147 / 1,508
第四部・婚約 編
親友とランチ
しおりを挟む
赤松家の家族と会ったのは土曜日の昼間で、翌日日曜日の午前中に、親友の麻衣と会う約束をしていた。
「俺も同席していいのか?」
香澄が佑を誘ったので、ホテルに戻ったあと彼が気遣わしげに言う。
「勿論! 麻衣も佑さんに会えるって興奮してたよ!」
「……ならいいけど。ちょっと緊張してきたな」
「えぇ? 家族への挨拶はもう済ませたのに?」
「意外と、女友達の方がしっかり香澄を守ってそうじゃないか。香澄ってちょっとこう、守りたくなるところがあるし」
「あはは、ないない」
顔の前でパタパタと手を振る香澄は、自分は割としっかりしている方だと思っている。
「店は?」
「すぐ目の前のカフェ。麻衣が予約してくれてるみたい」
「へぇ、いいな」
その日は明日のために風呂に入って、同じベッドで仲良く寝た。
**
翌日、ランチはコース仕立てらしいので、香澄はワンピースを着た。
トープカラーのワンピースで、スカートは細かいプリーツになっている。
その上にくすみピンクのスプリングコートを着た。
街中の道路にはもう雪がないので、靴はパンプスだ。
二人が泊まっているホテルは札幌駅から歩いてすぐで、目的のカフェは道路を挟んだ向かいのビルにある。
予約時間が十二時なので、十五分前に部屋を出てゆっくり歩いた。
佑はカーキ色のテーパードパンツに白いロングTシャツ、その上に黒いジャケットとスプリングコート姿だ。
ほんの少しだけ周囲から認識を逸らしたいのか、黒縁のだて眼鏡を掛けている。
(イケメンは何をしてもイケメンなんだけどな……。何より背が高くてイケメンオーラがバリバリ出てるから、遠目から見ても注目されるんだけど……)
香澄が思う通り、すれ違う人は老若男女問わず佑をチラ見している。
若い人は二度見ほどして、通り過ぎてから「御劔佑!?」と小さな声で言っていた。
(目立つなぁ……)
横断歩道を渡って向かいまで行くと、北海道銘菓と言えばな『浜梨亭』のビルがある。
「あ……。帰りに寄りたいな」
佑は一階にある『浜梨亭』の店舗を見て、ウズッとする。
「あはは! 私も東京で地元の味食べたいから、おやつに買ってこーっと」
そのまま二人は、九階までエレベーターに乗って向かった。
フロアに着くとすぐ向かいに目的の店、『モクレールカフェ 雨のち晴れ』がある。
円山公園前に、某ガイドで星のついている『モクレール』というフレンチレストランがある。
ここのカフェは、そのレストランの姉妹店だ。
店内に入ると目の前にハンガーラックがあり、そこでコートを預かってもらう。
「わぁ、オシャレ」
中はすぐ左手に木製のキッチン台があり、その上にフルーツがのった籠などがある。
店内は明るく、ウッド調で統一されナチュラルながら品もある。
奥はガラス張りになっていて、その向こうに二人が泊まっているホテルが見えた。
「香澄!」
待ち合わせをしていると言って麻衣の名前を出すと、窓側のテーブル席に通される。
「うわ! わ! ほっ、ほんもの……」
先に着いて待っていた麻衣は、佑を見て赤面し、わたわたと立ち上がった。
肩につくぐらいの髪の彼女は、黒いリブニットに、グレーのスウェットスカートをはいている。
店中の人から注目を浴びているからか、彼女は恥ずかしそうに店内を見回し、佑に頭を下げた。
「すみません、個室のある店にした方が良かったですね……」
「いえいえ、そんな特別な存在じゃないので、お気にせず」
佑はにこやかに対応したあと、「座ろうか」と香澄に言って椅子に腰掛けた。
麻衣が心の中で「特別な存在ですよ……」と突っ込んでいるのが、香澄にはよく分かる。
運ばれてきたお冷やを一口飲み、出されたメニューを見る。
「麻衣さん、肉は好き?」
「はっ、はい!」
佑に尋ねられ、麻衣は赤面したままコクコクと頷く。
「じゃあ、ランチのBコースの牛ロースステーキプラスを三人前、ドリンクはどうする?」
言われて、香澄も麻衣も季節のフレッシュジュースを選んだ。
佑はノンアルコールのワインを頼み、「さて」と麻衣に笑顔を向ける。
「俺も同席していいのか?」
