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ゴールデンウィーク 編

継妹の婚活

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「美奈歩は今まで『楽しければいい』って感じだったけど、私と尊さんを見て、結婚相手を探し始めたみたい。まずはマチアプに登録したみたいだけど、『うざいのばっかりいる』って言ってたな……」

 それを聞き、尊さんは苦笑いする。

「ああいうのって、女性は無料だけど男側は課金システムなんだよ。メッセージを送るにも金が掛かるから、定型文を飛ばしまくって、引っ掛かった女性をターゲットに話しかけるのは常套手段だな」

「へええ~!」

「街コンとか婚活パーティーも、女性の負担は少ないはずだ。男性側から金をとって成り立ってる商売だからな。でも男性側のステータスが上がると、……医者とか弁護士とか経営者とか……、だと、男性側の会費が安くなるみたいだ」

「わぁ、分かりやすい」

 私は生ぬるく笑ってパクリと鰻を食べる。

「結婚相談所はどうなんですか?」

「パーティーは自発的に行って気の合う人を見つけるやり方だけど、相談所は会社が合いそうな人を紹介、セッティングしてくれるから、その分高くつくな。でもプロがガチで味方になってくれるから、本気で結婚したいなら相談所に入ってガツガツ会って行けば成立する可能性は高いんじゃないかな」

「へぇ……」

 私はうんうんと頷いて美奈歩の事を考える。

「結婚できる確率で言えば相談所だろうけど、ケースバイケースかな。美奈歩さんがコミュニケーション能力の高い人なら、パーティーで積極的に話しかけていけば気の合う人を見つけられると思う。相談所は自分のスペックやプロフィールに自信のある人が有利かな。あとはアドバイスを受けたとして、それに従っていけるかどうかとか」

「なるほど~……。そこまで本気になってはいない雰囲気だから、まずはパーティーで様子を見てから……って感じかな。アプリで正体が定かじゃない人を相手に疲れてるぐらいなら、直接会って話したほうが健康的ですよね」

「確かにそれは言える。アプリでは年収を打ち込む欄があるらしいけど、そういうのも、幾らでも盛れるからな。顔写真だってどんだけ盛ってるか分からんし」

「……やけに詳しいですね?」

 尋ねると、尊さんは溜め息をついて首を横に振る。

「俺じゃなくて、秦野はたのがガンガン活動してるらしい」

「ああ!」

 秦野というのは商品開発部の男性の先輩で、そういえば婚活を頑張っていると小耳に挟んだ事がある。

「……皆元気かなぁ……」

「その気になりゃ会えるだろ」

 感傷的になっている私の向かいで、尊さんはドライに言って鰻をパクパク食べる。

「話は変わるけど、中村さん、本当に涼の事大丈夫かな?」

「あっ、大丈夫だと思います。……大丈夫とは?」

「答えたあとに聞くなよ」

 尊さんはフハッと脱力したように笑い、肝吸いを飲んでから言う。

「あいつ、ちょっと変わってるだろ。最初の一声とか行動が、普通の人みたいにジワジワと距離を詰めないで、いきなりズバンとど真ん中に突っ込んでくるタイプだ。朱里みたいに『面白い』で済ませてくれるならいいけど、神経質な人だったら『失礼な奴』と思ってNGになるだろうし」

「んー、多分大丈夫だと思いますよ。恵、人の好き嫌いはハッキリしてますけど、その場の空気を悪くするタイプではないので」

「そうか。……なら、楽しめたらいいな」

「はい!」

 私はにっこり笑って返事をし、鰻を食べて「んンふぃ」とにやけた。



**



 そして五月三日、私たちは早朝に起きて七時過ぎにはラビティーランドのエントランス前に到着していた。

 はぐれても目立ちやすいように、パッと目を引くフューシャピンクのTシャツを着て、グレーのタイトスカート、ジージャンに履き慣れた白スニーカーという服装で向かった。

 尊さんはベージュのTシャツの上に紺のシャツを羽織り、黒のテーパードパンツに白スニーカー。

 スニーカーの色がおそろなので、私は密かにテンションが上がっている。

「すみません、朝一から遊びたいがばかりに早起きさせてしまって」

 私は立ちながらコンビニおにぎりをモグモグ食べ、尊さんに謝る。

「全然いいよ。それより、中村さんとは連絡ついた?」

「向かってるはずなんですけどね……」

 私は最後の一口を口に突っ込み、スマホを出す。
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