【R-18】有罪愛

臣桜

文字の大きさ
上 下
42 / 88

仕込み

しおりを挟む
『そうですね。冬夜さんから気を遣われていると知ったら〝自分だけ楽しい思いをしていいのか〟って思いそうです』

『だから、千絵ちゃんの従兄弟さんが行く予定だったけど、急に行けなくなったからチケットを譲ってもらった……という体にしてもらえないかな? 勿論、千絵ちゃんのご両親には、本当の事を言ってもらって構わない。多分、うちの事情を聞いたら俺の気持ちを理解してくれると思うから』

 送り主を誤魔化す協力を要請したが、千絵はあっさり頷いた。

『勿論です! ……実は春佳の家庭事情はうちの親も知っているんです。〝話を聞いて気晴らしに一緒に遊ぶぐらいしかできないけど、友達としてできる事をしたい〟と言ったら、親も〝そうしなさい〟と言っていました』

 良識的な大人なら、娘の友人が毒親持ちだと知れば気の毒がるだろう。

 積極的には関わりたくないだろうが、安全なところから春佳に関わるぐらいなら……と思っているのは予想していた。

 加えて〝実家から出た兄が妹を想い、旅行をプレゼントしたいと思っている〟という美談を聞けば、話を合わせるぐらい協力してくれるだろうと思っていた。

『でも、外泊になるけど大丈夫?』

『大丈夫です! 今までも泊まりで遊んだ事はあります。それに今回は女子同士ですし、妹想いの冬夜さんのお願いなら絶対に大丈夫です! うちの両親だって春佳に対して〝女子大生らしく青春を謳歌してほしい〟と思っていますし』

 千絵はグッと親指を立てて言い、少し照れくさそうな顔で続けた。

『親には〝春佳には妹想いの素敵なお兄さんがいる〟って話をしてたんです。で、写真も見せちゃいました。母ったら〝イケメンね〟ってはしゃいでたんですよ。瀧沢兄妹はうちの家族に評判がいいですし、本当に大丈夫』

『良かった』

 それは心からの言葉だ。

 いつか千絵を利用するかもしれないからと、優しく接し続けてきたかいがあった。

『じゃあ、七月、春佳を宜しくお願いします。楽しい思い出を作ってあげて』

『こちらこそ、ありがとうございます! しっかり楽しんできますね。お土産も買いますから!』

 そのあとは春佳の大学での様子を聞きながらお茶をし、一時間後には店を出て別れた。





 春佳を家から出す手立ては整えたので、あとは母親を外出させるのみだ。

 母はいつも家にいるが、外出をしない訳ではない。

 外と内でのオンオフが激しい女で、出かける時はブランド物の化粧品を使ってバッチリメイクをし、お洒落をして出かける。

〝外〟モードになればハキハキと受け答えし、社交的な人物に見せかける事もできるから、馴染みの店の店員には〝綺麗なお得意様〟と思われ、学生時代からの友人や親戚にも感じのいい人と思われていた。

 それとは別に、母は懸賞を趣味にし、毎日サイトをチェックしてはあらゆる物に応募している。

 実際に当選した事もあったが、賞品が送られてくる時は予告なく現物が送られてくる。

 それを利用し、俺は自宅に箱根にある温泉旅館のペアチケットを送る事にした。

 母の事だから、いきなり宿泊券が当たっても『無数に応募した懸賞の中の何かが当たった』としか思わないだろう。

 加えて宿泊券が当たっても、母は父を絶対に誘わない。

 物心ついた時から夫婦生活は破綻していて、〝家族〟を演じるために外出はしても帰宅したあとは他人のように接し、極力関わらずに生活していた。

 両親が夜の営みをしていた気配もないし、同居人として仲良く話したりテレビを見ていた事もない。

 きっと母は父親が俺を犯している姿を見て、とっくに夫に愛想を尽かしたんだろう。

 だから宿泊券が当たっても、母は絶対に夫を誘わない。

 俺は箱根の温泉旅館に連絡して宿泊券を発行してもらう事にした。

『母親と親子関係がうまくいっておらず、僕の名前が出ると母は不機嫌になるので、懸賞が当たった体で宿泊券を送りたいんです。日時を指定した宿泊券に食事やエステ等のサービスもつけてください』

 宿泊業をしていれば色んな〝事情〟を持つ客が訪れるし、宿の者は快く受け入れてくれた。

〝決行〟する日時を指定した宿泊券は、五月下旬には自宅に発送されたそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令嬢たちの破廉恥花嫁修行

雑煮
恋愛
女はスケベでなんぼなアホエロ世界で花嫁修行と称して神官たちに色々な破廉恥な行為を受ける貴族令嬢たちのお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...