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葵の病室があるフロアの看護師に「婚約者です」と名乗って書類を書く。必要になってしまう判子は家の者がこれから届けに来る旨を告げ、住み込みの家政婦が届けに来るまで葵の病室で待つ事にした。
回復室と呼ばれるナースステーション横の病室に入り、時人は音を立てずにベッド脇に座った。
静かに目蓋を伏せている葵の姿は、何度も見た寝姿と同じ……なのかもしれない。
だがいま彼女が寝ているのは病院のベッドで、幸せに満ち足りた二人の温もりがある幸福の褥ではない。
「あおいさん……」
囁きかけ、時人は静かに目を閉じる。
同じ空間で葵はこうして呼吸をしている。
あの悪夢のような場所から、葵は救い出されたのだ。
ふと、水底から泡が一つ沸き起こるように、『後藤』という名前が浮き上がる。
いつ、どこで跡をつけられたのだろう。
あちらが葵を見つけたのなら、自分だって絶対に後藤に気付く自信がある。顔だって背丈だって覚えている。
「この男を葵に近付けてはいけない」と本能に刻みつけたと思っているからこそ、今回時人は死角から襲われた気分だった。
大切な葵を守るためなら何だってすると思っていた時人の盲点――変装――という手を使い、後藤は葵を襲った。
「守れなくてすみません」
消灯時間を過ぎて明かりの落ちた室内で、時人が静かに懺悔する。
「化け物の俺なら、絶対にあなたを守れるという傲慢さがありました。あなたをあの男と別れさせる事ができて、浮かれていたんだと思います。……っ全部、俺の傲慢さが原因です」
時人の頬に涙が光り、若く美しい吸血鬼は懊悩する。
「……とき、……ひと、……さん」
その時、薄羽蜉蝣の羽を震わせるような声がし、時人はハッと葵を見る。
薄闇の中、葵の目は確かに開いていた。まだ麻酔から覚めたばかりなのか、その瞳の光はぼんやりとしている。
「葵さん……、大丈夫ですか? 痛くないですか?」
布団がもそりと動いて葵の手が出、時人はそれを両手で優しく握った。
「……ときひと、さん。……泣いてはったの?」
夢の中にいるようなぼんやりとした声は、生死の淵を彷徨ってまで時人を心配していた。
「……大丈夫です。葵さんが心配してくれたから、……俺は大丈夫ですよ」
精一杯微笑むと、細められた目からまた一粒涙が零れ落ちた。
「いま……夜、ですか?」
「はい、側にいますから」
「うれしい……。もう少し……、寝てもええですか?」
葵の声は頼りなく、夜露が震えて落ちたかのように小さい。
「どうぞ、安心してゆっくり眠ってください。俺は側にいますからね」
「はい……」
吐息混じりの返事をし、葵はまた沈黙した。次第に時人は、自分がしっかりしないといけないのだと自覚し始めた。
おそらくこれから葵は、見えない後藤の影に怯える生活をするのだろう。犯人がほぼ確定しているので、きっとすぐ後藤は捕まると思う。だが葵が一人の時に襲われたという事実は変わらない。
退院したとしても女性一人であのマンションに住むなら、不安があって当然だ。トラウマで、トイレや狭い場所を怖がるかもしれない。
美来の家族に世話になるとしても、白根の家には白根の家の生活がある。葵が同居するのを嫌がる白根家ではないと思う。けれど不安定になるかもしれない葵の面倒と、小さい子供たちの面倒や、家事など平行できるのだろうか。
そこまで考えてから、時人はあらかじめ決意していた場所に答えを着地させる。
葵を引き取って、宇佐美の家で面倒をみられないだろうか、と。
両親にはちゃんと紹介をして、その反応は上々だった。時人が将来的に結婚したいと思っているのだから、きっと両親は了承してくれるはずだ。
「葵さん、必ずあなたが安心できる場所でゆっくり休めるようにしますから」
目の前で眠っている彼女を絶対に守ってみせる。静かに決意しつつ、時人はこれから待ち受けるだろう受難を覚悟していた。
