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お留守番 編
第二秘書の本音
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「さしでがましいようですが、素敵な親子で私も安心しました」
三人の視線を集めた彼は、口を挟んで申し訳なさそうにしながらも、話を続けた。
「私は大学を卒業してから三日月グループに勤めておりまして、七年前、三日月が二十五歳の時から秘書をしております」
思っていた以上に上条さんが涼さんと長い付き合いだと知り、私たちは目を丸くする。
「ですから、彼の事は上司でありながらも弟のように感じていました。秘書は仕事だけでなく、プライベートにも立ち入る場合があります。私も第一秘書もこの家の鍵を持っていますし、今後恵さんがここに住まわれるなら、朝起きた時に私が家にいる……なんて事もあるかと思います」
「それは……、仕事なので」
恵は返事をしつつ、ペコリと会釈をする。
「三日月のプライベートを垣間見ていて、彼はあの通りの人柄で御曹司なので、……あまりこの場で言う事ではないかと思いますが、非常に女性からモテました。彼は自分からは言わないでしょうけど、どうしても三日月と結婚したいと強く願う女性から付きまとわれたり、周囲の誤解を招く噂を流されたりなど、痛い目にも遭っていました」
(わあ……)
確かにイケメン御曹司で性格もいい彼なら、沼ったら最後だろう。
芸能人よりは身近に感じるかもしれないから、「頑張れば自分を見てくれるかもしれない」と思う女性がいてもおかしくない。
「そういう経験を経て、三日月は女性全般に対して冷たい態度をとるようになりました。先ほどお母様とご挨拶していた時は、とても柔らかな対応をしていましたし、恵さんに対しても包み込むような愛情の示し方をしているかと思います」
チラッと恵を見ると、とても真剣な顔で上条さんの話を聞いていた。
「偽りのない態度ですから、ここにいる皆さん三人とも、三日月を優しい男性と思われるかと思います。……ですが会社では女性社員に一切の期待を持たせないよう、徹底して一線を引いていますし、パーティーなどでも表向きの笑顔は見せますが、個人的に誰かに心を開く事は滅多にありません。社長夫妻も、本人の希望で『結婚する気持ちになるまでは、無理に見合い話などを持ち込まない』とお約束していまして、周囲からは〝決して手に入らない高嶺の花〟扱いをされてきました」
彼がスーパー御曹司で魅力的な人なのは分かっていたけれど、そこまで色んな人に想われ、かつ涼さん自身も誰も欲していなかったと改めて知った。
「……ハードルを上げてしまったようで恐縮ですが、そんな三日月がある日、親友の篠宮さんとその彼女さんとランドに行ってくると言ったので、私は『いい息抜きになればいいな』と思っておりました。……なのですが、連休が終わったら『結婚すると思う』とウキウキして言い始めましたので、どこかに頭でもぶつけたのかと心配しまして……」
最後の言葉を聞き、私は「ぶふっ」と噴き出した。
確かに私たちは涼さんに〝温厚で優しくて、人の出来ている御曹司〟という印象しか持っていないけれど、そうじゃない面を七年も知っている上条さんからすれば、青天の霹靂だろう。
「……ですから、ある意味、申し訳ないながら『騙されていないか』と心配しておりました。三日月は酸いも甘いもかみ分けた男ですから、そう簡単に女性に騙されない事は分かっております。……ですが出会って数日であんなにも人が変わったような態度をとるなんて……、…………恋って怖いですね…………」
上条さんは、秘書モードを忘れてそうな雰囲気でしみじみと言う。
「……な、なんかすいません……」
恵は申し訳なさそうな顔をし、ペコペコと頭を下げている。
「いえ! 私も余計な事を申し上げて、大変申し訳ございません。こんな事が三日月に知れたなら、大目玉を食らいますね……」
「大丈夫です! 黙ってます。貴重なお話を聞かせてくださって、ありがとうございます」
私はグッとサムズアップして頷いてみせる。
「ありがとうございます。……そういうわけで、秘書として、兄のような立場として心配していたものですから、今日実際に恵さんとそのお母様にお会いして『大丈夫だ』と確信できて良かった……、と申し上げたかったのです」
秘書のOKをもらえて、恵はホッとしたように息を吐く。
そこで、佳苗さんが尋ねた。
「三日月さん、具体的にどんな感じでウキウキしていたんですか?」
尋ねられた上条さんは、呆れたような表情で笑う。
「……三日月は一部の女性に〝凍土の帝王〟と呼ばれるぐらいのクールさを誇っていたのですが、……あれは〝糖度の帝王〟ですね。スイートですよ。……何もないのに気持ち悪いぐらいニコニコして、休憩時間はイヤフォンもしていないのにリズムを取りだすんですよ。何があっても動じない第一秘書も、信じられないものを見ている顔をしていましたし、私も正直『気持ち悪い』と思っていました」
「あらぁ……」
佳苗さんはニヤニヤし、私もニヤニヤしている。
というか、上条さん、結構歯に衣着せないタイプだな。面白い。
恵はどういう反応をしたらいいか困っていて、クッションを抱えていた。
三人の視線を集めた彼は、口を挟んで申し訳なさそうにしながらも、話を続けた。
「私は大学を卒業してから三日月グループに勤めておりまして、七年前、三日月が二十五歳の時から秘書をしております」
思っていた以上に上条さんが涼さんと長い付き合いだと知り、私たちは目を丸くする。
「ですから、彼の事は上司でありながらも弟のように感じていました。秘書は仕事だけでなく、プライベートにも立ち入る場合があります。私も第一秘書もこの家の鍵を持っていますし、今後恵さんがここに住まわれるなら、朝起きた時に私が家にいる……なんて事もあるかと思います」
「それは……、仕事なので」
恵は返事をしつつ、ペコリと会釈をする。
「三日月のプライベートを垣間見ていて、彼はあの通りの人柄で御曹司なので、……あまりこの場で言う事ではないかと思いますが、非常に女性からモテました。彼は自分からは言わないでしょうけど、どうしても三日月と結婚したいと強く願う女性から付きまとわれたり、周囲の誤解を招く噂を流されたりなど、痛い目にも遭っていました」
(わあ……)
確かにイケメン御曹司で性格もいい彼なら、沼ったら最後だろう。
芸能人よりは身近に感じるかもしれないから、「頑張れば自分を見てくれるかもしれない」と思う女性がいてもおかしくない。
「そういう経験を経て、三日月は女性全般に対して冷たい態度をとるようになりました。先ほどお母様とご挨拶していた時は、とても柔らかな対応をしていましたし、恵さんに対しても包み込むような愛情の示し方をしているかと思います」
チラッと恵を見ると、とても真剣な顔で上条さんの話を聞いていた。
「偽りのない態度ですから、ここにいる皆さん三人とも、三日月を優しい男性と思われるかと思います。……ですが会社では女性社員に一切の期待を持たせないよう、徹底して一線を引いていますし、パーティーなどでも表向きの笑顔は見せますが、個人的に誰かに心を開く事は滅多にありません。社長夫妻も、本人の希望で『結婚する気持ちになるまでは、無理に見合い話などを持ち込まない』とお約束していまして、周囲からは〝決して手に入らない高嶺の花〟扱いをされてきました」
彼がスーパー御曹司で魅力的な人なのは分かっていたけれど、そこまで色んな人に想われ、かつ涼さん自身も誰も欲していなかったと改めて知った。
「……ハードルを上げてしまったようで恐縮ですが、そんな三日月がある日、親友の篠宮さんとその彼女さんとランドに行ってくると言ったので、私は『いい息抜きになればいいな』と思っておりました。……なのですが、連休が終わったら『結婚すると思う』とウキウキして言い始めましたので、どこかに頭でもぶつけたのかと心配しまして……」
最後の言葉を聞き、私は「ぶふっ」と噴き出した。
確かに私たちは涼さんに〝温厚で優しくて、人の出来ている御曹司〟という印象しか持っていないけれど、そうじゃない面を七年も知っている上条さんからすれば、青天の霹靂だろう。
「……ですから、ある意味、申し訳ないながら『騙されていないか』と心配しておりました。三日月は酸いも甘いもかみ分けた男ですから、そう簡単に女性に騙されない事は分かっております。……ですが出会って数日であんなにも人が変わったような態度をとるなんて……、…………恋って怖いですね…………」
上条さんは、秘書モードを忘れてそうな雰囲気でしみじみと言う。
「……な、なんかすいません……」
恵は申し訳なさそうな顔をし、ペコペコと頭を下げている。
「いえ! 私も余計な事を申し上げて、大変申し訳ございません。こんな事が三日月に知れたなら、大目玉を食らいますね……」
「大丈夫です! 黙ってます。貴重なお話を聞かせてくださって、ありがとうございます」
私はグッとサムズアップして頷いてみせる。
「ありがとうございます。……そういうわけで、秘書として、兄のような立場として心配していたものですから、今日実際に恵さんとそのお母様にお会いして『大丈夫だ』と確信できて良かった……、と申し上げたかったのです」
秘書のOKをもらえて、恵はホッとしたように息を吐く。
そこで、佳苗さんが尋ねた。
「三日月さん、具体的にどんな感じでウキウキしていたんですか?」
尋ねられた上条さんは、呆れたような表情で笑う。
「……三日月は一部の女性に〝凍土の帝王〟と呼ばれるぐらいのクールさを誇っていたのですが、……あれは〝糖度の帝王〟ですね。スイートですよ。……何もないのに気持ち悪いぐらいニコニコして、休憩時間はイヤフォンもしていないのにリズムを取りだすんですよ。何があっても動じない第一秘書も、信じられないものを見ている顔をしていましたし、私も正直『気持ち悪い』と思っていました」
「あらぁ……」
佳苗さんはニヤニヤし、私もニヤニヤしている。
というか、上条さん、結構歯に衣着せないタイプだな。面白い。
恵はどういう反応をしたらいいか困っていて、クッションを抱えていた。
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