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二〇一三年 十二月
冬になる頃の葵は、美しい人形のようだった。部屋から動かず、ものも食べず、時折何かを思い出して涙を流す。当然のようにやつれていって、手首など掴むとその細さにドキリとする。
「葵さん、温かいスープを作ってもらいました。飲みませんか?」
「……おおきに」
最近では、葵の部屋に彼女はほとんどおらず、時人の部屋にあるリクライニングソファに座っている事が多い。寒くないようにと高級な毛皮を敷き、眠るように座った葵は、カシミヤのひざ掛けを掛けられていた。
あれほどピアノをしたいと言って東京に残ったのに、あの夏から葵のすべての意欲はデクレッシェンドの如く落ちていた。秋頃まではなんとかピアノを弾いていたものの、最近は三日に一度くらいピアノに触ってから、目を虚ろにして指を止めてしまう。
このままでは病気になってしまうと、時臣と香織も葵を心配していた。だが呼び掛けても「おおきに」としか言わない葵が、時人と離れて京都へ戻る事を実家の両親から言われると、激しい抵抗を見せる。その姿を見ると、誰も何も言えなくなってしまう。
「……すみません。わたし、ご迷惑ですみません……」
他に葵が口にするのは、自分を卑下し傷付ける言葉だった。
「そんなこと思っていませんよ。葵さんがどんな風に弱っていても、俺は葵さんが好きです。あなたは俺の恩人なんです。それだけは忘れないでください。それに、あなたの心の冬がいつまでも明けない訳がないんです。いつか絶対春がきます。そうなったら、一緒に約束の桜を見に行きましょうね」
「はい……。やくそくの、桜。見たいですねぇ」
受け取ったマグカップをぼんやりと持ち、輪郭が細くなってしまった顔で葵は儚く笑う。窓に当たっては溶けてゆく、雪のような笑みだ。
「……俺には、見えますから。あなたが輝くような笑みを浮かべて、満開の桜の下で笑っている姿が」
目の前で葵の生気が流れ出るように失われているような気がして、時人は涙が零れそうになるのをグッと堪える。そして言葉だけでもと、美しい結末を口にする。
「そうですね……。はよ、元気にならなあきませんね」
せっかく手にしたスープのマグカップは一、二回ふぅふぅと冷ましただけで、持っているのも疲れたのか、葵はテーブルの上に置いてしまった。
「ときひとさん、約束の桜……、みましょうね」
そして小さく呟いて、そのまま葵は目を閉じてしまう。
街に出ればクリスマスのメロディーが流れ、金銀のモールや赤と緑のクリスマスカラー。そんな雰囲気で浮かれているというのに、宇佐美の広い屋敷は別の世界のようだった。
その日時人の両親は仕事の繋がりがあるパーティーに出かけ、葵の事は自分が見ているからと時人が家に残った。
目の前で青白い顔をして眠っている葵を見下ろして涙がこみ上げ、時人は静かに部屋を出る。数か月前の秋の日に葵と過ごしたサンテラスに行き、ソファに座って時人は静かに嗚咽した。
今でも葵を好きだという気持ちは変わらない。
彼女の体から立ち上るあの香りに、こんな状況だというのに毎日恍惚としている。
けれど、光に祝福されたような彼女に惹かれた身としては、今にも死んでしまいそうな葵の姿は辛い以外の何物でもない。
「葵さん、もう一度……あなたの笑顔を見たい」
今にも掠れてしまいそうな呟きは、時人が葵に身勝手な妄想を抱いている証拠だった。それを自覚し、恥じているからこそ、時人はただ葵を大切にするしかできない。
しばらく時人はサンテラスで悲しみに浸り、涙が引いた後、目の前に広がる冬の庭を眺めていた。
「葵さん……?」
眠っているはずの葵のもとへ戻ると、リクライニングソファには誰も座っていなかった。
ベージュの膝掛けは床の上に落ち、柔らかなかたちを作っている。
彼女が座っていた毛皮の上に手を当てると、もう彼女の体温は感じられなかった。
「葵さん……!」
時人は早足で部屋を出ると、部屋から部屋へと葵を探し始めた。彼女の部屋にも、ピアノがある部屋にもいない。トイレを確認し、リビングやキッチンに行っても見つからない。
「どうかされたんですか?」
夕食の後片付けをしている家政婦に時人は「少し出てきます」と告げ、玄関のコートフックから乱暴にコートを取り、外へ出た。
「さむ……」
外は思ったよりも冷えていて、雪が降り始めていた。
「あ……!」
玄関から門へ通じる石畳に、雪を溶かすように小さな足跡がついている。それを見た瞬間、ドクッと心臓が嫌な音をたてた。時人は慌てて足跡を追う。
「葵さん!? 葵さん!」
門から外へ出て、左右を見回しても葵の後ろ姿はない。足跡は右へ延びていた。葵の香りもそちらから匂う。時人の実家がある場所は住宅街だが、右手には駅がある。
葵がどこかへ行こうとしているのかと時人は焦り、走り出した。
「葵さん!」
クリスマス時期の高級住宅街は、イルミネーションなどが静かに点灯しているだけで人気が無い。みな都心に食事を楽しみに行っているか、ホームパーティーを楽しんでいるのだろう。静かな住宅街の夜の闇に、葵が吸い込まれてしまったように思え、時人は焦燥に駆られる。人通りのない道を時人の靴音だけが響き、ハッハッという呼吸音と共に白い呼気が流れていった。
「え……?」
駅の前。五本の車道が集う半円のロータリーで、街灯に照らされて白く光るものがあった。地面の上に一部だけ雪が積もったように見えるが、そうではない事はすぐに分かる。
「葵さん!」
それが白いニットとスカート姿の葵だと分かり、時人の頭からザッと血の気が引いた。あまりの絶望とショックに、一瞬耳が遠くなる。
――嘘だ。
頭の中でもう一人の自分が叫んだ気がする。
『あの時』と同じように葵の香りが濃くなっていて、目眩すら起こしかけた。
「葵さ――」
駆け寄る途中で、その『白』の中に『赤』が混じっているのに気付き、時人は一つ瞬きをする。
「……葵さん……?」
はぁ、はぁ、と息を乱した時人の他に、生きている者はいない気がした。すぐ近くにあるコンビニエンスストアの蛍光色でさえも、別世界のものに思える。
「とき……ひと、……さん」
青白い蛍光灯の光に照らされて、葵は口元から赤い糸を一筋垂らして目だけで時人を見上げる。
その体は不自然なポーズをとっていて、道路には強くブレーキを踏んだ跡があった。
「あお……葵さん!!」
薄っすらと積もった雪の上で葵は豊かな黒髪を芸術的な形に広げて横たわり、命の灯を消そうとしていた。
冷たい地面の上で自分はこのまま死んでゆくのだと思っていたら、遠くから大好きな人の声が聞こえた。葵はそれで、もう十分だと思っていた。
「あきませんね……、わたし。なにをやっても……、こうなってまうんですね」
大きな目から透明な雫が流れ落ち、葵の頬から滴り落ちた熱い涙が雪を溶かす。
「葵さん! いま救急車を呼びますから!」
顔を蒼白にしている葵を前に、時人は八月のあの忌まわしい気持ちを思い出していた。
『あれ』だけは二度と味わいたくないと思っていたのに――。
奇跡的に助かった葵なのだから、これから自分が一生守ってゆくのだと思っていた。
また時人の両手から、大事な命がサラサラと音を立てて零れ落ちようとしている。
「スマホ……、あぁ、家だ。あそこのコンビニに助けを呼びに行きますから、少し」
緊張と焦りで舌がもつれそうになっている時人の声を、葵の弱々しい手が制する。そっと重ねられた指先は冷たくなっていて、死人かと思う温度に、時人は背筋を強張らせた。
「もぉ……、ええんです。ときひとさん」
小さな声で呟いて、葵は疲れたように肺の中に残った空気をそっと吐き出す。
「いいって……、何がです?」
外気で冷たくなった時人の頬に、熱い涙の跡が光っていた。その顔も、指先も、体も震えていて、あの夏の日以上に時人は怯えていた。
冬の夜空から白い雪が舞い、自分に降り積もる雪を葵は綺麗だと思っていた。
こちらを覗き込み泣いている時人の顔も、美しいだと思う。
――それももう、終わりにしたい。
「疲れました……。赤ちゃんも守れなくて、ときひとさんのことも幸せにできひん。こんな私、もぉ、ええんです……」
どこか骨が折れているのか、葵はしゃべる度に辛そうに顔を顰める。ヒューヒューと喉から呼吸が漏れ、まだ彼女が生きている証拠に白い息が吐かれては消えてゆく。
「葵さん!」
「わたし、……生まれなきゃよかった……」
――あなたを幸せにできない私なら、いらへんね。
最後に呪いに似た言葉を吐いてから、葵は話すのをやめてしまった。
力の入らない目蓋の上に、フワリと雪が落ちて溶けてゆく。顔の上に雪が次々と落ちていっても、葵はもう抗おうとはしない。
冬になる頃の葵は、美しい人形のようだった。部屋から動かず、ものも食べず、時折何かを思い出して涙を流す。当然のようにやつれていって、手首など掴むとその細さにドキリとする。
「葵さん、温かいスープを作ってもらいました。飲みませんか?」
「……おおきに」
最近では、葵の部屋に彼女はほとんどおらず、時人の部屋にあるリクライニングソファに座っている事が多い。寒くないようにと高級な毛皮を敷き、眠るように座った葵は、カシミヤのひざ掛けを掛けられていた。
あれほどピアノをしたいと言って東京に残ったのに、あの夏から葵のすべての意欲はデクレッシェンドの如く落ちていた。秋頃まではなんとかピアノを弾いていたものの、最近は三日に一度くらいピアノに触ってから、目を虚ろにして指を止めてしまう。
このままでは病気になってしまうと、時臣と香織も葵を心配していた。だが呼び掛けても「おおきに」としか言わない葵が、時人と離れて京都へ戻る事を実家の両親から言われると、激しい抵抗を見せる。その姿を見ると、誰も何も言えなくなってしまう。
「……すみません。わたし、ご迷惑ですみません……」
他に葵が口にするのは、自分を卑下し傷付ける言葉だった。
「そんなこと思っていませんよ。葵さんがどんな風に弱っていても、俺は葵さんが好きです。あなたは俺の恩人なんです。それだけは忘れないでください。それに、あなたの心の冬がいつまでも明けない訳がないんです。いつか絶対春がきます。そうなったら、一緒に約束の桜を見に行きましょうね」
「はい……。やくそくの、桜。見たいですねぇ」
受け取ったマグカップをぼんやりと持ち、輪郭が細くなってしまった顔で葵は儚く笑う。窓に当たっては溶けてゆく、雪のような笑みだ。
「……俺には、見えますから。あなたが輝くような笑みを浮かべて、満開の桜の下で笑っている姿が」
目の前で葵の生気が流れ出るように失われているような気がして、時人は涙が零れそうになるのをグッと堪える。そして言葉だけでもと、美しい結末を口にする。
「そうですね……。はよ、元気にならなあきませんね」
せっかく手にしたスープのマグカップは一、二回ふぅふぅと冷ましただけで、持っているのも疲れたのか、葵はテーブルの上に置いてしまった。
「ときひとさん、約束の桜……、みましょうね」
そして小さく呟いて、そのまま葵は目を閉じてしまう。
街に出ればクリスマスのメロディーが流れ、金銀のモールや赤と緑のクリスマスカラー。そんな雰囲気で浮かれているというのに、宇佐美の広い屋敷は別の世界のようだった。
その日時人の両親は仕事の繋がりがあるパーティーに出かけ、葵の事は自分が見ているからと時人が家に残った。
目の前で青白い顔をして眠っている葵を見下ろして涙がこみ上げ、時人は静かに部屋を出る。数か月前の秋の日に葵と過ごしたサンテラスに行き、ソファに座って時人は静かに嗚咽した。
今でも葵を好きだという気持ちは変わらない。
彼女の体から立ち上るあの香りに、こんな状況だというのに毎日恍惚としている。
けれど、光に祝福されたような彼女に惹かれた身としては、今にも死んでしまいそうな葵の姿は辛い以外の何物でもない。
「葵さん、もう一度……あなたの笑顔を見たい」
今にも掠れてしまいそうな呟きは、時人が葵に身勝手な妄想を抱いている証拠だった。それを自覚し、恥じているからこそ、時人はただ葵を大切にするしかできない。
しばらく時人はサンテラスで悲しみに浸り、涙が引いた後、目の前に広がる冬の庭を眺めていた。
「葵さん……?」
眠っているはずの葵のもとへ戻ると、リクライニングソファには誰も座っていなかった。
ベージュの膝掛けは床の上に落ち、柔らかなかたちを作っている。
彼女が座っていた毛皮の上に手を当てると、もう彼女の体温は感じられなかった。
「葵さん……!」
時人は早足で部屋を出ると、部屋から部屋へと葵を探し始めた。彼女の部屋にも、ピアノがある部屋にもいない。トイレを確認し、リビングやキッチンに行っても見つからない。
「どうかされたんですか?」
夕食の後片付けをしている家政婦に時人は「少し出てきます」と告げ、玄関のコートフックから乱暴にコートを取り、外へ出た。
「さむ……」
外は思ったよりも冷えていて、雪が降り始めていた。
「あ……!」
玄関から門へ通じる石畳に、雪を溶かすように小さな足跡がついている。それを見た瞬間、ドクッと心臓が嫌な音をたてた。時人は慌てて足跡を追う。
「葵さん!? 葵さん!」
門から外へ出て、左右を見回しても葵の後ろ姿はない。足跡は右へ延びていた。葵の香りもそちらから匂う。時人の実家がある場所は住宅街だが、右手には駅がある。
葵がどこかへ行こうとしているのかと時人は焦り、走り出した。
「葵さん!」
クリスマス時期の高級住宅街は、イルミネーションなどが静かに点灯しているだけで人気が無い。みな都心に食事を楽しみに行っているか、ホームパーティーを楽しんでいるのだろう。静かな住宅街の夜の闇に、葵が吸い込まれてしまったように思え、時人は焦燥に駆られる。人通りのない道を時人の靴音だけが響き、ハッハッという呼吸音と共に白い呼気が流れていった。
「え……?」
駅の前。五本の車道が集う半円のロータリーで、街灯に照らされて白く光るものがあった。地面の上に一部だけ雪が積もったように見えるが、そうではない事はすぐに分かる。
「葵さん!」
それが白いニットとスカート姿の葵だと分かり、時人の頭からザッと血の気が引いた。あまりの絶望とショックに、一瞬耳が遠くなる。
――嘘だ。
頭の中でもう一人の自分が叫んだ気がする。
『あの時』と同じように葵の香りが濃くなっていて、目眩すら起こしかけた。
「葵さ――」
駆け寄る途中で、その『白』の中に『赤』が混じっているのに気付き、時人は一つ瞬きをする。
「……葵さん……?」
はぁ、はぁ、と息を乱した時人の他に、生きている者はいない気がした。すぐ近くにあるコンビニエンスストアの蛍光色でさえも、別世界のものに思える。
「とき……ひと、……さん」
青白い蛍光灯の光に照らされて、葵は口元から赤い糸を一筋垂らして目だけで時人を見上げる。
その体は不自然なポーズをとっていて、道路には強くブレーキを踏んだ跡があった。
「あお……葵さん!!」
薄っすらと積もった雪の上で葵は豊かな黒髪を芸術的な形に広げて横たわり、命の灯を消そうとしていた。
冷たい地面の上で自分はこのまま死んでゆくのだと思っていたら、遠くから大好きな人の声が聞こえた。葵はそれで、もう十分だと思っていた。
「あきませんね……、わたし。なにをやっても……、こうなってまうんですね」
大きな目から透明な雫が流れ落ち、葵の頬から滴り落ちた熱い涙が雪を溶かす。
「葵さん! いま救急車を呼びますから!」
顔を蒼白にしている葵を前に、時人は八月のあの忌まわしい気持ちを思い出していた。
『あれ』だけは二度と味わいたくないと思っていたのに――。
奇跡的に助かった葵なのだから、これから自分が一生守ってゆくのだと思っていた。
また時人の両手から、大事な命がサラサラと音を立てて零れ落ちようとしている。
「スマホ……、あぁ、家だ。あそこのコンビニに助けを呼びに行きますから、少し」
緊張と焦りで舌がもつれそうになっている時人の声を、葵の弱々しい手が制する。そっと重ねられた指先は冷たくなっていて、死人かと思う温度に、時人は背筋を強張らせた。
「もぉ……、ええんです。ときひとさん」
小さな声で呟いて、葵は疲れたように肺の中に残った空気をそっと吐き出す。
「いいって……、何がです?」
外気で冷たくなった時人の頬に、熱い涙の跡が光っていた。その顔も、指先も、体も震えていて、あの夏の日以上に時人は怯えていた。
冬の夜空から白い雪が舞い、自分に降り積もる雪を葵は綺麗だと思っていた。
こちらを覗き込み泣いている時人の顔も、美しいだと思う。
――それももう、終わりにしたい。
「疲れました……。赤ちゃんも守れなくて、ときひとさんのことも幸せにできひん。こんな私、もぉ、ええんです……」
どこか骨が折れているのか、葵はしゃべる度に辛そうに顔を顰める。ヒューヒューと喉から呼吸が漏れ、まだ彼女が生きている証拠に白い息が吐かれては消えてゆく。
「葵さん!」
「わたし、……生まれなきゃよかった……」
――あなたを幸せにできない私なら、いらへんね。
最後に呪いに似た言葉を吐いてから、葵は話すのをやめてしまった。
力の入らない目蓋の上に、フワリと雪が落ちて溶けてゆく。顔の上に雪が次々と落ちていっても、葵はもう抗おうとはしない。
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