63 / 105
どうしてこうなっちゃったんだろ
しおりを挟む
「……秀弥さんが好き。結婚したいぐらい愛しているし、あなたにも私しかいないと思っている。……亮との事はいけない関係だと分かっているから、深く考えるのを避けていた。……亮は格好いいしハイスペだし、魅力的な人だと思う。そんな人が毎日私に『愛してる』『結婚したい』って囁いてくれて、……いい気になっていた。……ごめんなさい」
秀弥さんは私の正直な言葉を聞いて軽く笑み、「どう?」というように亮に向かって小首を傾げてみせた。
亮は小さく息を吐き、頷く。
「そう思わせるように仕向けたのは認める。西崎さんはそうとう夕貴を手懐けているようだけど、俺だってずっと夕貴を支配して洗脳していた。……ここ数年、夕貴の帰りが遅い日や、泊まりの日が多くなって『男がいるな』と察していた。夕貴は『付き合ってる人がいる』とは言わなかったけど、『好きな人がいる』とは言ってた。……まあ、その時点で俺は選ばれないかもしれないとは思ってたけど。……だから、ムカついて『絶対に手放してやるもんか』って思って、分かりやすい場所にキスマークをつけたし、俺の形を覚え込ませた」
亮の言葉を聞いて、私はカァ……と赤面する。
私たちはテラス席に座っていて、外の喧噪がダイレクトに聞こえるし、店内のBGMや客の談笑もあり、話し声は紛れている。
でも〝外〟でいやらしい言葉を言われ、穴を掘って埋まりたくなるぐらいの羞恥を覚えた。
……なのに、そんな支配的な言われ方をされて、興奮してしまっている自分もいる。
亮の言葉を聞き、秀弥さんは微笑む。
「〝メッセージ〟はちゃんと受け取ってたよ。最初は腹立ったけど、『どんな奴だろう?』って考えるようになった。……っていうか、俺が指摘するまで『気づかれてない』って思ってた夕貴は、バカで可愛いな」
秀弥さんはそう言って私の顔を覗き込み、妖艶に笑うとポンポンと頭を撫でてくる。
「……ごめんなさい……」
彼の言うとおり、私はバカだ。
愚かで、これ以上ないぐらいアホで、あり得なくて、こんな事、誰にも相談できない。
誰にも打ち明けられず一人で悩んでいたから、二人から泳がされていた〝愚かな女〟だと自覚できずにいた。
秀弥さんも亮も、私の体越しに〝相手〟がいるのに気づいていた。
私だけが『バレていないはず』と思って、二人にいい顔をしてセックスし続けていた。最低だ。
「……どうしてこうなっちゃったんだろ……」
自己嫌悪、呆れ、失望……。あらゆるものが限界を超えた私は〝無〟になって呟いた。
――道を踏み外した。
法を犯した訳じゃないし、そこまで絶望を感じる事じゃないかもしれない。
本当の意味での近親相姦ではないし、秀弥さんに捨てられた訳でもない。
流された。それだけなのに、私は〝二股する最低な女〟に成り下がっていた。
秀弥さんは、ズン……と落ち込んでいる私の頭を撫でた。
「別にそこまで落ち込む事じゃないだろ。俺はこのまま結婚するつもりだし」
「……うん……」
確かにそうなんだけど……。
「『嫌われたくない』って思ってるからじゃないのか?」
その時、亮がボソッと呟いた。
ノロノロと彼を見ると、彼は溜め息をついて言う。
「夕貴はいつも自分を押し殺して、美佐恵さんのため、周りのために生きてるって、こないだ言っただろ? そうやって自分を殺して周りにいい顔してるのは、『嫌われたくない』って思いがあるからだよ」
(……その通りだ。私はこじらせ八方美人だ)
亮の言葉が胸の奥に染みこんでいく。
その時、秀弥さんが言った
「こいつ、会社でも八方美人だよ。『いい人』だけど、『仕事を押しつけやすい都合のいい奴』でもある」
「えっ」
周りにそう思われていたと思わなかったので、つい声を上げてしまった。
けれどよく考えてみると、思い当たる顔が一人、二人出てくる。
「で、男からは『押せばヤらせてくれそう』って思われてる。……ま、俺が牽制して守っていた訳だけど」
「……はぁ……」
また、大きな溜め息が漏れた。
けど……。
「……守ってくれてありがとう」
「おう」
秀弥さんにお礼を言うと、彼は優しく微笑んだ。
秀弥さんは私の正直な言葉を聞いて軽く笑み、「どう?」というように亮に向かって小首を傾げてみせた。
亮は小さく息を吐き、頷く。
「そう思わせるように仕向けたのは認める。西崎さんはそうとう夕貴を手懐けているようだけど、俺だってずっと夕貴を支配して洗脳していた。……ここ数年、夕貴の帰りが遅い日や、泊まりの日が多くなって『男がいるな』と察していた。夕貴は『付き合ってる人がいる』とは言わなかったけど、『好きな人がいる』とは言ってた。……まあ、その時点で俺は選ばれないかもしれないとは思ってたけど。……だから、ムカついて『絶対に手放してやるもんか』って思って、分かりやすい場所にキスマークをつけたし、俺の形を覚え込ませた」
亮の言葉を聞いて、私はカァ……と赤面する。
私たちはテラス席に座っていて、外の喧噪がダイレクトに聞こえるし、店内のBGMや客の談笑もあり、話し声は紛れている。
でも〝外〟でいやらしい言葉を言われ、穴を掘って埋まりたくなるぐらいの羞恥を覚えた。
……なのに、そんな支配的な言われ方をされて、興奮してしまっている自分もいる。
亮の言葉を聞き、秀弥さんは微笑む。
「〝メッセージ〟はちゃんと受け取ってたよ。最初は腹立ったけど、『どんな奴だろう?』って考えるようになった。……っていうか、俺が指摘するまで『気づかれてない』って思ってた夕貴は、バカで可愛いな」
秀弥さんはそう言って私の顔を覗き込み、妖艶に笑うとポンポンと頭を撫でてくる。
「……ごめんなさい……」
彼の言うとおり、私はバカだ。
愚かで、これ以上ないぐらいアホで、あり得なくて、こんな事、誰にも相談できない。
誰にも打ち明けられず一人で悩んでいたから、二人から泳がされていた〝愚かな女〟だと自覚できずにいた。
秀弥さんも亮も、私の体越しに〝相手〟がいるのに気づいていた。
私だけが『バレていないはず』と思って、二人にいい顔をしてセックスし続けていた。最低だ。
「……どうしてこうなっちゃったんだろ……」
自己嫌悪、呆れ、失望……。あらゆるものが限界を超えた私は〝無〟になって呟いた。
――道を踏み外した。
法を犯した訳じゃないし、そこまで絶望を感じる事じゃないかもしれない。
本当の意味での近親相姦ではないし、秀弥さんに捨てられた訳でもない。
流された。それだけなのに、私は〝二股する最低な女〟に成り下がっていた。
秀弥さんは、ズン……と落ち込んでいる私の頭を撫でた。
「別にそこまで落ち込む事じゃないだろ。俺はこのまま結婚するつもりだし」
「……うん……」
確かにそうなんだけど……。
「『嫌われたくない』って思ってるからじゃないのか?」
その時、亮がボソッと呟いた。
ノロノロと彼を見ると、彼は溜め息をついて言う。
「夕貴はいつも自分を押し殺して、美佐恵さんのため、周りのために生きてるって、こないだ言っただろ? そうやって自分を殺して周りにいい顔してるのは、『嫌われたくない』って思いがあるからだよ」
(……その通りだ。私はこじらせ八方美人だ)
亮の言葉が胸の奥に染みこんでいく。
その時、秀弥さんが言った
「こいつ、会社でも八方美人だよ。『いい人』だけど、『仕事を押しつけやすい都合のいい奴』でもある」
「えっ」
周りにそう思われていたと思わなかったので、つい声を上げてしまった。
けれどよく考えてみると、思い当たる顔が一人、二人出てくる。
「で、男からは『押せばヤらせてくれそう』って思われてる。……ま、俺が牽制して守っていた訳だけど」
「……はぁ……」
また、大きな溜め息が漏れた。
けど……。
「……守ってくれてありがとう」
「おう」
秀弥さんにお礼を言うと、彼は優しく微笑んだ。
19
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R-18・短編】部長と私の秘め事
臣桜
恋愛
彼氏にフラれた上村朱里は、酔い潰れていた所を上司の速見尊に拾われ、家まで送られる。タクシーの中で元彼との気が進まないセックスの話などをしていると、部長が自分としてみるか?と言い……。
かなり前に企画で書いたものです。急いで一日ぐらいで書いたので、本当はもっと続きそうなのですがぶつ切りされています。いつか続きを連載版で書きたいですが……、いつになるやら。
ムーンライトノベルズ様にも転載しています。
表紙はニジジャーニーで生成しました
ヤンデレ男に拐われ孕まセックスされるビッチ女の話
イセヤ レキ
恋愛
※こちらは18禁の作品です※
箸休め作品です。
表題の通り、基本的にストーリーなし、エロしかありません。
全編に渡り淫語だらけです、綺麗なエロをご希望の方はUターンして下さい。
地雷要素多めです、ご注意下さい。
快楽堕ちエンドの為、ハピエンで括ってます。
※性的虐待の匂わせ描写あります。
※清廉潔白な人物は皆無です。
汚喘ぎ/♡喘ぎ/監禁/凌辱/アナル/クンニ/放尿/飲尿/クリピアス/ビッチ/ローター/緊縛/手錠/快楽堕ち
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる