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ラビティーシー 編

ミラマーレのスイートルーム

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 テーブルには、ミラマーレのロゴが入ったエコバッグが二つ置かれてあった。嬉しい。

 アンティークな木製のキャビネットに収まったテレビを見られるよう、脚をのばして座れるクリーム色の一人掛けの椅子がある他、窓辺にはさらに朱色の椅子が三脚、丸テーブルを囲んでいた。

 丸テーブルの上にはウェルカムフルーツの器に入ったさくらんぼに、丸ごとのオレンジとキウイ、ミニマカロンがある。

 尊さんいわく、丸ごとフルーツはフロントにお願いするとカットしてもらえるらしい。

 卓上花は持ち帰ってもいいみたいで、専用の袋も用意されてあった。

 スイートの宿泊記念として黒いボックスが置かれてあり、中にはラビティーキャラのトランプ、色違いのラゲージタグ――旅行鞄につける名札があった。

 壁際にはコーヒーメーカーなどが置かれた台があり、ミラマーレのロゴが描かれた白いティーカップが置かれてある他、黒いボックスの中には紅茶のティーバックなどもある。

 台の下には例によって無料のミネラルウォーター四本が収まった冷蔵庫があり、隣にはグラスも置かれてあった。

 壁に掛かっている絵画はいずれも航海をテーマにしていて、船乗りスタイルのラビティーや仲間たちの絵もあって嬉しい。

 さらに隣室はベッドルームになっていて、柄の入った鮮やかなブルーのフットスローが掛かった白いリネンは糊がピシッと利いている。

 白い枕が二つ並んだ手前にカラフルな円筒状のクッションもあり、複雑な形をしたヘッドボードの裏、壁際には天井からカーテンのような布が掛かっていて、お姫様みたいな気持ちだ。

 ベッドに寝た状態で見られるよう、足元の壁にはテレビがあり、窓からはポルト・ヴィータが臨める。

 例によってベッドサイドの引き出しには、持ち帰っていいポストカードがあり、万が一の時の懐中電灯もある。

 寝室の奥にはバスルームに続くガラスの引き戸があり、その横にあるクローゼットにはバスローブがハンガーに掛かり、足元にはスリッパが置かれてある。

 バスルームは広々としていて、入り口近くの洗面所よりもっと広い洗面所があり、金縁の鏡が二つ、洗面ボウルも二つある。

 アメニティやハンドソープが置かれている他、メイク用のスタンド型拡大鏡も置かれてあった。

 歯ブラシはラビティーが描かれた箱に入っていてアガるし、シャンプー類や石鹸、ボディソープやローションはフェラガモだ。

 驚く事に洗面所にもテレビがあって、多分ファミリーで来た時にお子さんが飽きないように……とか配慮されているんだなと思った。

 奥にはバスタブがあり、入って右手にはシャワーブースとお手洗いがあった。

「凄い……」

 私はあちこちパシャパシャ写真を撮り、動画も撮ったあと溜め息をつく。

 その間、尊さんはフロントに電話を掛けてフルーツのカットをお願いしていた。

「朱里、先に風呂入るか?」

「うーん……、疲れたので、顔を落としてから少し横になります」

「そっか。じゃあ朱里が休んでる間に、先に入らせてもらうかな」

「どうぞどうぞ」

 スマホを充電した私は、尊さんに「窓側のベッドを使っていいですか?」と確認してからゴロンと転がる。

 尊さんはバスタブにお湯を貯め始め、私と同様にベッドに座るとリモコンでテレビをつけた。

「朱里」

「はい?」

 早くもムニャムニャしながら返事をすると、尊さんが甘い声で言う。

「そっち行っていいか?」

「……どうぞ」

 コロンと転がってスペースを空けると、尊さんは隣に寝そべって頭を撫でてきた。

「可愛い秘書は労らないとな」

「うう……、急に戻ってくる現実」

「ははっ、悪い。夢の国の間は現実を忘れないとな」

 尊さんは軽く笑ってから、チュッと私の額にキスをしてくる。

「あっ、……ちょ、ちょっと待って……。一日遊んだからテカリとか気になりますし、先に顔を落としてきます」

 どれだけ婚約者が板に付いてきたとしても、まだまだ乙女でいたい。

 私は疲れを忘れてサッと立ちあがると、荷物からクレンジングや洗顔、基礎化粧品一式を出して洗面所に向かう。

 尊さんのマンションの洗面所も広いけれど、外出先だと思うと気分が上がる。

(今は五月。……六月には就任パーティーがあって、七月には凜さんに会いに行くのか)

 そう思うとやる事が目白押しだ。

(八月のお盆休みってどこか行くのかな)

 先の予定を聞いておこうと思った私は、クルクルと優しくクレンジングしながら尊さんに尋ねた。

「お盆休みって予定ありますか?」
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