462 / 778
彼と彼女のその後 編
残る部屋
しおりを挟む
パジャマを着たあと、高級ドライヤーで髪を乾かすと、あっという間に乾いてトゥルントゥルンになった。
「すげー……」
私は鏡の前に立って、髪を手でサラッ、サラッとする。
しばらくしてハッと我に返り、「篠宮さんみたいだから『すげー』って言うのやめよ」と自分に言い聞かせた。
「お先にいただきました」
少し緊張して書斎から顔を覗かせると、黒縁眼鏡を掛けた涼さんがこちらを見た。
「ああ、もう上がった?」
ハイキマシタ、イケメンメガネー!
「…………っ」
不意打ちで眼鏡姿を見せないでほしい。心臓に悪い。
(イケメンってどんなアイテムをつけてもイケメンなんだな。鼻眼鏡つけてやりたい)
私は悔し紛れにパーティーアイテムをつけた涼さんを想像するけれど、それはそれで面白いのでアリかもしれない。
むしろ、彼ならジョークグッズを使って全力で笑かしてきそうで、油断できない。
涼さんは椅子を回転させてこちらを見ると、腕組みして尋ねてくる。
「一つ確認し忘れていた事があるんだけど、一緒に寝ても大丈夫? それとも慣れるまでは別の部屋にしておく?」
そう言われ、少し意外だったので私は呆けた顔をしてしまった。
ここまでお膳立てされたので、てっきり一緒に寝るものと思っていた。
強引に事を運ばないのは彼らしいけれど、いざという時に引かれると、肩透かしを食らった気持ちになる。
お風呂に入ったのだって、抱かれる前提……とは言わないけど、半分ぐらいはある程度の覚悟をしての事だった。
私はどう反応したらいいか分からず、スンッ……として沈黙する。
さっきは涼さんがハニワ顔をしていると思ったけど、多分いまの私もハニワ顔になっている。
すると彼は小首を傾げて微笑んだ。
「一緒に寝ても大丈夫そう?」
「……う、うう……」
誘導されてるなぁ……。
「一応、恵ちゃんの部屋にしようと思っている所、案内しておこうか」
そう言って涼さんは立ちあがり、書斎を出るとスタスタと歩き、玄関前のギャラリーホールを抜けて奥へ向かう。
「こっちは客室が三つあるんだ。あと、トイレが三つと風呂が二つ、洗面所一つ」
「なんでこんな家に一人で住んでるんですか」
私は思わずいつもの調子で突っ込む。
涼さんは歩きながら、通りすがりのドアを軽く開け、中を紹介してくれる。
ギャラリーホールを抜けてすぐに収納やトイレがあり、サブの玄関まであった。
廊下を進んで右手側にはランドリールームに洗面所、トイレとお風呂が本当にツーセットある。アホじゃなかろか。
左手には十畳の部屋、十畳弱の部屋、一番奥に十一畳の部屋があり、その部屋にはウォークインクローゼットもあった。
「俺の生活圏から一番遠いんだけど、この部屋が一番広いし、ウォークインクローゼットもあるから便利かなと思って」
同じ家の中なのに、生活圏という言葉が出てくるとは思わなかった。
どの部屋もバルコニーに面していて、一つ目と三番目の部屋はお客さん用のベッドは置いてあるけれど、割とガランとしていてすべての部屋をきちんと使ってなさそうだ。
「尊が泊まりに来る時は、二番目の部屋に入り浸ってるかな。あそこは漫画部屋にしてるから、好きなだけ漫画を読んでるんだよ」
「へぇー……、意外……」
「子供時代に抑圧された生活を送っていたから、ろくに漫画を読んでいなかったみたいでね。大学生時代に『面白いよ』って漫画を貸したら、興味を持ったみたいだ」
「ちなみにどんなジャンルなのか、見てみてもいいですか?」
「どうぞ」
二人で一つ前の部屋に戻ると、中には本棚がびっしりある。
本が日焼けしないようにカーテンを閉めている他、地震があった時に倒れないようにしっかり固定されてある。
「へぇー……」
図書館みたいに入り組んだ本棚を見ていると、幅広いジャンルの本が置かれてある。
少年漫画に青年漫画、意外と少女漫画もあるし、ラノベもある他、一般小説にミステリー小説、時代小説、難しそうな専門書もあれば、ファッション関係の本、投資関係の本、その他雑多とした趣味関係の本や雑誌もある。
「趣味の幅が凄い!」
芸人さんみたいな口調で言うと、涼さんがクスクス笑った。
「すげー……」
私は鏡の前に立って、髪を手でサラッ、サラッとする。
しばらくしてハッと我に返り、「篠宮さんみたいだから『すげー』って言うのやめよ」と自分に言い聞かせた。
「お先にいただきました」
少し緊張して書斎から顔を覗かせると、黒縁眼鏡を掛けた涼さんがこちらを見た。
「ああ、もう上がった?」
ハイキマシタ、イケメンメガネー!