葵は心身共に傷を負い、たとえ後藤が捕まったとしてもその恐怖から逃れられない。おまけに腹にいた子供は流れてしまった。
その負の連鎖の中で、自分が葵の癒やしになりたい。
「俺はあなたと一生一緒にいたいと思いました。あなたが安心してくれるというのなら、今すぐ結婚してもいい」
ベッドから覗いた葵の手を握り、時人はまた一人涙を流した。
翌朝、葵と同じ部屋で寝ていた時人は、静かな嗚咽で目を覚ました。
「葵さん……?」
目をこすって起き上がり声をかけると、ズッと洟を啜る音が聞こえた。
「時人さん、おはようさんです」
平静を装った声が挨拶をし、時人はベッド脇の椅子に座る。
「まだ痛むでしょうから、起きたら駄目ですよ」
「はい。実はもう起きようとしてました」
そう言って葵はごまかし笑いをし、手を伸ばして時人に触れようとする。
「どうしましたか?」
時人は優しく微笑み、両手で葵の手を包み込む。
「ほんまに側にいてくれはったんですね」
「当たり前ですよ。約束は守ります」
時人が葵の頬を撫で、彼女は嬉しそうに目を細めて涙をこぼす。
「怖かったんです……。知らない天井で知らない場所で、お腹が痛くて……。誰もいぃひんくて私一人やったらどないしようって」
「大丈夫ですよ」
迷子のような声を出す葵に時人は声を掛け、そっとキスをした。
「……私、リップケアできてへんのに……」
「俺は葵さんにキスをしないと、気が収まらない病なんです」
冗談めかして格好つけた事を言うと、葵が少し笑う。
「そう言えば……、私きっと血ぃ流したのに……、時人さん大丈夫でしたか?」
「…………」
時人の吸血鬼としての性質を指摘している言葉に、彼は思わず黙った。
それまで葵を元気づけようとしていたのに、彼の目は次第に力なく目線を落としてゆく。
「どないしはったんですか?」
こんな状況において、葵は相変わらず時人の事ばかり心配してくる。自分がしっかりしないといけないと思うのに、時人はまた目の奥を熱くさせた。
「あの時……。葵さんを失いそうでとても怖かったのに、濃厚な血の香りに興奮してしまう自分がいました。それがとても恥ずかしくて、恐ろしくて……」
小さな子供が悪戯を告白するような言い方に、葵はキュと時人の指を握った。
「ええんですよ。私ほんまに時人さんになら、血ぃ吸われてもええて思ってるんですから」
「……死にかけた人がそんなことを言っちゃだめです」
少し怒った顔をする時人に、葵は「うふふ」と笑う。それから傷が痛んだのか、少し顔をしかめた。
病院も朝を迎えていて、ナースステーションの方から音がしたり、食事の匂いも漂っていた。
あの絶望の小部屋から、葵は生還したのだ。
陽の当たる場所へ舞い戻り、そこで笑う当然の権利を自力で掴み取った。
「あなたは……、生きるべき人です」
人の命というものが、あんなにも簡単に奪われかねないものだと、初めて知った。
自分は決して誰かに牙をかけたりしないと固く誓っているよそで、まさか自分以外の誰か――普通の人間――が、大事な葵の命を奪おうとするとは思わなかった。
「私、生きたいです。時人さんも生きるべき人ですよ? みんな、みんなそうです」
そこで時人は意地悪にも「後藤も?」と言いかけて、やめた。
だが葵はそれを察したのか、カーテンへ視線をやってから「価値観は人それぞれです」と微妙な言い回しをした。
「カーテン、開けますね」
立ち上がってクリーム色のカーテンを開くと、朝日を浴びて葵が眩しそうに目を瞬かせる。日差しのなか髪を明るい色に光らせている時人を見て、葵はとても静かな声で言う。
「時人さん。私、昨日時人さんに言いたい事があったんです」
「何ですか?」
優しい人は光の中で振り向き、聖者のような微笑を浮かべる。
その微笑の中に、時人の覚悟があるのを葵は知らない。
葵は黒い目でじっと時人を見て、「自分はこれからこの人を傷付けるのだ」と泥のような感情を抱きながら口を開く。
「私、……時人さんの赤ちゃんを身ごもったんです」
「…………」
震える唇が本来なら嬉しい告白を告げると、時人はぎこちない笑みを浮かべたまま固まってしまった。嘘のつけない彼の目は、左右に僅かに泳いだ。
回復室と呼ばれるナースステーション横の病室に入り、時人は音を立てずにベッド脇に座った。
静かに目蓋を伏せている葵の姿は、何度も見た寝姿と同じ……なのかもしれない。
だがいま彼女が寝ているのは病院のベッドで、幸せに満ち足りた二人の温もりがある幸福の褥ではない。
「あおいさん……」
囁きかけ、時人は静かに目を閉じる。
同じ空間で葵はこうして呼吸をしている。
あの悪夢のような場所から、葵は救い出されたのだ。
ふと、水底から泡が一つ沸き起こるように、『後藤』という名前が浮き上がる。
いつ、どこで跡をつけられたのだろう。
あちらが葵を見つけたのなら、自分だって絶対に後藤に気付く自信がある。顔だって背丈だって覚えている。
「この男を葵に近付けてはいけない」と本能に刻みつけたと思っているからこそ、今回時人は死角から襲われた気分だった。
大切な葵を守るためなら何だってすると思っていた時人の盲点――変装――という手を使い、後藤は葵を襲った。
「守れなくてすみません」
消灯時間を過ぎて明かりの落ちた室内で、時人が静かに懺悔する。
「化け物の俺なら、絶対にあなたを守れるという傲慢さがありました。あなたをあの男と別れさせる事ができて、浮かれていたんだと思います。……っ全部、俺の傲慢さが原因です」
時人の頬に涙が光り、若く美しい吸血鬼は懊悩する。
「……とき、……ひと、……さん」
その時、薄羽蜉蝣の羽を震わせるような声がし、時人はハッと葵を見る。
薄闇の中、葵の目は確かに開いていた。まだ麻酔から覚めたばかりなのか、その瞳の光はぼんやりとしている。
「葵さん……、大丈夫ですか? 痛くないですか?」
布団がもそりと動いて葵の手が出、時人はそれを両手で優しく握った。
「……ときひと、さん。……泣いてはったの?」
夢の中にいるようなぼんやりとした声は、生死の淵を彷徨ってまで時人を心配していた。
「……大丈夫です。葵さんが心配してくれたから、……俺は大丈夫ですよ」
精一杯微笑むと、細められた目からまた一粒涙が零れ落ちた。
「いま……夜、ですか?」
「はい、側にいますから」
「うれしい……。もう少し……、寝てもええですか?」
葵の声は頼りなく、夜露が震えて落ちたかのように小さい。
「どうぞ、安心してゆっくり眠ってください。俺は側にいますからね」
「はい……」
吐息混じりの返事をし、葵はまた沈黙した。次第に時人は、自分がしっかりしないといけないのだと自覚し始めた。
おそらくこれから葵は、見えない後藤の影に怯える生活をするのだろう。犯人がほぼ確定しているので、きっとすぐ後藤は捕まると思う。だが葵が一人の時に襲われたという事実は変わらない。
退院したとしても女性一人であのマンションに住むなら、不安があって当然だ。トラウマで、トイレや狭い場所を怖がるかもしれない。
美来の家族に世話になるとしても、白根の家には白根の家の生活がある。葵が同居するのを嫌がる白根家ではないと思う。けれど不安定になるかもしれない葵の面倒と、小さい子供たちの面倒や、家事など平行できるのだろうか。
そこまで考えてから、時人はあらかじめ決意していた場所に答えを着地させる。
葵を引き取って、宇佐美の家で面倒をみられないだろうか、と。
両親にはちゃんと紹介をして、その反応は上々だった。時人が将来的に結婚したいと思っているのだから、きっと両親は了承してくれるはずだ。
「葵さん、必ずあなたが安心できる場所でゆっくり休めるようにしますから」
目の前で眠っている彼女を絶対に守ってみせる。静かに決意しつつ、時人はこれから待ち受けるだろう受難を覚悟していた。
葵は心身共に傷を負い、たとえ後藤が捕まったとしてもその恐怖から逃れられない。おまけに腹にいた子供は流れてしまった。
その負の連鎖の中で、自分が葵の癒やしになりたい。
「俺はあなたと一生一緒にいたいと思いました。あなたが安心してくれるというのなら、今すぐ結婚してもいい」
ベッドから覗いた葵の手を握り、時人はまた一人涙を流した。
翌朝、葵と同じ部屋で寝ていた時人は、静かな嗚咽で目を覚ました。
「葵さん……?」
目をこすって起き上がり声をかけると、ズッと洟を啜る音が聞こえた。
「時人さん、おはようさんです」
平静を装った声が挨拶をし、時人はベッド脇の椅子に座る。
「まだ痛むでしょうから、起きたら駄目ですよ」
「はい。実はもう起きようとしてました」
そう言って葵はごまかし笑いをし、手を伸ばして時人に触れようとする。
「どうしましたか?」
時人は優しく微笑み、両手で葵の手を包み込む。
「ほんまに側にいてくれはったんですね」
「当たり前ですよ。約束は守ります」
時人が葵の頬を撫で、彼女は嬉しそうに目を細めて涙をこぼす。
「怖かったんです……。知らない天井で知らない場所で、お腹が痛くて……。誰もいぃひんくて私一人やったらどないしようって」
「大丈夫ですよ」
迷子のような声を出す葵に時人は声を掛け、そっとキスをした。
「……私、リップケアできてへんのに……」
「俺は葵さんにキスをしないと、気が収まらない病なんです」
冗談めかして格好つけた事を言うと、葵が少し笑う。
「そう言えば……、私きっと血ぃ流したのに……、時人さん大丈夫でしたか?」
「…………」
時人の吸血鬼としての性質を指摘している言葉に、彼は思わず黙った。
それまで葵を元気づけようとしていたのに、彼の目は次第に力なく目線を落としてゆく。
「どないしはったんですか?」
こんな状況において、葵は相変わらず時人の事ばかり心配してくる。自分がしっかりしないといけないと思うのに、時人はまた目の奥を熱くさせた。
「あの時……。葵さんを失いそうでとても怖かったのに、濃厚な血の香りに興奮してしまう自分がいました。それがとても恥ずかしくて、恐ろしくて……」
小さな子供が悪戯を告白するような言い方に、葵はキュと時人の指を握った。
「ええんですよ。私ほんまに時人さんになら、血ぃ吸われてもええて思ってるんですから」
「……死にかけた人がそんなことを言っちゃだめです」
少し怒った顔をする時人に、葵は「うふふ」と笑う。それから傷が痛んだのか、少し顔をしかめた。
病院も朝を迎えていて、ナースステーションの方から音がしたり、食事の匂いも漂っていた。
あの絶望の小部屋から、葵は生還したのだ。
陽の当たる場所へ舞い戻り、そこで笑う当然の権利を自力で掴み取った。
「あなたは……、生きるべき人です」
人の命というものが、あんなにも簡単に奪われかねないものだと、初めて知った。
自分は決して誰かに牙をかけたりしないと固く誓っているよそで、まさか自分以外の誰か――普通の人間――が、大事な葵の命を奪おうとするとは思わなかった。
「私、生きたいです。時人さんも生きるべき人ですよ? みんな、みんなそうです」
そこで時人は意地悪にも「後藤も?」と言いかけて、やめた。
だが葵はそれを察したのか、カーテンへ視線をやってから「価値観は人それぞれです」と微妙な言い回しをした。
「カーテン、開けますね」
立ち上がってクリーム色のカーテンを開くと、朝日を浴びて葵が眩しそうに目を瞬かせる。日差しのなか髪を明るい色に光らせている時人を見て、葵はとても静かな声で言う。
「時人さん。私、昨日時人さんに言いたい事があったんです」
「何ですか?」
優しい人は光の中で振り向き、聖者のような微笑を浮かべる。
その微笑の中に、時人の覚悟があるのを葵は知らない。
葵は黒い目でじっと時人を見て、「自分はこれからこの人を傷付けるのだ」と泥のような感情を抱きながら口を開く。
「私、……時人さんの赤ちゃんを身ごもったんです」
「…………」
震える唇が本来なら嬉しい告白を告げると、時人はぎこちない笑みを浮かべたまま固まってしまった。嘘のつけない彼の目は、左右に僅かに泳いだ。
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