59 / 109
いつから夕貴と関係してたの?
しおりを挟む
「ずっと君と話したかったよ」
秀弥さんに言われ、亮はジッと彼を見つめてから言った。
「俺も、あんたには言いたい事、聞きたい事が山ほどある」
お互いよそ行きモードはやめ、本音で話すつもりでいるのが、口調で分かる。
(仕方がない。この直接対決の結末を見届けないと。二人の喧嘩を見たくないとか、傷付くのが嫌だとか言っていないで、私にはこの状況を見守る義務がある)
覚悟を決めた私は、深呼吸して水を飲んだ。
「亮くんはさ、いつから夕貴と関係してたの?」
「ごっ……、ふ」
覚悟を決めたばかりなのに、秀弥さんの直球すぎる言い方に激しく噎せてしまった。
ちょっとー!!
「あーあ、大丈夫かよ、夕貴」
すっかり〝素〟になった秀弥さんは、トントンと私の背中を叩いてくる。
「あ、ありがと……。だいじょぶ……」
私はゲホッゲホッと咳き込んだあと、咳払いをして喉を落ち着かせた。
亮はそんな私たちを冷めた目で見たあと、淡々と言う。
「夕貴を好きになったのは、初めて会った時からだ。俺が中一で、夕貴が中三の時。俺の恋は十一年続いている」
「へぇ、凄いな。俺は三年かな」
秀弥さんはいつもの調子を崩さずに言う。
と、亮はいきなりマウントをとりだした。
「あんたが夕貴と付き合い始めた頃には、俺は夕貴と深い関係になってた。夕貴が二十歳の時に処女を奪って、何回ヤッたか覚えてないけど……。今まで気付かなかったのか?」
うわああああああ……。
亮の敵対心も露わな言い方が忍びなくて、私はこの場から逃げ出したくなる。
(お願いだからやめて)
ギュッと目を閉じて俯くと、秀弥さんが私の膝をポンポンと叩いてきた。
「煽っても無駄だよ」
微笑んで言った秀弥さんの言葉を聞き、亮は微かに瞠目する。
「煽って俺を怒らせて本性を出させて、ご両親に『あんな男はやめたほうがいい』って言うつもりだった?」
秀弥さんはゆったりと笑いながら、亮を煽り始めた。
亮はしばらく秀弥さんを見つめていたけれど、やがて溜め息をついた。
「何が言いたいんだ?」
そう言った亮の目からは、ガンガン煽っていた時の熱は消えていた。
へたにやり込めようとしたら、逆に自分が火傷をすると分かったんだろう。
その時コーヒーが運ばれてきて、秀弥さんは「飲もうか」と声を掛け自らホットコーヒーを一口飲み、そのあと穏やかな顔で言った。
「聞いてほしいんだけど、俺は可能な限り亮くんと仲良くしたい」
亮は怪訝な顔をし、溜め息をついて尋ねる。
「……何が言いたいんだ?」
「俺は亮くんが夕貴を抱いてるところに興味があるよ」
「ぶふっ」
とんでもない事をサラッと言われ、私は激しくコーヒーを噴き出した。
「きたねーな、夕貴。ほら、口拭け」
秀弥さんは口元をコーヒーまみれにしている私の口を、紙ナプキンで拭う。
(噴き出させたの、あなたなんですが!)
そう思いつつ、私はじっとりと彼を睨む。
「あんた、寝取られ趣味なの?」
亮は困惑した顔で尋ねる。……確かにそう思っても仕方がない。
「いや、そうじゃない。独占欲は強いほうだ」
「じゃあなんで」
亮は秀弥さんの思考が理解できず、苛立っている。
「……んー、何でだろうな? 改めて聞かれると……」
秀弥さんはとぼけている訳ではなく、なぜなのか自分でもあまり分かっていないみたいだ。この人、割と感覚的に動くから……。
秀弥さんは少し考えたあとに言った。
「俺さ、今まで夕貴と寝てる男は自分だけだと思ってたんだ。夕貴はこの通りの性格で、肉食じゃないし、人を簡単に裏切る性格でもない。押しつけられた仕事を、残業してまで馬鹿丁寧にやる奴だし」
「優柔不断なんだよ」
「そう。優柔不断でコミュ障」
二人してひどい。
私は思わず真顔になって二人の顔を見比べる。
「そんな夕貴に、俺以外の男がいたと知って驚いた。普通に浮気されたならもっとキレてたと思うけど、相手が弟だと知って逆に興味が湧いた」
亮はうさんくさそうな表情で秀弥さんの話を聞いている。
「聞いた時にまず思ったのは『姉と弟ってどういう感じでヤッてんの?』だった。で、『見てみたい』って思ったんだ。俺は性癖のストライクゾーンが人より広い。寝取られの才能があるかは分からないけど興味はある。そんな感じかな」
隠さず言われ、亮は困惑した顔をしていた。
秀弥さんに言われ、亮はジッと彼を見つめてから言った。
「俺も、あんたには言いたい事、聞きたい事が山ほどある」
お互いよそ行きモードはやめ、本音で話すつもりでいるのが、口調で分かる。
(仕方がない。この直接対決の結末を見届けないと。二人の喧嘩を見たくないとか、傷付くのが嫌だとか言っていないで、私にはこの状況を見守る義務がある)
覚悟を決めた私は、深呼吸して水を飲んだ。
「亮くんはさ、いつから夕貴と関係してたの?」
「ごっ……、ふ」
覚悟を決めたばかりなのに、秀弥さんの直球すぎる言い方に激しく噎せてしまった。
ちょっとー!!
