【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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救出後 編

自分を責めるのをやめようか

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「尊から連絡。無事に朱里ちゃんを助けたって」

「え…………」

 立て続けに色んな情報を聞かされた私は混乱し、彼の言った言葉を理解できずにいる。

 涼さんはスマホを置き、私の両肩に手をのせ、しっかり目を見つめて言う。

「朱里ちゃんは無事だ」

 そう言われ、私は無言でコクコクと頷く。

 けれど自分が原因で朱里を危険な目に遭わせたのは間違いないので、気持ちの整理がなかなかつけられない。

「犯人は朱里ちゃんの元交際相手の田村昭人と、その仲間。尊が突撃して朱里ちゃんを助け出し、あとは警察に任せている。朱里ちゃんは軽い怪我を負ったみたいで、尊と一緒にこの病院に向かっているそうだ」

「田村……」

 その名前を聞き、私は胸の奥に黒い火を灯す。

 昔から気に食わない奴だった。

 表向きはお洒落で何をやるにも器用にこなす人と見せかけておいて、朱里からの相談を聞けばすぐにモラハラクズ男だと分かった。

 朱里は学生時代から『私が悪いんだと思うし』と言って、決して田村を責めなかった。

 責めて『こういう所を直してほしい』と求めるほど、あいつに興味を持っていなかったんだと思う。

 だけど大切な親友が雑に扱われるのを見るしかできないのは、とても苦痛だった。

『早く別れればいいのに』と思いながら過ごし、とうとう田村が朱里をフッた時は、『田村のくせに』と思いながらもやっと朱里が解放された事を一人で喜んだ。

 そして篠宮さんが現れ、『ずっと朱里を想っていた彼なら……』と親友を任せ、自分も涼さんに出会って女性としての幸せを掴もうとした時だった。

【なあ、中村。朱里とやり直したいんだけど、仲を取り持ってくれないか?】

 田村の連絡先はすべてブロックしたはずなのに、新しくスマホを買い換えたあいつは私にSMSを送ってきた。

 ――本当に図々しい。

 怒りを抱いた私は、朱里を守るために当然断った。

【さんざん朱里を傷つけて、自分からフッておいて何を言ってるの? 生まれ変わってやり直してこい!】

 私はそうメッセージを送ったあと、田村の新しい連絡先をブロックした。

 その時はそれで終わったと思っていたのに、まさかこんな事になるとは思わなかった。

「……私、田村からメッセージを受け取っていたんです。性懲りもなく朱里とやり直したいって言ったから、腹が立って捨て台詞を言ってブロックしました。……それで逆上したのかな」

 自分の選択がこの最悪な状況を招いたと言っても過言ではない。

「恵ちゃん、自分を責めるのをやめようか。……恵ちゃんは朱里ちゃんを襲ってほしくて田村にメッセージを送ったわけじゃないだろ?」

「そんなわけありません!」

 私は顔を上げ、潤んだ目で涼さんを見つめる。

「ならいいじゃないか。君は朱里ちゃんを守ろうとしただけなのに、相手は違う受け取り方をして犯行に及んだ。たとえそのメッセージを無視したとしても、田村は同じ行動をしたと思う。タガが外れた奴は、一歩踏みとどまって自分の思考や行動を鑑みるなんてしないんだ」

 涼さんに言われ、「確かに」とは思う。

「……でも、そもそも私が……」

 言いかけた時、涼さんはギュッと私の手を握ってきた。

「俺が恵ちゃんの立場だとしよう。尊に良くない元カノがいたとして、連絡がつかないから俺に連絡をして『仲を取り持ってほしい』と言われたとする。勿論、断るよ。尊には朱里ちゃんがいるし、邪魔するやつの手助けなんてしたくない。……当然だろ?」

 尋ねられ、私はコクンと頷く。

「それでその酷い元カノが尊や朱里ちゃんを加害しようとした。……誰が悪い?」

「……元カノ」

 小さな声で言うと、涼さんは「そうだね」と私の頭を撫でてきた。

「尊を守ろうと思って元カノを突っぱねた俺は悪い?」

 確認され、私は首を左右に振った。

「ほとんどの人は俺と同じ意見を言うと思う。一部、極端な考えを持つ人はいるけど、それは放っておこう。……でも恵ちゃんが責任を感じる気持ちは分かる。けど、朱里ちゃんは無事だったし、彼女が君を責めると思う?」

 優しく丁寧に尋ねられ、私はまた首を横に振った。

「まず、朱里ちゃんと対面で話してから決めよう。本人がこの場にいないのに、『許してもらえないかもしれない』と一人で責任を感じていても仕方ない」

「はい」

 頷いた私は、ゆっくり息を吐いて緊張していた体をリラックスさせていく。

「恵ちゃんにとって朱里ちゃんは、ただの親友以上の存在だから、罪悪感を抱く気持ちは分かるよ。でも彼女も恵ちゃんをとても大切に想っている。自分のせいで君が苦しんでいると知ったら、悲しむんじゃないかな」

「……そうですね……」

 私は無意識に涼さんの手を握りながら頷く。

 その時、彼のスマホがまた震え、涼さんはベンチの上に置いていたそれを手に取った。
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