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落ち度
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俺の知らないところで化け物のネットワークができている間、俺は愚かにも高瀬を利用してしまった。
綺麗な夕貴が気になって仕方がなく、俺を意識してほしくて、高瀬を自宅に招待してしまった。
『もし良かったら、今度の休みにうちに勉強しに来ないか?』
夕貴を気にする俺は、他の女性への気持ちに無頓着すぎた。
――夕貴以外はどうだっていい。
そんな想いがあったから、自分に告白してきてくれた高瀬を自宅に誘うなど、勘違いを助長させる事をしてしまったのだ。
もう少し恋心を理解する気持ちがあれば、フッた相手に必要以上に関わらないほうが、相手のためになると分かっただろうに。
一応、そう考えてはいたものの、高瀬から『これからも友達でいてほしい』と言われ、彼女の言葉に甘えてしまったのだ。
そして俺は高瀬を自宅に招き、夕貴に会わせてしまった。
『こんにちは』
来客を見にきた夕貴は、高瀬を見て感じよく微笑む。
誰が見ても〝普通の姉〟で、俺の思い人とはバレない……はずだった。
『えー? お姉さん?』
高瀬は夕貴を見て思わず声を上げたあと、俺に囁いてきた。
『綺麗な人だね。胸も大きくて色っぽい。血が繋がってないんでしょ? あんな人が四六時中側にいて、変な気持ちにならないの?』
その囁き声は、夕貴の耳には届かなかった。
だが俺は秘めていた想いを言い当てられた気持ちになり、とっさに『バカッ』と高瀬を窘めていた。
高瀬が何を言ったか夕貴にはバレなかったが、カマを掛けられた俺は、まんまと思い人を知られてしまった。
中学二年生の冬休み前、高瀬に言われた。
『前に亮の家にお邪魔した時、勉強を教えてくれるつもりで誘ってくれたと思っていたけど、違ったよね。私、分かっちゃった』
忘れていた頃にそう言われ、胸がドキッと嫌な音を立てて鳴った。
『亮の好きな人って、お姉さんだよね?』
言い当てられたが、俺は努めて顔に出さないよう心がけた。
『違う』
『じゃあ、誰かな? 私は誰よりも亮の側にいて、いつも行動を共にしている自負がある。プライベートの時間にでも、どこかで綺麗なお姉さんに会った? 亮って〝年上が好み〟って言ってたよね?』
そう言われ、ギクリとする。
高瀬はいつもニコニコしていて、何を言っても『へぇ、そうなんだ』という態度を貫いていた。
好みの女性を聞かれた時もそんな調子だったので、慎重に聞き出されていたと自覚できずにいた。
そのようにして、愚かにも俺は、知らないうちに情報を小出しにしてしまっていた。
高瀬は遅効性の毒のような女だ。
ジワジワと俺を侵食し、気がついた時は劇毒となって苦しめてくる。
その時はまだ高瀬のヤバさに気づきかけていた頃で、まだ挽回できると思い込んでいた。
『私の勘違いでなかったら、亮は私を家に連れていってお姉さんの反応を見ていたよね? 勉強中、亮は用事をつけては部屋を出ていた。おおかた、お姉さんの様子でも見ていたんじゃない?』
図星を突かれ、俺はとっさに目を逸らしてしまった。
『あーあ、傷付くな。私、これでも亮に告白したんですけど』
『……ごめん』
ここで否定しても、高瀬をさらに傷つけ、彼女への印象を悪くするだけだ。
観念した俺は素直に謝り、頭を下げた。
しばらく高瀬は何も言わなかったが、溜め息をついて俺の肩をトンと叩く。
『やめてよ。私たち、こんな事で崩れる仲じゃないでしょ?』
傷付いたと声高に言った直後、それまでの態度が嘘のように優しくする。
DV加害者のやり方だが、罪悪感を抱いた俺はそれに気づけずにいた。
『……ありがとう』
いつのまにか、高瀬は〝心を許せる相手〟から〝支配欲を見せてくる女友達〟に変わっていった。
だが豹変した訳ではなく少しずつ本性を表していったので、罪悪感に駆られた俺は、自分が高瀬に洗脳され、支配されている事に気づけずにいた。
その間も田町からのアプローチは続き、胃が痛くなりそうなほどのストレスを抱えながら日々を過ごし、――――〝その日〟を迎えた。
綺麗な夕貴が気になって仕方がなく、俺を意識してほしくて、高瀬を自宅に招待してしまった。
『もし良かったら、今度の休みにうちに勉強しに来ないか?』
夕貴を気にする俺は、他の女性への気持ちに無頓着すぎた。
――夕貴以外はどうだっていい。
そんな想いがあったから、自分に告白してきてくれた高瀬を自宅に誘うなど、勘違いを助長させる事をしてしまったのだ。
もう少し恋心を理解する気持ちがあれば、フッた相手に必要以上に関わらないほうが、相手のためになると分かっただろうに。
一応、そう考えてはいたものの、高瀬から『これからも友達でいてほしい』と言われ、彼女の言葉に甘えてしまったのだ。
そして俺は高瀬を自宅に招き、夕貴に会わせてしまった。
『こんにちは』
来客を見にきた夕貴は、高瀬を見て感じよく微笑む。
誰が見ても〝普通の姉〟で、俺の思い人とはバレない……はずだった。
『えー? お姉さん?』
高瀬は夕貴を見て思わず声を上げたあと、俺に囁いてきた。
『綺麗な人だね。胸も大きくて色っぽい。血が繋がってないんでしょ? あんな人が四六時中側にいて、変な気持ちにならないの?』
その囁き声は、夕貴の耳には届かなかった。
だが俺は秘めていた想いを言い当てられた気持ちになり、とっさに『バカッ』と高瀬を窘めていた。
高瀬が何を言ったか夕貴にはバレなかったが、カマを掛けられた俺は、まんまと思い人を知られてしまった。
中学二年生の冬休み前、高瀬に言われた。
『前に亮の家にお邪魔した時、勉強を教えてくれるつもりで誘ってくれたと思っていたけど、違ったよね。私、分かっちゃった』
忘れていた頃にそう言われ、胸がドキッと嫌な音を立てて鳴った。
『亮の好きな人って、お姉さんだよね?』
言い当てられたが、俺は努めて顔に出さないよう心がけた。
『違う』
『じゃあ、誰かな? 私は誰よりも亮の側にいて、いつも行動を共にしている自負がある。プライベートの時間にでも、どこかで綺麗なお姉さんに会った? 亮って〝年上が好み〟って言ってたよね?』
そう言われ、ギクリとする。
高瀬はいつもニコニコしていて、何を言っても『へぇ、そうなんだ』という態度を貫いていた。
好みの女性を聞かれた時もそんな調子だったので、慎重に聞き出されていたと自覚できずにいた。
そのようにして、愚かにも俺は、知らないうちに情報を小出しにしてしまっていた。
高瀬は遅効性の毒のような女だ。
ジワジワと俺を侵食し、気がついた時は劇毒となって苦しめてくる。
その時はまだ高瀬のヤバさに気づきかけていた頃で、まだ挽回できると思い込んでいた。
『私の勘違いでなかったら、亮は私を家に連れていってお姉さんの反応を見ていたよね? 勉強中、亮は用事をつけては部屋を出ていた。おおかた、お姉さんの様子でも見ていたんじゃない?』
図星を突かれ、俺はとっさに目を逸らしてしまった。
『あーあ、傷付くな。私、これでも亮に告白したんですけど』
『……ごめん』
ここで否定しても、高瀬をさらに傷つけ、彼女への印象を悪くするだけだ。
観念した俺は素直に謝り、頭を下げた。
しばらく高瀬は何も言わなかったが、溜め息をついて俺の肩をトンと叩く。
『やめてよ。私たち、こんな事で崩れる仲じゃないでしょ?』
傷付いたと声高に言った直後、それまでの態度が嘘のように優しくする。
DV加害者のやり方だが、罪悪感を抱いた俺はそれに気づけずにいた。
『……ありがとう』
いつのまにか、高瀬は〝心を許せる相手〟から〝支配欲を見せてくる女友達〟に変わっていった。
だが豹変した訳ではなく少しずつ本性を表していったので、罪悪感に駆られた俺は、自分が高瀬に洗脳され、支配されている事に気づけずにいた。
その間も田町からのアプローチは続き、胃が痛くなりそうなほどのストレスを抱えながら日々を過ごし、――――〝その日〟を迎えた。
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