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女子合コン 編

初めまして

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 ドキドキして待っていると、予約時間前にエミリさんと春日さんが到着し、迎えるために立ちあがった。

「お疲れ様、早かったのね」

 エミリさんは黒いブラウスに白いファージレ、黒いパンツ姿だ。

 髪はポニーテールにして、大ぶりなリングのピアスをつけている。

 春日さんは白いノースリーブのニットワンピースに、ライラック色のカーディガンを羽織っていた。

 フワッと髪を巻いて束感を出していて、大人の女性っぽい色気がある。

 ……でも私は、彼女の中身がおじさんだと知っている。

「初めまして。あなたが恵さん? 私、三ノ宮春日って言います。宜しくね」

 春日さんに挨拶され、恵は「宜しくお願いいたします」とお辞儀する。

「これ、美味しいからお土産!」

 そう言って、春日さんはペパーミントグリーンの紙袋を渡してきた。

「えっ? ありがとうございます。すみません、私なにも用意してなくて……」

 私と恵は手土産を渡されて恐縮する。

 何か渡したくても、エコバッグの中にあるのはお参りセットだ。

「いいって事よ。美味しい物は皆で食べないとね。さ、飲み物オーダーしましょうか」

 春日さんはサラッと言ったあと、飲み物のメニューを受け取る。

 エミリさんと春日さんはスプマンテを頼み、私は昼間なのでノンアルコールにし、恵も同じようにした。

 スプマンテとは、イタリアンでのスパークリングワインの呼称らしい。

 飲み物をオーダーしたあと、エミリさんが恵に笑いかけた。

「同じ会社だけど、初めましてね?」

「そうですね。改めまして、商品開発部・企画三課の中村恵です。朱里と同じ二十六歳です」

 恵がペコリと頭を下げると、エミリさんと春日さんも自己紹介した。

「私は秘書課で副社長秘書をしていた丸木エミリです。社長が替わったあとは社長秘書となるわ。年齢は二十八歳。篠宮風磨さんの恋人です」

 彼女と風磨さんの仲は公認と言っていいけれど、今まで公言はしていなかったので、恵にこう伝えたという事は彼女を信頼しての事だろう。

「私は三ノ宮重工の、三ノ宮春日。二十七歳よ。周りからはお嬢様扱いされているけれど、脳筋だし喪女だから安心して。…………ウッ」

 春日さんは自分で言ってダメージを受けたのか、両手で胸元を覆って俯く。

「……春日さん、そんなに自虐しなくても。傷は浅いぞ」

 エミリさんが彼女の背中をさすって励ました時、恵が「ぷっ」と噴き出して笑い始めた。

「……っ、ごめんなさい。あの、本当に物凄いお嬢様と思っていたので、予想外の親しみやすさについ……」

「なら良かったわ」

 春日さんは屈託なく笑い、運ばれてきたグラスを掲げる。

「チンチン!」

「ぶふんっ」

 春日さんが明るく言ったものだから、イタリア式の乾杯の挨拶だと分かっていても噴き出してしまう。

「ほら、皆も言いなさいよ」

 春日さんはニヤニヤ笑ってチンチンを促し、私たちはプルプル震えながらグラスを合わせた。

「……チ、チンチン……」

「めっちゃチンチン」

「ぶふぉんっ」

 恵が真顔で悪乗りしてくるので、私は横を向いて軽く鼻水を噴き出してしまった。

 雰囲気がほぐれたところでアミューズが運ばれ、お肉やカニが使われた小さなタルトやサンドを手でつまむ。

「お二人の馴れそめは?」

「美味しいなぁ~」と思っていたところで春日さんがぶっ込んできて、私と恵は同時に噎せ、私と恵は顔を見合わせてから答える。

「中学生からの仲です。ぼっちの私に恵が優しくしてくれました」

 そう言うと、恵は首を横に振った。

「私、中学生の時に痴漢に遭ったんです。男勝りな性格をしていたんですが、自分が弱者だと思い知らされて、ボロボロになっていた時に朱里が何も言わず寄り添ってくれました。他の皆は私の事を『明るいムードメーカー』と思っていて、皆の前で弱い所なんて見せられなかったんですよね。……だからその分、朱里の優しさが染みたんです」

 恵の話を聞き、二人は感心したように頷いた。

「とりあえず、痴漢はヌッコロという事で」

 エミリさんが言い、春日さんも頷く。

「でも、二人ともいいで良かった。友達になれて幸せよ」

 春日さんがニコッと笑い、私は安堵して牡丹海老に根セロリとフルーツトマトのソースがかかり、キャヴィアがのった前菜を食べる。

「ぶっちゃけ、お二人から見て速水……、篠宮副社長はどうですか?」

 その時、恵がズバッと尋ねた。
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