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第四部・婚約 編
お仕置きの予兆
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「香澄に何か食べさせてくれたのは一応礼を言うが、今後は無断で連れ出すのは絶対にやめてくれ」
「「ふーん」」
「はい」でも「いいえ」でもなく、双子は大きな「ふーん」を言う。
「お前らだって働いているなら、自分の大切なアシスタントが仕事中に他の男に連れ出されたら困るし、心配するだろう?」
双子がチラッとお互いの目を見て、何かを言うより早く佑が言う。
「俺にとっては大切な恋人であり、秘書だ。ただのお飾りの存在じゃない。心配だし、香澄が気に病むだろうから言っているんだ。自分たちに当てはまらないから理解できないじゃなく、理解してくれないと困る」
佑は香澄がフルーツを食べ終わり落ち着いたタイミングで、大将に会計を申し出た。
「僕らが予約したのに!」
不満を表すクラウスを無視し、佑はカードで支払いを済ませると、香澄に「行くよ」と声を掛けた。
立ち上がった香澄はスプリングコートを羽織り、チョコレートの紙袋を手にしてペコリと頭を下げた。
「今日はありがとうございました。美味しい物をご馳走してくださり、綺麗な服もありがとうございます。今度はアポありでゆっくりできたらと思います」
双子たちはすっかり拗ねていて、「気を付けてねー」とヒラヒラ手を振っていた。
車に乗り込んだ佑が、溜め息をつく。
ハァ……というその音を聞いただけで、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「……ごめんなさい」
「色々言いたい事はあるけど、本当に何もされていないね?」
「何もって……、男女のアレコレ的な事なら、大丈夫。絶対に許さないから、信じてほしい」
「……うん」
佑はシートの上に置かれた香澄の手を握り、また溜め息をつく。
「昔から、あいつらの自由奔放さには手を焼いてきたんだ。それでも大事な一線は越えないと思っていたから、人の恋人に手を出す事はしないだろうと思ってたけど……」
佑の苦悩を何となく察し、香澄は小さく笑う。
「あのね、私を試したかったんだって」
「試す?」
佑がこちらを見て、目をまん丸にしたのが分かった。
「お二人なりに、有名な家柄でお金を持っていて、見た目のいい立場で、近寄ってくる女性にあまり良くない感情を持っていたみたい。佑さんの過去に〝失敗〟があったのをお二人は心配していて、私もその手の感情で近付いてきたんじゃ……って」
佑が今まで一番の溜め息をついた。
「……余計なお世話だ……」
心底、という様子でうんざりとした顔をする彼を見て、香澄は少し気の毒に思う。
佑からすれば、思ってもみない事で勝手に心配され、秘書兼恋人を連れ回されて生きた心地がしなかっただろう。
「心配掛けてごめんね。仕事も途中で放り投げてごめんなさい」
謝ると、チュッとキスをされる。
「何をすればいいかは、分かってるよな?」
つぅ……と頬を指でなぞられ、香澄は吐息を震わせる。
「……はい」
肩を抱き寄せられ、香澄は彼の胸元に顔を埋める。
「……ごめんなさい」
「分かってるなら、いいよ。ここは日本だからね」
その言葉の奥に、場所が違えば危険な目に遭うかもしれないという、不安がうかがい知れる。
(そうか。佑さんは海外の事も沢山知っていて、その上でフラフラしていると危険が生じるかもしれないっていう事を心配していたんだ)
日本であっても、大都市の中の場所によっては治安が宜しくない場所もある。
もし双子の気が変わってポイとどこかに香澄を捨てていったら、財布もスマホもない状態で、どうなるか分からなかった。
東京にいたなら、親切な人にスマホを貸してもらって佑に連絡ができただろう。
だが全世界、あらゆるシーンでそれが可能とは言えない。
(お二人は佑さんの事を心配してだったし、私を疑ってはいても、害を与える感じはなかったけれど)
何だかんだで、悪い人ではないというのは分かっている。
けれどこれが双子でなかったら、日本でなかったら……と思うと、佑の心配を過保護と笑っていられなくなる。
「お二人、佑さんの事を心配してたの」
「……うん。動機には感謝する。ただ、やり方が悪い」
佑も、双子がやる事すべてに怒るのではなく、きちんと良い所と悪い所を分けている。
その上で部分的には認めても、総合的に良くないという判断をくだしたのなら、香澄としても何とも言いようがなかった。
「ただいま……」
会社に置きっぱなしだった香澄の荷物やコート類は、佑が持って来てくれた。
それを手に玄関に入ったのだが、後ろから抱きすくめられる。
「ん? ……っあ……」
パフ、と胸を包まれ、首筋に唇をつけられる。
「……正直、全身あいつらの服で包まれてるのを見るのは、気分が良くない」
耳元で低い声で囁かれ、今になって自分がアロクラの服を着ていた事を思い出す。
「こ……っ、これは……」
「分かってるよ。逆らえなかったんだろ? そこは責めない」
言いながら、佑は香澄のコートを脱がせ、チィ……、と背中のファスナーを下げた。
「下着も買われた?」
「う、ううん!」
「……ならいいけど」
不機嫌そうに言いながら、佑は香澄のワンピースの上半身を脱がせる。
「消毒するから、全部脱いで」
「え? え? 消毒? ちょ……っ」
混乱している間も、ワンピースの下半身も下ろされ、ストンと床の上に輪となって落ちてしまう。
ネックレスも指輪も、ブレスレットもすべて外され、玄関にあるチェストの上に纏められた。
「これ、そのうち適当に売ったら? 二千円ぐらいなら、喜んで買ってくれる人がいそうだ」
冷ややかに笑う佑が怖い。
「ちょ……っ、何十万もするハイブランドのアクセサリーなんだから、そんな事したら失礼……っ、ん!」
今度はキスをされ、口を塞がれる。
「ヒールも脱いで」
至近距離でヘーゼルの瞳に見つめられて命令され、香澄は七センチヒールを脱ぐ。
床の上に足をつけると、さらに佑との身長差ができる。
そしてプツンとブラジャーのホックが外された。
それも、パサッと床の上に落とされた。
赤面して黙っている香澄の首筋に、また佑が吸い付いてくる。
そこから耳たぶをしゃぶられ、耳の輪郭を舌先で辿られた。
「…………はぁ……っ。ん……、ン……」
乳首を弄られると、すぐにプクンと勃ち上がってくる。
「やらしい体」
囁かれて、香澄は全身を火照らせて赤面した。
「きゃっ」
突然、佑が屈んだかと思うと抱き上げられ、そのまま彼は階段を上ってゆく。
「ま、待って……、あの。お風呂、入らせて……」
剥き出しの胸元を両手で隠し、香澄は弱々しくお願いをする。
「駄目」
「そんなぁ……」
「これがお仕置きだよ」
「ううう……」
うなる香澄をよそに、佑は二階に上がると主寝室に直行した。
「さて」
ベッドの上に仰向けに下ろされ、その上に佑が馬乗りになる。
舌なめずりをしてスーツのジャケットを脱ぐ姿を見ると、これから酷い目に遭うと分かっているのにドキドキしてしまう。
「オーパとオーマが来てから、旅館でもずっと我慢していたし、〝貸し〟を返してもらうよ?」
「う……、ウウ……」
佑が香澄の胸の谷間に掌を押しつける。
トクトクと高鳴っている鼓動を感じ、彼はほんの少しだけ切なげな表情をした。
「香澄をドキドキさせていいのは、俺だけだからな?」
「……うん」
従順に返事をすると、溜め息をついた佑がネクタイを緩める。
「……本当は自分でも、子供じみた独占欲だって分かっているんだ。でも、香澄が他の男に目を向けて微笑みかけているのを見ると、我慢できない。それが身内であっても、嫌なんだ」
脱いだシャツをベッドの上に放り投げ、佑が溜め息をつく。
「「ふーん」」
「はい」でも「いいえ」でもなく、双子は大きな「ふーん」を言う。
「お前らだって働いているなら、自分の大切なアシスタントが仕事中に他の男に連れ出されたら困るし、心配するだろう?」
双子がチラッとお互いの目を見て、何かを言うより早く佑が言う。
「俺にとっては大切な恋人であり、秘書だ。ただのお飾りの存在じゃない。心配だし、香澄が気に病むだろうから言っているんだ。自分たちに当てはまらないから理解できないじゃなく、理解してくれないと困る」
佑は香澄がフルーツを食べ終わり落ち着いたタイミングで、大将に会計を申し出た。
「僕らが予約したのに!」
不満を表すクラウスを無視し、佑はカードで支払いを済ませると、香澄に「行くよ」と声を掛けた。
立ち上がった香澄はスプリングコートを羽織り、チョコレートの紙袋を手にしてペコリと頭を下げた。
「今日はありがとうございました。美味しい物をご馳走してくださり、綺麗な服もありがとうございます。今度はアポありでゆっくりできたらと思います」
双子たちはすっかり拗ねていて、「気を付けてねー」とヒラヒラ手を振っていた。
車に乗り込んだ佑が、溜め息をつく。
ハァ……というその音を聞いただけで、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「……ごめんなさい」
「色々言いたい事はあるけど、本当に何もされていないね?」
「何もって……、男女のアレコレ的な事なら、大丈夫。絶対に許さないから、信じてほしい」
「……うん」
佑はシートの上に置かれた香澄の手を握り、また溜め息をつく。
「昔から、あいつらの自由奔放さには手を焼いてきたんだ。それでも大事な一線は越えないと思っていたから、人の恋人に手を出す事はしないだろうと思ってたけど……」
佑の苦悩を何となく察し、香澄は小さく笑う。
「あのね、私を試したかったんだって」
「試す?」
佑がこちらを見て、目をまん丸にしたのが分かった。
「お二人なりに、有名な家柄でお金を持っていて、見た目のいい立場で、近寄ってくる女性にあまり良くない感情を持っていたみたい。佑さんの過去に〝失敗〟があったのをお二人は心配していて、私もその手の感情で近付いてきたんじゃ……って」
佑が今まで一番の溜め息をついた。
「……余計なお世話だ……」
心底、という様子でうんざりとした顔をする彼を見て、香澄は少し気の毒に思う。
佑からすれば、思ってもみない事で勝手に心配され、秘書兼恋人を連れ回されて生きた心地がしなかっただろう。
「心配掛けてごめんね。仕事も途中で放り投げてごめんなさい」
謝ると、チュッとキスをされる。
「何をすればいいかは、分かってるよな?」
つぅ……と頬を指でなぞられ、香澄は吐息を震わせる。
「……はい」
肩を抱き寄せられ、香澄は彼の胸元に顔を埋める。
「……ごめんなさい」
「分かってるなら、いいよ。ここは日本だからね」
その言葉の奥に、場所が違えば危険な目に遭うかもしれないという、不安がうかがい知れる。
(そうか。佑さんは海外の事も沢山知っていて、その上でフラフラしていると危険が生じるかもしれないっていう事を心配していたんだ)
日本であっても、大都市の中の場所によっては治安が宜しくない場所もある。
もし双子の気が変わってポイとどこかに香澄を捨てていったら、財布もスマホもない状態で、どうなるか分からなかった。
東京にいたなら、親切な人にスマホを貸してもらって佑に連絡ができただろう。
だが全世界、あらゆるシーンでそれが可能とは言えない。
(お二人は佑さんの事を心配してだったし、私を疑ってはいても、害を与える感じはなかったけれど)
何だかんだで、悪い人ではないというのは分かっている。
けれどこれが双子でなかったら、日本でなかったら……と思うと、佑の心配を過保護と笑っていられなくなる。
「お二人、佑さんの事を心配してたの」
「……うん。動機には感謝する。ただ、やり方が悪い」
佑も、双子がやる事すべてに怒るのではなく、きちんと良い所と悪い所を分けている。
その上で部分的には認めても、総合的に良くないという判断をくだしたのなら、香澄としても何とも言いようがなかった。
「ただいま……」
会社に置きっぱなしだった香澄の荷物やコート類は、佑が持って来てくれた。
それを手に玄関に入ったのだが、後ろから抱きすくめられる。
「ん? ……っあ……」
パフ、と胸を包まれ、首筋に唇をつけられる。
「……正直、全身あいつらの服で包まれてるのを見るのは、気分が良くない」
耳元で低い声で囁かれ、今になって自分がアロクラの服を着ていた事を思い出す。
「こ……っ、これは……」
「分かってるよ。逆らえなかったんだろ? そこは責めない」
言いながら、佑は香澄のコートを脱がせ、チィ……、と背中のファスナーを下げた。
「下着も買われた?」
「う、ううん!」
「……ならいいけど」
不機嫌そうに言いながら、佑は香澄のワンピースの上半身を脱がせる。
「消毒するから、全部脱いで」
「え? え? 消毒? ちょ……っ」
混乱している間も、ワンピースの下半身も下ろされ、ストンと床の上に輪となって落ちてしまう。
ネックレスも指輪も、ブレスレットもすべて外され、玄関にあるチェストの上に纏められた。
「これ、そのうち適当に売ったら? 二千円ぐらいなら、喜んで買ってくれる人がいそうだ」
冷ややかに笑う佑が怖い。
「ちょ……っ、何十万もするハイブランドのアクセサリーなんだから、そんな事したら失礼……っ、ん!」
今度はキスをされ、口を塞がれる。
「ヒールも脱いで」
至近距離でヘーゼルの瞳に見つめられて命令され、香澄は七センチヒールを脱ぐ。
床の上に足をつけると、さらに佑との身長差ができる。
そしてプツンとブラジャーのホックが外された。
それも、パサッと床の上に落とされた。
赤面して黙っている香澄の首筋に、また佑が吸い付いてくる。
そこから耳たぶをしゃぶられ、耳の輪郭を舌先で辿られた。
「…………はぁ……っ。ん……、ン……」
乳首を弄られると、すぐにプクンと勃ち上がってくる。
「やらしい体」
囁かれて、香澄は全身を火照らせて赤面した。
「きゃっ」
突然、佑が屈んだかと思うと抱き上げられ、そのまま彼は階段を上ってゆく。
「ま、待って……、あの。お風呂、入らせて……」
剥き出しの胸元を両手で隠し、香澄は弱々しくお願いをする。
「駄目」
「そんなぁ……」
「これがお仕置きだよ」
「ううう……」
うなる香澄をよそに、佑は二階に上がると主寝室に直行した。
「さて」
ベッドの上に仰向けに下ろされ、その上に佑が馬乗りになる。
舌なめずりをしてスーツのジャケットを脱ぐ姿を見ると、これから酷い目に遭うと分かっているのにドキドキしてしまう。
「オーパとオーマが来てから、旅館でもずっと我慢していたし、〝貸し〟を返してもらうよ?」
「う……、ウウ……」
佑が香澄の胸の谷間に掌を押しつける。
トクトクと高鳴っている鼓動を感じ、彼はほんの少しだけ切なげな表情をした。
「香澄をドキドキさせていいのは、俺だけだからな?」
「……うん」
従順に返事をすると、溜め息をついた佑がネクタイを緩める。
「……本当は自分でも、子供じみた独占欲だって分かっているんだ。でも、香澄が他の男に目を向けて微笑みかけているのを見ると、我慢できない。それが身内であっても、嫌なんだ」
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