前、ドリンクはどうする?」
言われて、香澄も麻衣も季節のフレッシュジュースを選んだ。
佑はノンアルコールのワインを頼み、「さて」と麻衣に笑顔を向ける。
42
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる