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慈雨の如き目に愛されて8
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「特別な目のつもりはないが……。あぁ、いや。君を見る時は特別な気持ちで見ているけれど。……でも、そうか……。俺の目で君がすべてを思い出したなら、良かった」
絡まったモニカの金髪を優しく解きほぐし、クライヴは彼女の額に唇をつける。
「……お帰り、モニカ」
「うん……。ただいま、クライヴ」
ぎゅう、と抱きつくとクライヴも抱き締め返してくれる。
「……あのね。私、ウエディングドレスを着てあなたと誓いのキスができたの……。思い出せて良かった。その後の初夜も……、思い出したわ」
「ふふ、良かった。君が一生の思い出を忘れたままだったら、どうしようと正直不安だった」
知らずとクライヴの唇から安堵の息が漏れ、モニカは悪戯っぽく笑う。
「……でも私たち、もっとこれから新しい思い出を作っていけるわ。思い出す前も、私、自分自身にそう言い聞かせていたもの。私とあなたなら大丈夫、って」
「……違いない」
クスッと笑い、クライヴはまたモニカにキスをする。
「今回は……、色々ショックなことも知ってしまったけれど。……でも私、王妃として頑張るわ」
「怖い思いをさせてしまったのに……、君は強いな。守れなくてごめん」
あの事件現場を思い出し、クライヴが悲しそうに睫毛の角度を落とす。それにモニカは慌てて彼を励ました。
「大丈夫よ? こうやって記憶は戻ったし、私は何も損なっていないもの。護衛の騎士たちも、ケガだけで済んだみたいだし。司祭さまのことはショックだし、オーガストにも申し訳ないしこれから先が心配だけれど……。でもきっと、乗り越えていけるわ」
目の前で微笑んでいるモニカは、いかにも姫という華奢な外見をしているのに、精神が逞しい。
「そうだね。……一つ、確認しておきたいんだが」
「なぁに?」
クライヴの腕の中で、モニカがきょと、と目を瞬かせる。
「君はオーガストをどう思ってる?」
どこか訊くのが不本意という顔で、クライヴがモニカに問う。
その目には質問したことへの照れがあり、同時に今まで訊きたくても訊けず、やっと訊けたという感情が含まれていた。
「どう……って。幼なじみだけれど」
「彼、格好いいじゃないか。聖爵だし」
「そうね」
「俺よりもずっと一緒にいて、何とも思わなかった? 彼が君を好きだと言っていたのを聞いて……どう思った?」
なおも問い詰めるクライヴは、こんなにも嫉妬を露わにする自分が格好悪いと思っているのか、少し鼻の頭を赤くしていた。
その嫉妬を察したのか、モニカは嬉しそうに目を細める。
「本当に何とも思っていないのよ。オーガストには悪いんだけれど、私あなたしか見えていないもの。確かに幼い時に白百合の前で求婚……されたのは記憶にあるけれど、その時は子供だったし……。それに、私はちょっとおませな女の子だったの。殿方からお誘いがあっても、最終的にお母さまも周りも頷く最高の人が現れるまで、簡単に頷いてはいけないと思っていたわ」
モニカの答えにクライヴはやや安堵し、それから少し自信なさげに問う。
「じゃあ俺は……、君の眼鏡に適った?」
「ええ。クライヴは初めて出会った時から、私の最高の王子さまだったわ。途中、ちょっと意地悪もされたけれど……。私も可愛げのない所があったかもしれないし」
「あ、あぁ……。昔のことは色々ごめん。君の気を引きたくて、つい」
「ふふ、いいの。私もすぐに泣いてしまってごめんなさい。困ったわよね?」
「……いや、困ったと言えば困ったが、君は泣いてる顔も可愛かった」
「……変態」
どことなくクライヴの嗜虐的な面を感じ、ふとモニカは最中のクライヴが意地悪なことを言ってきたのを思い出した。
同時にじわっと頬が熱くなり、彼の分身が入ったままの下腹部が、キュンと疼く。
モニカの言い方に、クライヴはニヤッと笑った。
彼女が内心「失言だった」と思う間もなく、モニカは仰向けに転がされてしまう。
「そうだよ、俺は変態だ。君の可愛い顔を見られるなら、なんだってする。怒らせること、悲しませることはしないが……。殊更、閨の中でのことなら色々……ね?」
「う……うぅ。だ、ダメよ。今晩はもうたっぷりしたんだから」
「俺はまだまだいけるよ」
サラリとした言い方と共に、モニカの胸がむにゅりと揉まれる。
「あんっ。……や、ダメだってば」
「モニカの『ダメ』は『いい』だと俺は解釈してる」
秀麗に整った顔を胸に近づけ、クライヴはわざと見せつけるように舌を出し、先端を舐め上げる。
「ん……っ、うぅんっ。もぉ……ダメぇっ」
敷布を大きく掻いて体を反転させようも、クライヴが繋がったまま上からのしかかっているので叶わない。
困り果てた顔をするモニカの耳元で、クライヴが低く囁いた。
「……抱き潰すぐらい愛するから、覚悟して」
「……っ」
その言葉にゾクッと甘美な震えが走り、モニカの躯は期待してしまう。
が、直後クライヴの腰がまたねっとりと動き始めたことで、モニカは悲鳴を上げていた。
「蜜月はまだ続くからぁ……っ」
絡まったモニカの金髪を優しく解きほぐし、クライヴは彼女の額に唇をつける。
「……お帰り、モニカ」
「うん……。ただいま、クライヴ」
ぎゅう、と抱きつくとクライヴも抱き締め返してくれる。
「……あのね。私、ウエディングドレスを着てあなたと誓いのキスができたの……。思い出せて良かった。その後の初夜も……、思い出したわ」
「ふふ、良かった。君が一生の思い出を忘れたままだったら、どうしようと正直不安だった」
知らずとクライヴの唇から安堵の息が漏れ、モニカは悪戯っぽく笑う。
「……でも私たち、もっとこれから新しい思い出を作っていけるわ。思い出す前も、私、自分自身にそう言い聞かせていたもの。私とあなたなら大丈夫、って」
「……違いない」
クスッと笑い、クライヴはまたモニカにキスをする。
「今回は……、色々ショックなことも知ってしまったけれど。……でも私、王妃として頑張るわ」
「怖い思いをさせてしまったのに……、君は強いな。守れなくてごめん」
あの事件現場を思い出し、クライヴが悲しそうに睫毛の角度を落とす。それにモニカは慌てて彼を励ました。
「大丈夫よ? こうやって記憶は戻ったし、私は何も損なっていないもの。護衛の騎士たちも、ケガだけで済んだみたいだし。司祭さまのことはショックだし、オーガストにも申し訳ないしこれから先が心配だけれど……。でもきっと、乗り越えていけるわ」
目の前で微笑んでいるモニカは、いかにも姫という華奢な外見をしているのに、精神が逞しい。
「そうだね。……一つ、確認しておきたいんだが」
「なぁに?」
クライヴの腕の中で、モニカがきょと、と目を瞬かせる。
「君はオーガストをどう思ってる?」
どこか訊くのが不本意という顔で、クライヴがモニカに問う。
その目には質問したことへの照れがあり、同時に今まで訊きたくても訊けず、やっと訊けたという感情が含まれていた。
「どう……って。幼なじみだけれど」
「彼、格好いいじゃないか。聖爵だし」
「そうね」
「俺よりもずっと一緒にいて、何とも思わなかった? 彼が君を好きだと言っていたのを聞いて……どう思った?」
なおも問い詰めるクライヴは、こんなにも嫉妬を露わにする自分が格好悪いと思っているのか、少し鼻の頭を赤くしていた。
その嫉妬を察したのか、モニカは嬉しそうに目を細める。
「本当に何とも思っていないのよ。オーガストには悪いんだけれど、私あなたしか見えていないもの。確かに幼い時に白百合の前で求婚……されたのは記憶にあるけれど、その時は子供だったし……。それに、私はちょっとおませな女の子だったの。殿方からお誘いがあっても、最終的にお母さまも周りも頷く最高の人が現れるまで、簡単に頷いてはいけないと思っていたわ」
モニカの答えにクライヴはやや安堵し、それから少し自信なさげに問う。
「じゃあ俺は……、君の眼鏡に適った?」
「ええ。クライヴは初めて出会った時から、私の最高の王子さまだったわ。途中、ちょっと意地悪もされたけれど……。私も可愛げのない所があったかもしれないし」
「あ、あぁ……。昔のことは色々ごめん。君の気を引きたくて、つい」
「ふふ、いいの。私もすぐに泣いてしまってごめんなさい。困ったわよね?」
「……いや、困ったと言えば困ったが、君は泣いてる顔も可愛かった」
「……変態」
どことなくクライヴの嗜虐的な面を感じ、ふとモニカは最中のクライヴが意地悪なことを言ってきたのを思い出した。
同時にじわっと頬が熱くなり、彼の分身が入ったままの下腹部が、キュンと疼く。
モニカの言い方に、クライヴはニヤッと笑った。
彼女が内心「失言だった」と思う間もなく、モニカは仰向けに転がされてしまう。
「そうだよ、俺は変態だ。君の可愛い顔を見られるなら、なんだってする。怒らせること、悲しませることはしないが……。殊更、閨の中でのことなら色々……ね?」
「う……うぅ。だ、ダメよ。今晩はもうたっぷりしたんだから」
「俺はまだまだいけるよ」
サラリとした言い方と共に、モニカの胸がむにゅりと揉まれる。
「あんっ。……や、ダメだってば」
「モニカの『ダメ』は『いい』だと俺は解釈してる」
秀麗に整った顔を胸に近づけ、クライヴはわざと見せつけるように舌を出し、先端を舐め上げる。
「ん……っ、うぅんっ。もぉ……ダメぇっ」
敷布を大きく掻いて体を反転させようも、クライヴが繋がったまま上からのしかかっているので叶わない。
困り果てた顔をするモニカの耳元で、クライヴが低く囁いた。
「……抱き潰すぐらい愛するから、覚悟して」
「……っ」
その言葉にゾクッと甘美な震えが走り、モニカの躯は期待してしまう。
が、直後クライヴの腰がまたねっとりと動き始めたことで、モニカは悲鳴を上げていた。
「蜜月はまだ続くからぁ……っ」
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