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婚約者との再会
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「王子、何やら様子が変です」
一方、クライヴはモニカの到着を待ちきれず、馬に乗って城を出ていた。
彼女はきっと馬車に乗っているだろうから、親衛隊たちに紛れて併走し、到着してから驚かせようと思っていたのだ。
ウィドリントンの騎士たちにも、その情報は秘密裏に流され、微笑ましい計画が遂行されようとしていたのだが……。
「どうした?」
短い銀髪を風になびかせたクライヴは、青い目で隣にいた隊士を見る。
「モニカ王女ご一行の隊列ですが、山道の中で何者かに襲撃されている模様です」
望遠鏡の筒を片手に、隊士は厳しい声で告げた。
「何だと!? 状況はどうなっている!」
愛しい婚約者を迎えようとしていたクライヴは、一気に険しい顔になった。
「申し訳ございません。生い茂る緑に邪魔をされて、詳細は分かりません。ウィドリントンの隊列も、刺客たちも動いておりますので……」
「はぁっ!」
隊士の言葉を聞くや否や、クライヴは馬の腹を足で蹴り、モニカの元へと急いだ。
緩やかな斜面を直線に駆け下り、さらにその下に続く山道へ。くねるようにしてヴィンセントの王都へと続く街道を、均してある場所を無視して最短距離で走った。
元々、ヴィンセント王国は騎馬民族から生まれた一族だ。クライヴも当たり前のように馬の扱いが上手く、ヴィンセント王国の馬も健脚で有名だ。
あっという間に姿を小さくするクライヴを追って、親衛隊たちも道を急いだ。
「なんだ……これは……」
途中、猛スピードですれ違った馬車を無視し、クライヴは道を急ぐ。
モニカが輿入れする馬車は金色だと知っているので、先ほど通り過ぎた物は違うと分かっていた。
不審な馬車なら通らせては困るが、ウィドリントンの国章がついた馬車だったのでひとまず後で対応することにした。
今はまず、モニカだ。
「王子ーっ!」
背後から迫り来る蹄の音を耳にし、クライヴは怒りで表情を失ったまま怒鳴っていた。
「目の前の刺客を殲滅しろ!」
モニカを護るウィドリントンの騎士たちは、あくまで護衛なので本国のものほど数が多くない。
白銀の鎧の隙間から血を流し、彼らは倒れ伏し呻いていた。
乗り手を失った馬は方々へ逃げたり、所在なさげに離れた所にいる。
同時に見たことのない怪しい黒ずくめの刺客が、倒れた騎士たちにとどめを刺そうとしていた。
「モニカ!」
ふと、急な斜面の下に金色の馬車を確認したクライヴは、ほぼ崖に等しいそこを駆け下りる。
「モニカに手を出すな!!」
およそ王子と思えない荒々しい声で咆吼し、腰から剣を抜く。
「やばい! 逃げるぞ!」
クライヴやヴィンセントの騎士たちを確認した刺客たちは、一目散に退散してゆく。
それが一瞬不可解に思えたが、彼らの追撃は親衛隊たちに任せた。
「モニカ! モニカ!」
馬から飛び降り、クライヴは馬車に駆け寄る。
第一王女に相応しい美しい馬車は、無残に壊れて横たわっていた。斜面はまだ続いていたが、頑丈な木によって滑り落ちるのを止められていたのが幸いした。
手荒くドアをノックすると、天を向いているドアをこじ開けようとする。しかし衝撃が加わったドアは、本体との間に歪みが生じてしまい開かない。
「モニカ! 無事か!?」
取っ手を引っ張り、馬車の本体に足を掛けて力を込めていると、内側から悲鳴が聞こえた。
一方、クライヴはモニカの到着を待ちきれず、馬に乗って城を出ていた。
彼女はきっと馬車に乗っているだろうから、親衛隊たちに紛れて併走し、到着してから驚かせようと思っていたのだ。
ウィドリントンの騎士たちにも、その情報は秘密裏に流され、微笑ましい計画が遂行されようとしていたのだが……。
「どうした?」
短い銀髪を風になびかせたクライヴは、青い目で隣にいた隊士を見る。
「モニカ王女ご一行の隊列ですが、山道の中で何者かに襲撃されている模様です」
望遠鏡の筒を片手に、隊士は厳しい声で告げた。
「何だと!? 状況はどうなっている!」
愛しい婚約者を迎えようとしていたクライヴは、一気に険しい顔になった。
「申し訳ございません。生い茂る緑に邪魔をされて、詳細は分かりません。ウィドリントンの隊列も、刺客たちも動いておりますので……」
「はぁっ!」
隊士の言葉を聞くや否や、クライヴは馬の腹を足で蹴り、モニカの元へと急いだ。
緩やかな斜面を直線に駆け下り、さらにその下に続く山道へ。くねるようにしてヴィンセントの王都へと続く街道を、均してある場所を無視して最短距離で走った。
元々、ヴィンセント王国は騎馬民族から生まれた一族だ。クライヴも当たり前のように馬の扱いが上手く、ヴィンセント王国の馬も健脚で有名だ。
あっという間に姿を小さくするクライヴを追って、親衛隊たちも道を急いだ。
「なんだ……これは……」
途中、猛スピードですれ違った馬車を無視し、クライヴは道を急ぐ。
モニカが輿入れする馬車は金色だと知っているので、先ほど通り過ぎた物は違うと分かっていた。
不審な馬車なら通らせては困るが、ウィドリントンの国章がついた馬車だったのでひとまず後で対応することにした。
今はまず、モニカだ。
「王子ーっ!」
背後から迫り来る蹄の音を耳にし、クライヴは怒りで表情を失ったまま怒鳴っていた。
「目の前の刺客を殲滅しろ!」
モニカを護るウィドリントンの騎士たちは、あくまで護衛なので本国のものほど数が多くない。
白銀の鎧の隙間から血を流し、彼らは倒れ伏し呻いていた。
乗り手を失った馬は方々へ逃げたり、所在なさげに離れた所にいる。
同時に見たことのない怪しい黒ずくめの刺客が、倒れた騎士たちにとどめを刺そうとしていた。
「モニカ!」
ふと、急な斜面の下に金色の馬車を確認したクライヴは、ほぼ崖に等しいそこを駆け下りる。
「モニカに手を出すな!!」
およそ王子と思えない荒々しい声で咆吼し、腰から剣を抜く。
「やばい! 逃げるぞ!」
クライヴやヴィンセントの騎士たちを確認した刺客たちは、一目散に退散してゆく。
それが一瞬不可解に思えたが、彼らの追撃は親衛隊たちに任せた。
「モニカ! モニカ!」
馬から飛び降り、クライヴは馬車に駆け寄る。
第一王女に相応しい美しい馬車は、無残に壊れて横たわっていた。斜面はまだ続いていたが、頑丈な木によって滑り落ちるのを止められていたのが幸いした。
手荒くドアをノックすると、天を向いているドアをこじ開けようとする。しかし衝撃が加わったドアは、本体との間に歪みが生じてしまい開かない。
「モニカ! 無事か!?」
取っ手を引っ張り、馬車の本体に足を掛けて力を込めていると、内側から悲鳴が聞こえた。
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