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純愛モンスター
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「『うちに勉強しに来ないか』って誘われて、愚かな私は舞い上がったわ。亮から誘われたのは初めてだったもの。……でも家にお邪魔してすぐに理解した。現れたのは、苦しみなんて知らなそうな、おっとりとした巨乳で美人なお姉さん。一目見て亮が姉を女として想っているのがすぐに分かった。私たちは精神で繋がっていると思ったのに、亮はあんな分かりやすい〝女〟に惚れていたのよ。……屈辱だった」
高瀬は昨日の事のように悲しみ、涙を流した。
女は女に嫉妬する。
高瀬は夕貴を見て、その外見や身体的特徴で彼女を判断したんだろうか。
夕貴の顔の作りがもう少し違っていて、Aカップだったら高瀬は嫉妬していなかった? あり得ない。
結局こいつは、亮くんの心を奪った相手が誰であっても憎んだ。
それに多少の〝美人で巨乳〟〝姉〟というエッセンスが加わり、憎みやすくなっただけだ。
「……亮くんは夕貴の外見が〝そう〟だったから惚れたと思った?」
尋ねると、高瀬は嫌そうな顔をして溜め息をついた。
「勿論、他の要素もあったんでしょう。私は夕貴さんをよく知らないし、亮と彼女がどんな会話をしてどう過ごしているかなんて知らない」
「夕貴をよく知らないのに憎んだ?」
尋ねると、高瀬はせせら笑った。
「知らないの? 人は相手をよく知らなくても憎めるのよ。昨今のニュースを見れば、会った事のないネット上の人物を執拗に憎めるって分かるでしょう? 愛するためにはその人を知らないといけないけど、憎むのは簡単なのよ」
そこまでちゃんと理解しているとは驚きだ。
「分かっているのに、どうして?」
尋ねたが、高瀬は首を横に振って嘲笑した。
「あなた勘違いしてない? 難関大学に入った人が全員罪を犯さず、人を憎まないとでも? 私はまともな家庭で育っていない。裕福な家庭に生まれて、お金には困らなかったし最高の教育を受けたけど、私ほど不幸な女はいないわ。……一般家庭生まれの人のほうが、家族の関係が密接で幸せなんじゃない? 私はあの女みたいに恵まれていないのよ」
「夕貴は恵まれているとは言えないと思うけど」
「あの人の都合なんて知らない。私が夕貴さんについて知りたがるとでも思ってるの? あの二人を守るつもりで話をつけに来たんでしょうけど、余計な情報を吹き込んで同情を買おうとしても無駄よ」
高瀬の怒りが爆発しそうなのを感じ、俺は日本酒を一口飲み、ドリンクメニューを手にし、あえて間を空ける事で彼女の怒りを鎮めさせた。
彼女は大きな溜め息をつき、また猪口に入っている日本酒を呷り、手酌する。
「俺は二人の代理のつもりでここにいる。夕貴は俺が君と話す事を知ってるけど、亮くんは知らない。後日、彼から何か言われたとしても、俺と夕貴はノータッチだ」
高瀬は黙って頷いた。
「君は亮くんに何を望んでる?」
彼女は深く息を吸ってから吐き、腕を組む。
「見当はついてるんじゃない? 彼とやり直したい。ちゃんと私の話を聞いてほしい。私の気持ちを伝えて、亮を本当に想っているのは私だけだって知ってほしい」
「……彼は望んでると思う?」
尋ねると、高瀬は溜め息をついて俺を睨んだ。
「……嫌な男」
性格がいい男だという自負はないので、俺は褒め言葉をもらったつもりで微笑んだ。
「……傷つけた自覚はある。……でも私だって亮に傷つけられた。彼が夕貴さんを想ってるのを大人しく見守っていたら、私の想いは一生叶わない。なら一回ぐらい、いい思いをしたっていいじゃない」
「レイプしたって自覚はある?」
静かに尋ねると、高瀬は表情を強張らせた。
「……違う。レイプなんかじゃない。私は亮を誰よりも愛してる。先輩たちは遊びだったけど、私だけは気持ちを込めて抱かれた」
「弱みを握って言う事を聞かせて、抵抗しない相手に跨がるのは〝抱かれた〟って言わないと思うけど」
「亮を脅したのは先輩たちだもの。私は関係ない」
高瀬は頑なに否定しているが、その表情には焦燥感が溢れていた。
「でも、亮くんに姉がいるって話したのは君だろ? 田町楓はその情報を聞いて、『その気になればいつでも姉を強姦できる』と亮くんを脅した。君が田町に夕貴を売らなければ、彼はレイプされなかった」
微笑んで言うと、高瀬は深呼吸して興奮を落ち着かせていく。
「君と亮くんの気持ちには、大きな隔たりがあるよ。君は加害者で、亮くんの一生のトラウマだ。一時は親友と思っていただけに余計に傷は深い。君と顔を合わせれば亮くんのプライドがズタズタに傷付くから、彼は可能な限り会いたくないと思ってる。……なのに君は、自分の感情を純愛だと思い込んでいる。物凄いズレだ」
俺は純愛モンスターに向かって、シニカルに笑いかけた。
高瀬は昨日の事のように悲しみ、涙を流した。
女は女に嫉妬する。
高瀬は夕貴を見て、その外見や身体的特徴で彼女を判断したんだろうか。
夕貴の顔の作りがもう少し違っていて、Aカップだったら高瀬は嫉妬していなかった? あり得ない。
結局こいつは、亮くんの心を奪った相手が誰であっても憎んだ。
それに多少の〝美人で巨乳〟〝姉〟というエッセンスが加わり、憎みやすくなっただけだ。
「……亮くんは夕貴の外見が〝そう〟だったから惚れたと思った?」
尋ねると、高瀬は嫌そうな顔をして溜め息をついた。
「勿論、他の要素もあったんでしょう。私は夕貴さんをよく知らないし、亮と彼女がどんな会話をしてどう過ごしているかなんて知らない」
「夕貴をよく知らないのに憎んだ?」
尋ねると、高瀬はせせら笑った。
「知らないの? 人は相手をよく知らなくても憎めるのよ。昨今のニュースを見れば、会った事のないネット上の人物を執拗に憎めるって分かるでしょう? 愛するためにはその人を知らないといけないけど、憎むのは簡単なのよ」
そこまでちゃんと理解しているとは驚きだ。
「分かっているのに、どうして?」
尋ねたが、高瀬は首を横に振って嘲笑した。
「あなた勘違いしてない? 難関大学に入った人が全員罪を犯さず、人を憎まないとでも? 私はまともな家庭で育っていない。裕福な家庭に生まれて、お金には困らなかったし最高の教育を受けたけど、私ほど不幸な女はいないわ。……一般家庭生まれの人のほうが、家族の関係が密接で幸せなんじゃない? 私はあの女みたいに恵まれていないのよ」
「夕貴は恵まれているとは言えないと思うけど」
「あの人の都合なんて知らない。私が夕貴さんについて知りたがるとでも思ってるの? あの二人を守るつもりで話をつけに来たんでしょうけど、余計な情報を吹き込んで同情を買おうとしても無駄よ」
高瀬の怒りが爆発しそうなのを感じ、俺は日本酒を一口飲み、ドリンクメニューを手にし、あえて間を空ける事で彼女の怒りを鎮めさせた。
彼女は大きな溜め息をつき、また猪口に入っている日本酒を呷り、手酌する。
「俺は二人の代理のつもりでここにいる。夕貴は俺が君と話す事を知ってるけど、亮くんは知らない。後日、彼から何か言われたとしても、俺と夕貴はノータッチだ」
高瀬は黙って頷いた。
「君は亮くんに何を望んでる?」
彼女は深く息を吸ってから吐き、腕を組む。
「見当はついてるんじゃない? 彼とやり直したい。ちゃんと私の話を聞いてほしい。私の気持ちを伝えて、亮を本当に想っているのは私だけだって知ってほしい」
「……彼は望んでると思う?」
尋ねると、高瀬は溜め息をついて俺を睨んだ。
「……嫌な男」
性格がいい男だという自負はないので、俺は褒め言葉をもらったつもりで微笑んだ。
「……傷つけた自覚はある。……でも私だって亮に傷つけられた。彼が夕貴さんを想ってるのを大人しく見守っていたら、私の想いは一生叶わない。なら一回ぐらい、いい思いをしたっていいじゃない」
「レイプしたって自覚はある?」
静かに尋ねると、高瀬は表情を強張らせた。
「……違う。レイプなんかじゃない。私は亮を誰よりも愛してる。先輩たちは遊びだったけど、私だけは気持ちを込めて抱かれた」
「弱みを握って言う事を聞かせて、抵抗しない相手に跨がるのは〝抱かれた〟って言わないと思うけど」
「亮を脅したのは先輩たちだもの。私は関係ない」
高瀬は頑なに否定しているが、その表情には焦燥感が溢れていた。
「でも、亮くんに姉がいるって話したのは君だろ? 田町楓はその情報を聞いて、『その気になればいつでも姉を強姦できる』と亮くんを脅した。君が田町に夕貴を売らなければ、彼はレイプされなかった」
微笑んで言うと、高瀬は深呼吸して興奮を落ち着かせていく。
「君と亮くんの気持ちには、大きな隔たりがあるよ。君は加害者で、亮くんの一生のトラウマだ。一時は親友と思っていただけに余計に傷は深い。君と顔を合わせれば亮くんのプライドがズタズタに傷付くから、彼は可能な限り会いたくないと思ってる。……なのに君は、自分の感情を純愛だと思い込んでいる。物凄いズレだ」
俺は純愛モンスターに向かって、シニカルに笑いかけた。
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