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どうしてこうなっちゃったんだろ
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「……秀弥さんが好き。結婚したいぐらい愛しているし、あなたにも私しかいないと思っている。……亮との事はいけない関係だと分かっているから、深く考えるのを避けていた。……亮は格好いいしハイスペだし、魅力的な人だと思う。そんな人が毎日私に『愛してる』『結婚したい』って囁いてくれて、……いい気になっていた。……ごめんなさい」
秀弥さんは私の正直な言葉を聞いて軽く笑み、「どう?」というように亮に向かって小首を傾げてみせた。
亮は小さく息を吐き、頷く。
「そう思わせるように仕向けたのは認める。西崎さんはそうとう夕貴を手懐けているようだけど、俺だってずっと夕貴を支配して洗脳していた。……ここ数年、夕貴の帰りが遅い日や、泊まりの日が多くなって『男がいるな』と察していた。夕貴は『付き合ってる人がいる』とは言わなかったけど、『好きな人がいる』とは言ってた。……まあ、その時点で俺は選ばれないかもしれないとは思ってたけど。……だから、ムカついて『絶対に手放してやるもんか』って思って、分かりやすい場所にキスマークをつけたし、俺の形を覚え込ませた」
亮の言葉を聞いて、私はカァ……と赤面する。
私たちはテラス席に座っていて、外の喧噪がダイレクトに聞こえるし、店内のBGMや客の談笑もあり、話し声は紛れている。
でも〝外〟でいやらしい言葉を言われ、穴を掘って埋まりたくなるぐらいの羞恥を覚えた。
……なのに、そんな支配的な言われ方をされて、興奮してしまっている自分もいる。
亮の言葉を聞き、秀弥さんは微笑む。
「〝メッセージ〟はちゃんと受け取ってたよ。最初は腹立ったけど、『どんな奴だろう?』って考えるようになった。……っていうか、俺が指摘するまで『気づかれてない』って思ってた夕貴は、バカで可愛いな」
秀弥さんはそう言って私の顔を覗き込み、妖艶に笑うとポンポンと頭を撫でてくる。
「……ごめんなさい……」
彼の言うとおり、私はバカだ。
愚かで、これ以上ないぐらいアホで、あり得なくて、こんな事、誰にも相談できない。
誰にも打ち明けられず一人で悩んでいたから、二人から泳がされていた〝愚かな女〟だと自覚できずにいた。
秀弥さんも亮も、私の体越しに〝相手〟がいるのに気づいていた。
私だけが『バレていないはず』と思って、二人にいい顔をしてセックスし続けていた。最低だ。
「……どうしてこうなっちゃったんだろ……」
自己嫌悪、呆れ、失望……。あらゆるものが限界を超えた私は〝無〟になって呟いた。
――道を踏み外した。
法を犯した訳じゃないし、そこまで絶望を感じる事じゃないかもしれない。
本当の意味での近親相姦ではないし、秀弥さんに捨てられた訳でもない。
流された。それだけなのに、私は〝二股する最低な女〟に成り下がっていた。
秀弥さんは、ズン……と落ち込んでいる私の頭を撫でた。
「別にそこまで落ち込む事じゃないだろ。俺はこのまま結婚するつもりだし」
「……うん……」
確かにそうなんだけど……。
「『嫌われたくない』って思ってるからじゃないのか?」
その時、亮がボソッと呟いた。
ノロノロと彼を見ると、彼は溜め息をついて言う。
「夕貴はいつも自分を押し殺して、美佐恵さんのため、周りのために生きてるって、こないだ言っただろ? そうやって自分を殺して周りにいい顔してるのは、『嫌われたくない』って思いがあるからだよ」
(……その通りだ。私はこじらせ八方美人だ)
亮の言葉が胸の奥に染みこんでいく。
その時、秀弥さんが言った
「こいつ、会社でも八方美人だよ。『いい人』だけど、『仕事を押しつけやすい都合のいい奴』でもある」
「えっ」
周りにそう思われていたと思わなかったので、つい声を上げてしまった。
けれどよく考えてみると、思い当たる顔が一人、二人出てくる。
「で、男からは『押せばヤらせてくれそう』って思われてる。……ま、俺が牽制して守っていた訳だけど」
「……はぁ……」
また、大きな溜め息が漏れた。
けど……。
「……守ってくれてありがとう」
「おう」
秀弥さんにお礼を言うと、彼は優しく微笑んだ。
秀弥さんは私の正直な言葉を聞いて軽く笑み、「どう?」というように亮に向かって小首を傾げてみせた。
亮は小さく息を吐き、頷く。
「そう思わせるように仕向けたのは認める。西崎さんはそうとう夕貴を手懐けているようだけど、俺だってずっと夕貴を支配して洗脳していた。……ここ数年、夕貴の帰りが遅い日や、泊まりの日が多くなって『男がいるな』と察していた。夕貴は『付き合ってる人がいる』とは言わなかったけど、『好きな人がいる』とは言ってた。……まあ、その時点で俺は選ばれないかもしれないとは思ってたけど。……だから、ムカついて『絶対に手放してやるもんか』って思って、分かりやすい場所にキスマークをつけたし、俺の形を覚え込ませた」
亮の言葉を聞いて、私はカァ……と赤面する。
私たちはテラス席に座っていて、外の喧噪がダイレクトに聞こえるし、店内のBGMや客の談笑もあり、話し声は紛れている。
でも〝外〟でいやらしい言葉を言われ、穴を掘って埋まりたくなるぐらいの羞恥を覚えた。
……なのに、そんな支配的な言われ方をされて、興奮してしまっている自分もいる。
亮の言葉を聞き、秀弥さんは微笑む。
「〝メッセージ〟はちゃんと受け取ってたよ。最初は腹立ったけど、『どんな奴だろう?』って考えるようになった。……っていうか、俺が指摘するまで『気づかれてない』って思ってた夕貴は、バカで可愛いな」
秀弥さんはそう言って私の顔を覗き込み、妖艶に笑うとポンポンと頭を撫でてくる。
「……ごめんなさい……」
彼の言うとおり、私はバカだ。
愚かで、これ以上ないぐらいアホで、あり得なくて、こんな事、誰にも相談できない。
誰にも打ち明けられず一人で悩んでいたから、二人から泳がされていた〝愚かな女〟だと自覚できずにいた。
秀弥さんも亮も、私の体越しに〝相手〟がいるのに気づいていた。
私だけが『バレていないはず』と思って、二人にいい顔をしてセックスし続けていた。最低だ。
「……どうしてこうなっちゃったんだろ……」
自己嫌悪、呆れ、失望……。あらゆるものが限界を超えた私は〝無〟になって呟いた。
――道を踏み外した。
法を犯した訳じゃないし、そこまで絶望を感じる事じゃないかもしれない。
本当の意味での近親相姦ではないし、秀弥さんに捨てられた訳でもない。
流された。それだけなのに、私は〝二股する最低な女〟に成り下がっていた。
秀弥さんは、ズン……と落ち込んでいる私の頭を撫でた。
「別にそこまで落ち込む事じゃないだろ。俺はこのまま結婚するつもりだし」
「……うん……」
確かにそうなんだけど……。
「『嫌われたくない』って思ってるからじゃないのか?」
その時、亮がボソッと呟いた。
ノロノロと彼を見ると、彼は溜め息をついて言う。
「夕貴はいつも自分を押し殺して、美佐恵さんのため、周りのために生きてるって、こないだ言っただろ? そうやって自分を殺して周りにいい顔してるのは、『嫌われたくない』って思いがあるからだよ」
(……その通りだ。私はこじらせ八方美人だ)
亮の言葉が胸の奥に染みこんでいく。
その時、秀弥さんが言った
「こいつ、会社でも八方美人だよ。『いい人』だけど、『仕事を押しつけやすい都合のいい奴』でもある」
「えっ」
周りにそう思われていたと思わなかったので、つい声を上げてしまった。
けれどよく考えてみると、思い当たる顔が一人、二人出てくる。
「で、男からは『押せばヤらせてくれそう』って思われてる。……ま、俺が牽制して守っていた訳だけど」
「……はぁ……」
また、大きな溜め息が漏れた。
けど……。
「……守ってくれてありがとう」
「おう」
秀弥さんにお礼を言うと、彼は優しく微笑んだ。
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