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第四部・婚約 編
その後の予定は?
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『……はい』
ずっと、「落としたらダメだ」ときつく自分に言い聞かせながら、荷物を両手で抱えて走ってきた気がする。
それを、二人は「一緒に持ちますよ」と言ってくれたのだ。
どことなく、フ……ッと肩から力が抜けたように思えた。
『じゃあ、今後、何かあっても俺の指示通り休んでくれるね?』
『はい』
佑に言われ、香澄は「守られてるな」と思いながら、二人の厚意をありがたく受け取った。
遅い朝食をとり、あとは斎藤と島谷の邪魔をしないように自室に戻った。
香澄が食事をしている間、島谷は香澄の部屋の掃除を済ませていた。
基本的に御劔家はお掃除ロボットが各フロアにあるので、島谷はお掃除ロボットが行き届かない場所や、棚の上などの掃除をする。
洗濯はクリーニングにまわす物と、自宅で洗濯する物を選別し、ランドリーで回しておく。
正直、実家の母以外の人に下着を洗ってもらうのが、恥ずかしくて堪らない。
けれどそれも彼女の〝仕事〟なので、何も言うまい……と思っている。
それを言ってしまえば、二人が汚したシーツやら何やらも、彼女がいつも掃除してくれているのだ。
昼近くまでゆっくり過ごしたあと、ブラリと散歩に出た。
戻ったあとは斎藤がサラダとフルーツを用意してくれていたので、それを食べる。
夕方近くになった頃、アンネから電話があった。
(えっ? 何だろう?)
ベッドの上でゴロゴロしながら、電子書籍で漫画を読んでいた香澄は、おもわず正座をしてスマホをタップした。
「も、もしもし」
『もしもし、私よ』
「はい、少しぶりです。お変わりないですか?」
『そういう挨拶はいいわ。香澄さん、その後の予定は?』
「……………………えっ…………と。予定、とは」
『佑との結婚式よ』
「えっ!?」
いつのまにそういう事になったのか分からず、香澄は素っ頓狂な声を上げた。
『佑に聞いたけど、香澄さんのご両親にも挨拶をしたんでしょう?』
「しっ、しましたけど、あれは結婚というより、上司になる人として東京に連れて行きますというアレでして……」
『なら似たようなものじゃない。次の週末にでも、札幌に行ってご挨拶をしたら?』
「いっ、いぇええ……!?」
アンネのいきなり発言の混乱から立ち直れていないまま、香澄は妙な声を出す。
『なによ』
「いっ、いえ……っ、あの、急で……」
『結婚するつもりで、箱根にも佑と一緒に来たんじゃなかったの?』
「そっ……、あの……」
結婚するつもりはあるが、箱根は結婚の報告のつもりではなかった。
結果的にほぼそうなってしまったと言ってもいいが、「私たち結婚します」と言うのはまた別の機会だと思っている。
なのでアンネの話がホップステップを通り越して棒高跳びほどになっていて、香澄はただうろたえるしかできない。
(えええ……。いつの間にこんな賛成派になったの?)
正直、アンネの考えが読めない。
人となりは先日の箱根で理解したが、「いつそうなりました!?」という突っ込み所が多すぎる。
『今は春だから、遅くても来年の秋ぐらいまでには……よね?』
「えっ、えぇと! それは佑さんと話し合わないと分かりません」
『二人の将来について話し合ったりしないの? 何のために同棲してるの?』
「なっ、何のためにと言われましても……」
佑の厚意に甘えて、まだのんびりと〝お試し期間〟のつもりだったが、周りはそうではないようだ。
急に焦りを感じた香澄は、「どうしよう」とウロウロ歩こうとして、正座したままだったのを忘れ、ベシャッとベッドの上に崩れた。
(あっしぃ……! 痺れた!)
『招待客の相談はいつでも受けるわ。先方もお忙しい方々が多いから、なるべく早めにね』
「は、はい」
よく分からないが、大変な事になった。
ずっと、「落としたらダメだ」ときつく自分に言い聞かせながら、荷物を両手で抱えて走ってきた気がする。
それを、二人は「一緒に持ちますよ」と言ってくれたのだ。
どことなく、フ……ッと肩から力が抜けたように思えた。
『じゃあ、今後、何かあっても俺の指示通り休んでくれるね?』
『はい』
佑に言われ、香澄は「守られてるな」と思いながら、二人の厚意をありがたく受け取った。
遅い朝食をとり、あとは斎藤と島谷の邪魔をしないように自室に戻った。
香澄が食事をしている間、島谷は香澄の部屋の掃除を済ませていた。
基本的に御劔家はお掃除ロボットが各フロアにあるので、島谷はお掃除ロボットが行き届かない場所や、棚の上などの掃除をする。
洗濯はクリーニングにまわす物と、自宅で洗濯する物を選別し、ランドリーで回しておく。
正直、実家の母以外の人に下着を洗ってもらうのが、恥ずかしくて堪らない。
けれどそれも彼女の〝仕事〟なので、何も言うまい……と思っている。
それを言ってしまえば、二人が汚したシーツやら何やらも、彼女がいつも掃除してくれているのだ。
昼近くまでゆっくり過ごしたあと、ブラリと散歩に出た。
戻ったあとは斎藤がサラダとフルーツを用意してくれていたので、それを食べる。
夕方近くになった頃、アンネから電話があった。
(えっ? 何だろう?)
ベッドの上でゴロゴロしながら、電子書籍で漫画を読んでいた香澄は、おもわず正座をしてスマホをタップした。
「も、もしもし」
『もしもし、私よ』
「はい、少しぶりです。お変わりないですか?」
『そういう挨拶はいいわ。香澄さん、その後の予定は?』
「……………………えっ…………と。予定、とは」
『佑との結婚式よ』
「えっ!?」
いつのまにそういう事になったのか分からず、香澄は素っ頓狂な声を上げた。
『佑に聞いたけど、香澄さんのご両親にも挨拶をしたんでしょう?』
「しっ、しましたけど、あれは結婚というより、上司になる人として東京に連れて行きますというアレでして……」
『なら似たようなものじゃない。次の週末にでも、札幌に行ってご挨拶をしたら?』
「いっ、いぇええ……!?」
アンネのいきなり発言の混乱から立ち直れていないまま、香澄は妙な声を出す。
『なによ』
「いっ、いえ……っ、あの、急で……」
『結婚するつもりで、箱根にも佑と一緒に来たんじゃなかったの?』
「そっ……、あの……」
結婚するつもりはあるが、箱根は結婚の報告のつもりではなかった。
結果的にほぼそうなってしまったと言ってもいいが、「私たち結婚します」と言うのはまた別の機会だと思っている。
なのでアンネの話がホップステップを通り越して棒高跳びほどになっていて、香澄はただうろたえるしかできない。
(えええ……。いつの間にこんな賛成派になったの?)
正直、アンネの考えが読めない。
人となりは先日の箱根で理解したが、「いつそうなりました!?」という突っ込み所が多すぎる。
『今は春だから、遅くても来年の秋ぐらいまでには……よね?』
「えっ、えぇと! それは佑さんと話し合わないと分かりません」
『二人の将来について話し合ったりしないの? 何のために同棲してるの?』
「なっ、何のためにと言われましても……」
佑の厚意に甘えて、まだのんびりと〝お試し期間〟のつもりだったが、周りはそうではないようだ。
急に焦りを感じた香澄は、「どうしよう」とウロウロ歩こうとして、正座したままだったのを忘れ、ベシャッとベッドの上に崩れた。
(あっしぃ……! 痺れた!)
『招待客の相談はいつでも受けるわ。先方もお忙しい方々が多いから、なるべく早めにね』
「は、はい」
よく分からないが、大変な事になった。
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