未来の夫が破滅するので、ハッピーエンドのために運命を変えます~竜姫は竜王子と魔導皇帝に溺愛される~

臣桜

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三人での結婚式

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 祭壇まで真っ直ぐ続く赤い布の向こうには、礼装に身を包んだライオットとルドガーがいる。

 ライオットは黒を基調とした金と赤の装飾。
 ルドガーは白を基調とした、金と青の装飾。

 対にも見える二人の花婿に、参列席にいる貴族の令嬢たちもうっとりとした顔をしていた。

 やがて花嫁は祭壇に辿り着き、シーラのヴェール越しに三人は視線を交わす。

 それから式は滞りなく進み、三人は指輪の交換をする事となった。

 三人の指輪は四つのリングを重ねると一本の指輪となるように、流線の美しいデザインだ。
 上下の太い部分はライオットとルドガーのもので、中央にあるダイヤモンド入りの華奢なデザイン二本はシーラの物だ。

 まずライオットがシーラの薬指に指輪を通し、それからルドガーがシーラにもう一本の指輪を通した。

 リングが重なった事により、シーラの薬指では二つの石が大きく輝いている。

 次にシーラがライオットの薬指に指輪を嵌め、ルドガーの指にも同様にする。
 ライオットとルドガーの指輪のデザインは、似ているようで微妙に違っている。

 二人のシーラへの想いのかたちが微妙に異なるように、四つの指輪は統一されたデザインでありながら、すべて異なる形をしていた。

「それでは、誓いのキスを」

 司祭に促され、ライオットとルドガーは視線を交わして微笑み合ったあと、二人でシーラのヴェールを上げた。
 七色の光が差し込む中、薄らと化粧を施されたシーラの美貌が露わになる。

「あぁ……綺麗だな」

 思わずライオットが呟き、ルドガーも感極まったように微笑んだ。

 シーラはほんのり頬を染め、二人に向かって目を閉じて少し顎を上げた。
 彼女の顔を見て二人はまた笑い合い、シーラの肩にそれぞれ手を当ててゆっくりと顔を近付ける。

 ほんの少し、シーラの顔が震えた。

 この世界に戻ってきて何度か練習したけれど、上手くできるのだろうか?

 二人の顔が近付いてくる気配がし、そのあと――ライオットとルドガーの唇が同時にシーラに訪れた。

 三人で結婚するのなら、誓いのキスはどうしても三人一緒がいいと二人が主張していたのだ。

 そのあと、誰か一人の唇がふんわりと押しつけられた。

 クスッと笑った声から、ライオットなのだと思う。

 続いて訪れた唇は、きっとルドガーだ。

「終わったよ」

 唇が離れる間際にそっと囁かれ、シーラは目を開けた。

 目の前には夫となる二人が微笑んでいて、自分たちはもう指輪の交換も誓いのキスも終えてしまったのだと思うと、不思議な心地になる。

 結婚証書にそれぞれがサインをすると、司祭から祝福を受けた。

「どうか神竜がいつもあなた達三人を見守りますように。竜と空と大地の加護があらんことを」

 シーラは左右に立つ二人と腕を組み、ヴァージンロードを歩いて退場してゆく。

 扉が開いた時、カリューシア大聖堂の鐘が思いきり鳴らされた。

 遠く遠く、ガズァルとセプテアの大地にまで響くのではという音色が、カリューシアの霊峰から天空高くに鳴り渡る。

 それに呼応するかのように、碧空には竜の影が多くあった。

 祝福の竜とされる白竜ナーガの姿もあれば、ライオットの相棒である黒竜ベガの姿もある。

 地上にはカリューシアの竜官や巫女たちや騎士団、またガズァルの騎士団に空に竜を待機させた竜騎士。
 そしてセプテアの騎士団と魔導士団も整列していた。

 ドルウォート将軍の姿もあり、別の世界にいた時見かけた面々もある。しかし皆一様に、この上なく幸せそうな顔をしている。

「シーラ。俺はずっとこの日を夢見ていた」

 花でたっぷりと飾り付けられた馬車に乗り込み、ライオットが嬉しそうに言う。

「ルドの事は大好きだが、絶対にシーラを譲りたくないと思っていた。だから、こういう結末を選べてとても嬉しいんだ」

「私も同じ気持ちだ。私が唯一恐れるのは、シーラとライを失う事だからな。それを永遠に手に入れたんだ。これから迷いなく進める」

 二人とも左右からシーラに腕を回し、ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる。

「……それで、私はガズァルとセプテアを行き来すれば良いのですね? 決まった家がないようで、少し心許ないですが……」

「まぁ、それはそうなるが……。移動が大変なら、いずれレティ河近くの土地に離宮を建ててもいいかもな?」

「それはいいな。もしライさえ構わないのなら、セプテア側の土地が余っている所に建ててもいいかもしれない。じっくり三人で話し合って、三人好みの離宮を建てよう」

「検討しようか。シーラが安全に過ごせて、俺も頻繁に通える距離なら構わない」

 シーラを挟んで二人はどんどん話し合い、意気投合した二人にシーラも思わず笑い出していた。
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