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それでも母親かよ
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やがて春佳の合コン事件があり、俺はますます妹への執着を深め、彼女を側に置きたい願望を持つようになる。
大切な妹に下品な男が触ったと思うと、激しい怒りを抱くと同時に、守れない自分の不甲斐なさに酷く落ち込んだ。
春佳に男の毒牙がかかるような事があってはいけない。
何があっても、決して、だ。
なのに『大学生だし、ストレスが溜まっているから息抜きは必要だ』と理解のある事を言った挙げ句――、こんな事になってしまった。
父親に汚されたというのに、さらに会ったばかりの男に迫られ、怖くなかったはずがない。
――俺だって怖かった。
春佳が深く傷付いたと思うと、自身のトラウマが蘇って自分の事のようにつらくなる。
――すまない。
――守れなくて悪かった。
――今度からはちゃんとするから。
春佳が客室で寝た姿を見て、俺は一人で静かに嗚咽した。
そんな目に遭っても春佳は実家を離れず、頑なに『母親の面倒を見る』と言いって聞かない。
その矢先、岩淵の事件があった。
目の前で犯されかけている妹を見た瞬間、合コンの時以上の激しい怒りが全身を包む。
同時に、少年時代に父親に犯された自分を思いだした。
――助けて!
あの時は誰に助けを求めても、誰も返事をしてくれなかったし、救われなかった。
――だが今は……!
――春佳だけは、俺が守る!
俺は妹の華奢な体に覆い被さる全裸の中年男を掴み、引きずってなぎ倒し、思い切り蹴り、馬乗りになって殴りに殴った。
――このやろう!
――子供相手になにしてるんだ!
――この変質者め! 死ね! 死んで詫びろ!
俺は拳にすべての怒りを込め、岩淵が動けなくなるまで殴り続けた。
――こいつは、社会的に殺す。
――今後二度と、俺たちに近づけなくしてやる。
満足いくまで殴ったあと、俺はだらしなく床の上に横たわる岩淵の姿をカメラに収め、縮こまったモノも何もかも、赤裸々に写した。
そして呼吸を整えたあと、冷酷に吐き捨てる。
『……あんたが警察に行くのは勝手だが、こっちもあんたの弱みを握っている事を忘れるなよ? 念のため名刺はもらっていくからな』
言い捨てたあと、俺は裸に剥かれた春佳に服を着せ、傷付いた妹を自分のマンションに迎えた。
大きなショックを受けて初めて、春佳は自分が今まで異常な環境にいた事に気づいたようだった。
当分実家に戻さないつもりでいる俺は、後日一人で実家に向かうと、母親の罵詈雑言を無視して春佳の荷物をスーツケースに詰めた。
『お前、岩淵さんになんて事をしてくれたの! 傷害事件よ!』
金切り声で叫ぶ中年女の声を、俺は無視し続ける。
こいつは昔から何かあれば大声を出せばいいと思っていた。優しい春佳なら言う事を聞いてくれるから、娘に依存していたんだろう。
だが俺は違う。
『お前こそ、夫が死んだ直後になに男を家に入れてるんだよ。実の娘があの男に色目を使われてるのを分かっていたんだろ? 分かっていながらお前は〝母〟である事よりも〝女〟でいる事を望み、その結果、春佳は襲われた。……お前、それでも母親かよ。俺が駆けつけなかったら、春佳はレイプされてたんだぞ。母親なのにそれを望んでいたっていうのか!?』
怒りを叩きつけると、母親は表情を歪めて俺を睨み付ける。
『言いたい事があるなら言えよ。俺が納得する理由があるなら聞いてやる』
勿論、そんなものなんてある訳ないに決まっている。
母親は歯を食いしばって肩を震わせたあと、低い声で『あんたに何が分かるの』と吐き捨てた。
『自分の子供をレイプさせる親の気持ちなんて分かりたくもねーよ。……ああ、お前は〝分かっていても無視する〟のが得意なんだっけ』
せせら笑うと、母親は涙を流し始めた。
大切な妹に下品な男が触ったと思うと、激しい怒りを抱くと同時に、守れない自分の不甲斐なさに酷く落ち込んだ。
春佳に男の毒牙がかかるような事があってはいけない。
何があっても、決して、だ。
なのに『大学生だし、ストレスが溜まっているから息抜きは必要だ』と理解のある事を言った挙げ句――、こんな事になってしまった。
父親に汚されたというのに、さらに会ったばかりの男に迫られ、怖くなかったはずがない。
――俺だって怖かった。
春佳が深く傷付いたと思うと、自身のトラウマが蘇って自分の事のようにつらくなる。
――すまない。
――守れなくて悪かった。
――今度からはちゃんとするから。
春佳が客室で寝た姿を見て、俺は一人で静かに嗚咽した。
そんな目に遭っても春佳は実家を離れず、頑なに『母親の面倒を見る』と言いって聞かない。
その矢先、岩淵の事件があった。
目の前で犯されかけている妹を見た瞬間、合コンの時以上の激しい怒りが全身を包む。
同時に、少年時代に父親に犯された自分を思いだした。
――助けて!
あの時は誰に助けを求めても、誰も返事をしてくれなかったし、救われなかった。
――だが今は……!
――春佳だけは、俺が守る!
俺は妹の華奢な体に覆い被さる全裸の中年男を掴み、引きずってなぎ倒し、思い切り蹴り、馬乗りになって殴りに殴った。
――このやろう!
――子供相手になにしてるんだ!
――この変質者め! 死ね! 死んで詫びろ!
俺は拳にすべての怒りを込め、岩淵が動けなくなるまで殴り続けた。
――こいつは、社会的に殺す。
――今後二度と、俺たちに近づけなくしてやる。
満足いくまで殴ったあと、俺はだらしなく床の上に横たわる岩淵の姿をカメラに収め、縮こまったモノも何もかも、赤裸々に写した。
そして呼吸を整えたあと、冷酷に吐き捨てる。
『……あんたが警察に行くのは勝手だが、こっちもあんたの弱みを握っている事を忘れるなよ? 念のため名刺はもらっていくからな』
言い捨てたあと、俺は裸に剥かれた春佳に服を着せ、傷付いた妹を自分のマンションに迎えた。
大きなショックを受けて初めて、春佳は自分が今まで異常な環境にいた事に気づいたようだった。
当分実家に戻さないつもりでいる俺は、後日一人で実家に向かうと、母親の罵詈雑言を無視して春佳の荷物をスーツケースに詰めた。
『お前、岩淵さんになんて事をしてくれたの! 傷害事件よ!』
金切り声で叫ぶ中年女の声を、俺は無視し続ける。
こいつは昔から何かあれば大声を出せばいいと思っていた。優しい春佳なら言う事を聞いてくれるから、娘に依存していたんだろう。
だが俺は違う。
『お前こそ、夫が死んだ直後になに男を家に入れてるんだよ。実の娘があの男に色目を使われてるのを分かっていたんだろ? 分かっていながらお前は〝母〟である事よりも〝女〟でいる事を望み、その結果、春佳は襲われた。……お前、それでも母親かよ。俺が駆けつけなかったら、春佳はレイプされてたんだぞ。母親なのにそれを望んでいたっていうのか!?』
怒りを叩きつけると、母親は表情を歪めて俺を睨み付ける。
『言いたい事があるなら言えよ。俺が納得する理由があるなら聞いてやる』
勿論、そんなものなんてある訳ないに決まっている。
母親は歯を食いしばって肩を震わせたあと、低い声で『あんたに何が分かるの』と吐き捨てた。
『自分の子供をレイプさせる親の気持ちなんて分かりたくもねーよ。……ああ、お前は〝分かっていても無視する〟のが得意なんだっけ』
せせら笑うと、母親は涙を流し始めた。
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