「あーあ、大丈夫かよ、夕貴」
すっかり〝素〟になった秀弥さんは、トントンと私の背中を叩いてくる。
「あ、ありがと……。だいじょぶ……」
私はゲホッゲホッと咳き込んだあと、咳払いをして喉を落ち着かせた。
亮はそんな私たちを冷めた目で見たあと、淡々と言う。
「夕貴を好きになったのは、初めて会った時からだ。俺が中一で、夕貴が中三の時。俺の恋は十一年続いている」
「へぇ、凄いな。俺は三年かな」
秀弥さんはいつもの調子を崩さずに言う。
と、亮はいきなりマウントをとりだした。
「あんたが夕貴と付き合い始めた頃には、俺は夕貴と深い関係になってた。夕貴が二十歳の時に処女を奪って、何回ヤッたか覚えてないけど……。今まで気付かなかったのか?」
うわああああああ……。
亮の敵対心も露わな言い方が忍びなくて、私はこの場から逃げ出したくなる。
(お願いだからやめて)
ギュッと目を閉じて俯くと、秀弥さんが私の膝をポンポンと叩いてきた。
「煽っても無駄だよ」
微笑んで言った秀弥さんの言葉を聞き、亮は微かに瞠目する。
「煽って俺を怒らせて本性を出させて、ご両親に『あんな男はやめたほうがいい』って言うつもりだった?」
秀弥さんはゆったりと笑いながら、亮を煽り始めた。
亮はしばらく秀弥さんを見つめていたけれど、やがて溜め息をついた。
「何が言いたいんだ?」
そう言った亮の目からは、ガンガン煽っていた時の熱は消えていた。
へたにやり込めようとしたら、逆に自分が火傷をすると分かったんだろう。
その時コーヒーが運ばれてきて、秀弥さんは「飲もうか」と声を掛け自らホットコーヒーを一口飲み、そのあと穏やかな顔で言った。
「聞いてほしいんだけど、俺は可能な限り亮くんと仲良くしたい」
亮は怪訝な顔をし、溜め息をついて尋ねる。
「……何が言いたいんだ?」
「俺は亮くんが夕貴を抱いてるところに興味があるよ」
「ぶふっ」
とんでもない事をサラッと言われ、私は激しくコーヒーを噴き出した。
「きたねーな、夕貴。ほら、口拭け」
秀弥さんは口元をコーヒーまみれにしている私の口を、紙ナプキンで拭う。
(噴き出させたの、あなたなんですが!)
そう思いつつ、私はじっとりと彼を睨む。
「あんた、寝取られ趣味なの?」
亮は困惑した顔で尋ねる。……確かにそう思っても仕方がない。
「いや、そうじゃない。独占欲は強いほうだ」
「じゃあなんで」
亮は秀弥さんの思考が理解できず、苛立っている。
「……んー、何でだろうな? 改めて聞かれると……」
秀弥さんはとぼけている訳ではなく、なぜなのか自分でもあまり分かっていないみたいだ。この人、割と感覚的に動くから……。
秀弥さんは少し考えたあとに言った。
「俺さ、今まで夕貴と寝てる男は自分だけだと思ってたんだ。夕貴はこの通りの性格で、肉食じゃないし、人を簡単に裏切る性格でもない。押しつけられた仕事を、残業してまで馬鹿丁寧にやる奴だし」
「優柔不断なんだよ」
「そう。優柔不断でコミュ障」
二人してひどい。
私は思わず真顔になって二人の顔を見比べる。
「そんな夕貴に、俺以外の男がいたと知って驚いた。普通に浮気されたならもっとキレてたと思うけど、相手が弟だと知って逆に興味が湧いた」
亮はうさんくさそうな表情で秀弥さんの話を聞いている。
「聞いた時にまず思ったのは『姉と弟ってどういう感じでヤッてんの?』だった。で、『見てみたい』って思ったんだ。俺は性癖のストライクゾーンが人より広い。寝取られの才能があるかは分からないけど興味はある。そんな感じかな」
隠さず言われ、亮は困惑した顔をしていた。
38
お気に入りに追加
289
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041



淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる