【R-18】有罪愛

臣桜

文字の大きさ
上 下
66 / 91

後輩からの連絡

しおりを挟む
 二学年下の長瀬は、二十七歳のはずだ。

 高校卒業後、彼女は年賀状のやり取りのほか定期的にメールをくれていたが、優那の事ばかり考えていた私はでろくに返信をしていなかった。

 そしてお互い社会人になって忙しくなったあとは連絡の頻度が落ち、年に一回か二回になっていた。

 私はいまだ長瀬の事を後輩以上に思えていなかったが、こんな私に関わり続けてくれる奇特な人だとは感じていた。

 だから多少の情もあり、長瀬が私を頼りたいと言うなら話を聞くだけでも……と応じる事にしたのだ。





 長瀬が指定してきたのは、東京駅近くのチェーン喫茶だ。

 昨今カフェが流行りだして、流行を追うタイプの人たちはこぞってカフェめしだの言っているが、私はそういうものに疎い。

 だからよく分からない物を出す店より、昔ながらの喫茶店のほうが落ち着く。

 店に着くと、先に来ていた長瀬がこちらを見て会釈する。

 席に向かう途中、私は長瀬の腹が大きい事に気付き、彼女も私が子連れだと気付いてお互い微妙な表情になった。

 座ったあと、冬夜は礼儀正しく『こんにちは』を言う。

『こんにちは。……先輩のお子さんですか?』

 二十七歳になった長瀬はロングヘアをハーフアップにし、淡い色のゆったりとしたワンピースを着ていた。

 大人しそうな顔立ちは変わらないが、化粧をしているからか垢抜けた感じがあり、優那のような華やかさはないものの、魅力的な女性になった。

『……あ、…………そ、そうだ』

 長瀬の問いに、私は言葉を詰まらせつつ頷く。

 一言で言い表すには、冬夜の存在は複雑すぎる。

 長瀬の目的がなんであるか分からない以上、下手に自分の情報を出さないほうがいいと判断した私は、今は詳しく言わない事にした。

 私はコーヒーを頼み、冬夜はケーキとクリームソーダ、長瀬は妊婦という事もありレモンスカッシュを頼んでいた。

『……お元気でしたか? 先輩は変わりませんね』

 先に長瀬が切りだし、私は色々あった事を伏せて曖昧に笑う。

『今は親の会社で働いている』

『ご結婚されたんですか?』

 そう尋ねた長瀬は、ただ世間話をしているというより、私が既婚かどうかをやけに気にしているように思えた。

 慎重に答えないとならないと感じた私は、先に彼女の用件を聞く事にする。

『……先に長瀬の話を聞かせてくれないか?』

 そう言うと、彼女は視線を落として溜め息をつき、膨らんだ腹部に手を当てる。

 それから気遣わしげに冬夜を見て、尋ねてきた。

『……これから話す内容は配慮が必要な事なんですが、その子……、大丈夫でしょうか?』

 気遣った長瀬に、私は軽く微笑みかける。

『まだ五歳だし、難しい事は分からないから大丈夫だ』

 長瀬は安心したように溜め息をつき、運ばれてきたレモンスカッシュを一口飲んでから語り出した。

『……私、この歳になっても彼氏ができなくて、家族や周りの人に心配されていたんです。上司も〝いいやつを紹介してやろうか?〟と世話を焼こうとしていました。……でも私の心の中にはまだ先輩がいて、その誘いに頷けなかったんです』

 私は最後の言葉を聞き、溜め息をつく。

『……用意された相手と結婚するのに抵抗があったので、友達に誘われて合コンに行きました。……そうしたら連絡先を聞いてきた人を断れなくて、後日会った時にお酒を飲まされて、……ホテルに連れ込まれてしまって……』

 長瀬の声が涙で歪む。

 そこまで聞いた私は、彼女の腹が大きい理由を察した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...