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親友の恋 編

初めて男の人と同じ部屋で

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 考え事をしている間にサッと髪と体を洗い、脱衣所を出る。

 せっかくの雰囲気のあるバスタブだけれど、お湯を貯めていると時間がかかってしまうのでやめておいた。

 フェイスケアをしてドライヤーで髪を乾かしていると、「湯上がりの姿を涼さんに見られるのか……」とジワジワ頬が赤くなっていく。

 今回は朱里と一緒に泊まる予定だったので、彼女とお揃いで買ったパジャマを持ってきた。

 二人で「お揃い」と言ってキャッキャする予定だったのに、……どうしてこうなった。

 すべて終えたあと、私は最後にもう一度鏡を見てサッサッと髪を整え、咳払いをしつつ洗面所を出た。

 ベッドにいる涼さんとすぐ目を合わせられない私は、ミニバーに入っているお水を取って窓際まで行くと、ランドのほうを見ながらゴッゴッゴッ……と腰に手を当てて飲む。

 雰囲気があるからカーテンを開けっぱなしにしていて、チラッと窓に反射した涼さんを見ると、先ほどと変わらない体勢でスマホを見ていた。

(……なんか言わないと……、間が持たないな……)

 ペットボトルを持ったまま窓の外を見て考えていると、涼さんが声を掛けてきた。

「明日、何楽しみにしてる?」

「えっ? ……あ、船のやつとか、ゴンドラとか……。あと地味に、亀がしゃべる奴見たいです。テレビで見てたので。でも自分はいいので人が話してるのを見たいだけ。あとはフリーフォールのとか」

「楽しみだね。俺も滅多に来ないから、思いきり楽しみたい」

「は、はい」

 時刻を確認すると、もう二十三時過ぎだ。

 早朝からレストランに向かう事を考えたら、早めに寝ないとならない。

「電気、消しても大丈夫ですか?」

「ああ。なんかあった時のため、洗面所はつけておこうか」

 そう言って涼さんは洗面所の電気をつけると、またベッドに戻って照明を落とす。

「おやすみ、恵ちゃん」

「おやすみなさい」

 男の人と、同じ部屋で「おやすみ」を言うなんて思ってもみなかった。

(……いびきかいちゃったらどうしよう。……いや、歯ぎしりとかおならとか……)

 寝てる間の事ってまったく分からないから、普段の自分がどうなのかまったく分からない。

 朱里とお泊まりしている時は何も言われないけど、そもそもあの子はスヤスヤと健やかに寝る子なので、多分何も気にしてない。

 そんな事を考えていたら、ドキドキして緊張してしまい、何回も溜め息をつく羽目になる。

 何度か寝返りを打ったあと、私は少しでも自分の体から漏れる音を防ごうと、涼さんに背を向けて頭まで布団を被った。



**



「……朱里、起きるぞ」

「んぁ……」

 尊さんに揺さぶられたのは、五時半だ。

「……ねもい」

「こら、潜るな」

 もう着替えている尊さんは布団を捲り、「おはよ」と額にチュッとキスをしてくる。

「……おかわり」

「喜んで」

 私のコールに応えて、尊さんはチュッチュッとキスの雨を降らした。

「んー……」

 私は目を擦って起き、思いきり伸びをする。

「……恵、大丈夫かな」

「涼は大丈夫だと思うけど。むやみやたらに女の子を襲うほど飢えてないし」

「メッセージ送ってみよ」

 私は充電が満タンになったスマホを手に取り、恵に【おはよー】とメッセージを送る。

 しばらくして既読がつき、キャラクターが【おはようございます】と挨拶しているスタンプが送られてきた。

 続けて、【寝不足です】とキャラクターが眠そうにしているスタンプも送られてくる。

 私はそれに【どんまい!】とスタンプを返してから【朝食楽しみだね! 胃のウォーミングアップしとく!】と送った。

 顔を洗ったあと、一日経っても持つよう念入りにメイクをする。

 その間、尊さんは「ちょっと優雅な事をしとく」と言って、バルコニーに出て歯磨きをしていた。うん、貴族だ。
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