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即席家族
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そのように、カップ麺のような即席家族ができた。
両親に結婚すると伝えると、相手が妊婦だと知るや否や心底呆れられた。
母は『あなたは何なの!』と混乱しきり、まともに育っていない私に苛立ちをぶつける。
しかし同じ女性として臨月の妊婦を無下に扱う事はできず、話は無事に子供が生まれてからという事になった。
あとから説教するとの事だが、両親はとうに諦めているように思えた。
もともと、一夜限りの関係であるカナコの〝息子〟を、女の子として育てているところから、まともではないと感じていたのだろう。
説教をしても涼子が子供を産めば育てなければならないし、『父親になる覚悟はある』と言い張るなら、好きにさせるしか選択肢はない。
冬夜を育て始めた時もだが、今まで私は一度も、両親に『助けてほしい』と言わず自力で何とかしてきたから、両親としても渋々承諾するしかないと思っていた。
やがて、涼子は女の子を出産した。
三月三日生まれのその子は、クリスマス生まれの冬夜に対して春佳と名付けられた。
春佳は誕生時に体が小さくて成長に懸念があったが、涼子と二人三脚で育てるうちに普通の子と同じような成長を見せ、安堵した。
大きくなるにつれて体調を崩す事はなくなったが、育児ノイローゼになりかけていた涼子は、初めての子である事も相まってとても心配性になっていた。
私は涼子に専業主婦として家を守ってもらい、子供たちの世話を頼んだ。
彼女が春佳に満足な愛情を持てないのは承知の上だが、私との約束は守ってくれると信じていたからだ。
確かに涼子はきちんと食事を作り、掃除や洗濯など家事もこなし、子供たちの面倒もみてくれた。
けれど春佳を見ては泣き始める事もあり、情緒面に不安があった。
彼女はレイプされてから精神科に通っているらしく、今もずっと薬を飲んでいる。
心身共に健康な女性でも、子育てをしていれば疲れ果てる。
私は育児経験があるが、涼子は初めての子育ての上、情緒が安定していない。
だからなのか、以前のように母が家を訪れては、涼子を慰めた上で育児を手伝ってくれた。
涼子は母と共に過ごすうち、私が自分を助けてくれた事を打ち明けたようだ。
『先輩も冬夜の子育てで大変ななか、昔のよしみで、レイプされた子を身ごもって途方に暮れていた私を助けてくれたんです』と。
それを聞いたからか母の態度は次第に軟化し、私たち家族に協力的になっていった。
私が何度も繰り返した『どんな形であっても、血が繋がっていなくても家族だ』という言葉を、母なりに重たく受け止めたのだろう。
両親の中では私は〝いつまで立ってもまともに育たない息子〟だっただろうが、知らないうちに父になる覚悟、責任を持つ事を知ったのだと見直したのかもしれない。
やがて私たちは盆や正月になると、子供たちを連れて実家に行くようになった。
両親も孫とは血が繋がっていないと分かっているものの、自分たちを『お祖父ちゃん、お祖母ちゃん』と呼ぶ冬夜と春佳に愛おしさを感じているようだ。
母は涼子が不安定になった時の話し相手になり、食事やお茶に誘った。
それでも涼子の中にある不安、恐怖は消えないようだった。
いつ壊れるか分からない、薄氷の上の家族。
それが、瀧沢家だ。
二年後――。
『お願いだからやめて……っ』
暗闇のなか、涼子は嗚咽しながら私に哀願する。
親子四人、川の字で寝ているなか、私は髪を切ったばかりの冬夜の頬に口づけ、平らな胸を撫でていた。
涼子が初めてその行為を知った当初は、『養ってもらっているのだから目を瞑る』という態度を貫いていた。
が、次第に親としての自覚が芽生えてきたのか、倫理的に許されないと思って私を制止するようになってきた。
両親に結婚すると伝えると、相手が妊婦だと知るや否や心底呆れられた。
母は『あなたは何なの!』と混乱しきり、まともに育っていない私に苛立ちをぶつける。
しかし同じ女性として臨月の妊婦を無下に扱う事はできず、話は無事に子供が生まれてからという事になった。
あとから説教するとの事だが、両親はとうに諦めているように思えた。
もともと、一夜限りの関係であるカナコの〝息子〟を、女の子として育てているところから、まともではないと感じていたのだろう。
説教をしても涼子が子供を産めば育てなければならないし、『父親になる覚悟はある』と言い張るなら、好きにさせるしか選択肢はない。
冬夜を育て始めた時もだが、今まで私は一度も、両親に『助けてほしい』と言わず自力で何とかしてきたから、両親としても渋々承諾するしかないと思っていた。
やがて、涼子は女の子を出産した。
三月三日生まれのその子は、クリスマス生まれの冬夜に対して春佳と名付けられた。
春佳は誕生時に体が小さくて成長に懸念があったが、涼子と二人三脚で育てるうちに普通の子と同じような成長を見せ、安堵した。
大きくなるにつれて体調を崩す事はなくなったが、育児ノイローゼになりかけていた涼子は、初めての子である事も相まってとても心配性になっていた。
私は涼子に専業主婦として家を守ってもらい、子供たちの世話を頼んだ。
彼女が春佳に満足な愛情を持てないのは承知の上だが、私との約束は守ってくれると信じていたからだ。
確かに涼子はきちんと食事を作り、掃除や洗濯など家事もこなし、子供たちの面倒もみてくれた。
けれど春佳を見ては泣き始める事もあり、情緒面に不安があった。
彼女はレイプされてから精神科に通っているらしく、今もずっと薬を飲んでいる。
心身共に健康な女性でも、子育てをしていれば疲れ果てる。
私は育児経験があるが、涼子は初めての子育ての上、情緒が安定していない。
だからなのか、以前のように母が家を訪れては、涼子を慰めた上で育児を手伝ってくれた。
涼子は母と共に過ごすうち、私が自分を助けてくれた事を打ち明けたようだ。
『先輩も冬夜の子育てで大変ななか、昔のよしみで、レイプされた子を身ごもって途方に暮れていた私を助けてくれたんです』と。
それを聞いたからか母の態度は次第に軟化し、私たち家族に協力的になっていった。
私が何度も繰り返した『どんな形であっても、血が繋がっていなくても家族だ』という言葉を、母なりに重たく受け止めたのだろう。
両親の中では私は〝いつまで立ってもまともに育たない息子〟だっただろうが、知らないうちに父になる覚悟、責任を持つ事を知ったのだと見直したのかもしれない。
やがて私たちは盆や正月になると、子供たちを連れて実家に行くようになった。
両親も孫とは血が繋がっていないと分かっているものの、自分たちを『お祖父ちゃん、お祖母ちゃん』と呼ぶ冬夜と春佳に愛おしさを感じているようだ。
母は涼子が不安定になった時の話し相手になり、食事やお茶に誘った。
それでも涼子の中にある不安、恐怖は消えないようだった。
いつ壊れるか分からない、薄氷の上の家族。
それが、瀧沢家だ。
二年後――。
『お願いだからやめて……っ』
暗闇のなか、涼子は嗚咽しながら私に哀願する。
親子四人、川の字で寝ているなか、私は髪を切ったばかりの冬夜の頬に口づけ、平らな胸を撫でていた。
涼子が初めてその行為を知った当初は、『養ってもらっているのだから目を瞑る』という態度を貫いていた。
が、次第に親としての自覚が芽生えてきたのか、倫理的に許されないと思って私を制止するようになってきた。
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