「…………っ」
不意打ちで眼鏡姿を見せないでほしい。心臓に悪い。
(イケメンってどんなアイテムをつけてもイケメンなんだな。鼻眼鏡つけてやりたい)
私は悔し紛れにパーティーアイテムをつけた涼さんを想像するけれど、それはそれで面白いのでアリかもしれない。
むしろ、彼ならジョークグッズを使って全力で笑かしてきそうで、油断できない。
涼さんは椅子を回転させてこちらを見ると、腕組みして尋ねてくる。
「一つ確認し忘れていた事があるんだけど、一緒に寝ても大丈夫? それとも慣れるまでは別の部屋にしておく?」
そう言われ、少し意外だったので私は呆けた顔をしてしまった。
ここまでお膳立てされたので、てっきり一緒に寝るものと思っていた。
強引に事を運ばないのは彼らしいけれど、いざという時に引かれると、肩透かしを食らった気持ちになる。
お風呂に入ったのだって、抱かれる前提……とは言わないけど、半分ぐらいはある程度の覚悟をしての事だった。
私はどう反応したらいいか分からず、スンッ……として沈黙する。
さっきは涼さんがハニワ顔をしていると思ったけど、多分いまの私もハニワ顔になっている。
すると彼は小首を傾げて微笑んだ。
「一緒に寝ても大丈夫そう?」
「……う、うう……」
誘導されてるなぁ……。
「一応、恵ちゃんの部屋にしようと思っている所、案内しておこうか」
そう言って涼さんは立ちあがり、書斎を出るとスタスタと歩き、玄関前のギャラリーホールを抜けて奥へ向かう。
「こっちは客室が三つあるんだ。あと、トイレが三つと風呂が二つ、洗面所一つ」
「なんでこんな家に一人で住んでるんですか」
私は思わずいつもの調子で突っ込む。
涼さんは歩きながら、通りすがりのドアを軽く開け、中を紹介してくれる。
ギャラリーホールを抜けてすぐに収納やトイレがあり、サブの玄関まであった。
廊下を進んで右手側にはランドリールームに洗面所、トイレとお風呂が本当にツーセットある。アホじゃなかろか。
左手には十畳の部屋、十畳弱の部屋、一番奥に十一畳の部屋があり、その部屋にはウォークインクローゼットもあった。
「俺の生活圏から一番遠いんだけど、この部屋が一番広いし、ウォークインクローゼットもあるから便利かなと思って」
同じ家の中なのに、生活圏という言葉が出てくるとは思わなかった。
どの部屋もバルコニーに面していて、一つ目と三番目の部屋はお客さん用のベッドは置いてあるけれど、割とガランとしていてすべての部屋をきちんと使ってなさそうだ。
「尊が泊まりに来る時は、二番目の部屋に入り浸ってるかな。あそこは漫画部屋にしてるから、好きなだけ漫画を読んでるんだよ」
「へぇー……、意外……」
「子供時代に抑圧された生活を送っていたから、ろくに漫画を読んでいなかったみたいでね。大学生時代に『面白いよ』って漫画を貸したら、興味を持ったみたいだ」
「ちなみにどんなジャンルなのか、見てみてもいいですか?」
「どうぞ」
二人で一つ前の部屋に戻ると、中には本棚がびっしりある。
本が日焼けしないようにカーテンを閉めている他、地震があった時に倒れないようにしっかり固定されてある。
「へぇー……」
図書館みたいに入り組んだ本棚を見ていると、幅広いジャンルの本が置かれてある。
少年漫画に青年漫画、意外と少女漫画もあるし、ラノベもある他、一般小説にミステリー小説、時代小説、難しそうな専門書もあれば、ファッション関係の本、投資関係の本、その他雑多とした趣味関係の本や雑誌もある。
「趣味の幅が凄い!」
芸人さんみたいな口調で言うと、涼さんがクスクス笑った。
598
あなたにおすすめの小説
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる