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大切な話 編
繋がる事のできない人への想い
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言われて初めて、以前に言っていた涼さんと恵を巻き込んでのダブルデートを思いだした。
「……やべぇ、連絡行き違ってたら悲劇だった」
尊さんは下手をすれば先ほどより焦った顔をしていて、申し訳なくなる。
「どっかで話を聞き逃してたかな……」
「いや、俺も言ったつもりになっていたかもしれない。悪い」
私たちは二人で謝り合ったあと、顔を見合わせて笑う。
「広島行きはまだ先だし、あとから考えよう。なるはやで中村さんにも連絡してもらって、五月に二泊三日でラビティーランドとシー行きを考えよう」
「ですね! わぁ、楽しみ!」
私はすぐにスマホを手に取り、恵にメッセージを送る。
【こんばんは。突然だけど、GWに尊さんと彼の親友の涼さんと一緒に、ランドとシーに行かない?】
私はそこまでメッセージを打ち、尊さんに尋ねる。
「そういえば部屋割りってどうします?」
「女子同士で泊まれよ。確かに朱里とのランドデートは初めてだけど、面識がない男と中村さんを一緒に泊まらせる訳にいかないし」
「分かりました」
こう言ってくれるところは、さすが尊さんだなと思った。
彼は割とやきもち妬きで、相手が神くんとかハイスペックな相手になるほど、割と真剣に危機感を抱いているようだった。
亮平は私の継兄だからという理由で、拉致と言っていい事をされても丁寧に接していたけれど、あの時もかなり動揺したらしいし。
でもなんだかんだで、私が他の人になびかないと信じてくれているから、酷い嫉妬をする事はない。
今回も本当は私と同じ部屋が良かっただろうけど、恵のために一歩引いてくれている。
(あとでお礼になる事を何かしないと)
そう思いながら、私はさらにメッセージを打っていく。
【二泊三日で、部屋割りは私と一緒です。どう?】
ポンとメッセージを送ると、すぐ既読がついた。
そして【行く】と返事がくる。
【チケットって幾らしたっけ? 一泊の値段も教えてください。よろ】
それを見て、私は尊さんに尋ねる。
「あの、恵がチケット代や宿泊費を気にしてるんですが、一人当たり幾らかかりますか?」
尊さんはキッチンでお茶を淹れつつ答える。
「そんなん、今さらだろ。朱里や中村さんに出させる訳がないだろ。三食の食事代も持つから、あとはスイーツとかお土産代だけ自分で負担してくれたらいいよ」
それを聞いた私は、スックと立ちあがり、タタタタタタ……とキッチンまで走ると、靴下を穿いた足でシャーッと床の上を滑りながら尊さんに抱きついた。
「しゅき!」
「おっと!」
尊さんは弾みでお茶っ葉を零しかけ、片手で私の体を抱き留める。
「突撃してくるなよ。猪かよ」
「ウリウリウリウリウリウリ」
私はふざけながら尊さんの横腹に頭をグリグリ押しつける。
「やめろって」
尊さんはクスクス笑って私を抱き寄せ、自分と私の湯飲み茶碗にお湯を入れる。
「結構なお点前です」
「まだ飲んでねぇし、薄茶じゃねぇよ」
彼は突っ込みを入れてから、両手でトトトと私の両脇腹をつつく。
「うひひひひ。速水拳だ」
くすぐったさに笑ったあと、私は背後から尊さんに抱きつき、彼がお茶を淹れる様子を見守る。
「ご機嫌になったな」
「尊さんもじゃないです? 一つ心配事が減ったんですから」
「……だな」
彼はお腹に回った私の手をポンポンと叩く。
「……正直、怜香の事が片付いたあと、一番気に掛かっていた事かもしれない。あいつは一度俺の前からいなくなってしまったから、もう二度と解決できない事だと思っていた。……だから、今こうやって完全解決に向けて進められているのが信じられないぐらいだ」
「もう繋がる事のできない人への想いって、自分の中で昇華させるしかありませんもんね。本当に良かったと思います」
そう言うと、尊さんは少し黙ったあと、私を振り向いて抱き締めてきた。
「……なんですか?」
目を瞬かせると、尊さんは私をジッと見つめてくる。
「…………お前って、親父さんの事、何か覚えてるか?」
尋ねられ、私は瞠目した。
「……やべぇ、連絡行き違ってたら悲劇だった」
尊さんは下手をすれば先ほどより焦った顔をしていて、申し訳なくなる。
「どっかで話を聞き逃してたかな……」
「いや、俺も言ったつもりになっていたかもしれない。悪い」
私たちは二人で謝り合ったあと、顔を見合わせて笑う。
「広島行きはまだ先だし、あとから考えよう。なるはやで中村さんにも連絡してもらって、五月に二泊三日でラビティーランドとシー行きを考えよう」
「ですね! わぁ、楽しみ!」
私はすぐにスマホを手に取り、恵にメッセージを送る。
【こんばんは。突然だけど、GWに尊さんと彼の親友の涼さんと一緒に、ランドとシーに行かない?】
私はそこまでメッセージを打ち、尊さんに尋ねる。
「そういえば部屋割りってどうします?」
「女子同士で泊まれよ。確かに朱里とのランドデートは初めてだけど、面識がない男と中村さんを一緒に泊まらせる訳にいかないし」
「分かりました」
こう言ってくれるところは、さすが尊さんだなと思った。
彼は割とやきもち妬きで、相手が神くんとかハイスペックな相手になるほど、割と真剣に危機感を抱いているようだった。
亮平は私の継兄だからという理由で、拉致と言っていい事をされても丁寧に接していたけれど、あの時もかなり動揺したらしいし。
でもなんだかんだで、私が他の人になびかないと信じてくれているから、酷い嫉妬をする事はない。
今回も本当は私と同じ部屋が良かっただろうけど、恵のために一歩引いてくれている。
(あとでお礼になる事を何かしないと)
そう思いながら、私はさらにメッセージを打っていく。
【二泊三日で、部屋割りは私と一緒です。どう?】
ポンとメッセージを送ると、すぐ既読がついた。
そして【行く】と返事がくる。
【チケットって幾らしたっけ? 一泊の値段も教えてください。よろ】
それを見て、私は尊さんに尋ねる。
「あの、恵がチケット代や宿泊費を気にしてるんですが、一人当たり幾らかかりますか?」
尊さんはキッチンでお茶を淹れつつ答える。
「そんなん、今さらだろ。朱里や中村さんに出させる訳がないだろ。三食の食事代も持つから、あとはスイーツとかお土産代だけ自分で負担してくれたらいいよ」
それを聞いた私は、スックと立ちあがり、タタタタタタ……とキッチンまで走ると、靴下を穿いた足でシャーッと床の上を滑りながら尊さんに抱きついた。
「しゅき!」
「おっと!」
尊さんは弾みでお茶っ葉を零しかけ、片手で私の体を抱き留める。
「突撃してくるなよ。猪かよ」
「ウリウリウリウリウリウリ」
私はふざけながら尊さんの横腹に頭をグリグリ押しつける。
「やめろって」
尊さんはクスクス笑って私を抱き寄せ、自分と私の湯飲み茶碗にお湯を入れる。
「結構なお点前です」
「まだ飲んでねぇし、薄茶じゃねぇよ」
彼は突っ込みを入れてから、両手でトトトと私の両脇腹をつつく。
「うひひひひ。速水拳だ」
くすぐったさに笑ったあと、私は背後から尊さんに抱きつき、彼がお茶を淹れる様子を見守る。
「ご機嫌になったな」
「尊さんもじゃないです? 一つ心配事が減ったんですから」
「……だな」
彼はお腹に回った私の手をポンポンと叩く。
「……正直、怜香の事が片付いたあと、一番気に掛かっていた事かもしれない。あいつは一度俺の前からいなくなってしまったから、もう二度と解決できない事だと思っていた。……だから、今こうやって完全解決に向けて進められているのが信じられないぐらいだ」
「もう繋がる事のできない人への想いって、自分の中で昇華させるしかありませんもんね。本当に良かったと思います」
そう言うと、尊さんは少し黙ったあと、私を振り向いて抱き締めてきた。
「……なんですか?」
目を瞬かせると、尊さんは私をジッと見つめてくる。
「…………お前って、親父さんの事、何か覚えてるか?」
尋ねられ、私は瞠目した。
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