香澄が佑を誘ったので、ホテルに戻ったあと彼が気遣わしげに言う。
「勿論! 麻衣も佑さんに会えるって興奮してたよ!」
「……ならいいけど。ちょっと緊張してきたな」
「えぇ? 家族への挨拶はもう済ませたのに?」
「意外と、女友達の方がしっかり香澄を守ってそうじゃないか。香澄ってちょっとこう、守りたくなるところがあるし」
「あはは、ないない」
顔の前でパタパタと手を振る香澄は、自分は割としっかりしている方だと思っている。
「店は?」
「すぐ目の前のカフェ。麻衣が予約してくれてるみたい」
「へぇ、いいな」
その日は明日のために風呂に入って、同じベッドで仲良く寝た。
**
翌日、ランチはコース仕立てらしいので、香澄はワンピースを着た。
トープカラーのワンピースで、スカートは細かいプリーツになっている。
その上にくすみピンクのスプリングコートを着た。
街中の道路にはもう雪がないので、靴はパンプスだ。
二人が泊まっているホテルは札幌駅から歩いてすぐで、目的のカフェは道路を挟んだ向かいのビルにある。
予約時間が十二時なので、十五分前に部屋を出てゆっくり歩いた。
佑はカーキ色のテーパードパンツに白いロングTシャツ、その上に黒いジャケットとスプリングコート姿だ。
ほんの少しだけ周囲から認識を逸らしたいのか、黒縁のだて眼鏡を掛けている。
(イケメンは何をしてもイケメンなんだけどな……。何より背が高くてイケメンオーラがバリバリ出てるから、遠目から見ても注目されるんだけど……)
香澄が思う通り、すれ違う人は老若男女問わず佑をチラ見している。
若い人は二度見ほどして、通り過ぎてから「御劔佑!?」と小さな声で言っていた。
(目立つなぁ……)
横断歩道を渡って向かいまで行くと、北海道銘菓と言えばな『浜梨亭』のビルがある。
「あ……。帰りに寄りたいな」
佑は一階にある『浜梨亭』の店舗を見て、ウズッとする。
「あはは! 私も東京で地元の味食べたいから、おやつに買ってこーっと」
そのまま二人は、九階までエレベーターに乗って向かった。
フロアに着くとすぐ向かいに目的の店、『モクレールカフェ 雨のち晴れ』がある。
円山公園前に、某ガイドで星のついている『モクレール』というフレンチレストランがある。
ここのカフェは、そのレストランの姉妹店だ。
店内に入ると目の前にハンガーラックがあり、そこでコートを預かってもらう。
「わぁ、オシャレ」
中はすぐ左手に木製のキッチン台があり、その上にフルーツがのった籠などがある。
店内は明るく、ウッド調で統一されナチュラルながら品もある。
奥はガラス張りになっていて、その向こうに二人が泊まっているホテルが見えた。
「香澄!」
待ち合わせをしていると言って麻衣の名前を出すと、窓側のテーブル席に通される。
「うわ! わ! ほっ、ほんもの……」
先に着いて待っていた麻衣は、佑を見て赤面し、わたわたと立ち上がった。
肩につくぐらいの髪の彼女は、黒いリブニットに、グレーのスウェットスカートをはいている。
店中の人から注目を浴びているからか、彼女は恥ずかしそうに店内を見回し、佑に頭を下げた。
「すみません、個室のある店にした方が良かったですね……」
「いえいえ、そんな特別な存在じゃないので、お気にせず」
佑はにこやかに対応したあと、「座ろうか」と香澄に言って椅子に腰掛けた。
麻衣が心の中で「特別な存在ですよ……」と突っ込んでいるのが、香澄にはよく分かる。
運ばれてきたお冷やを一口飲み、出されたメニューを見る。
「麻衣さん、肉は好き?」
「はっ、はい!」
佑に尋ねられ、麻衣は赤面したままコクコクと頷く。
「じゃあ、ランチのBコースの牛ロースステーキプラスを三人前、ドリンクはどうする?」
言われて、香澄も麻衣も季節のフレッシュジュースを選んだ。
佑はノンアルコールのワインを頼み、「さて」と麻衣に笑顔を向ける。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
2,461
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる