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帰宅して 編
花言葉
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「……悪いな」
「いいえ。今、うっかり尊さんをデートに誘おうとしたんですけど、そういえば以前に出かけるって聞いていたので、予定を入れていたんです。あやうくダブルブッキングするところでした」
これは本当で、ゆっくり過ごそうかと思ったけれど、あの広いマンションで一人で過ごすと寂しさが半端ない気がして、予定を入れたのだ。
だから、かねてから春日さんとエミリさんに恵を紹介したいと思っていたので、両者からOKをもらった上で「それなら週末に会おうか」という話になっていた。
「危ない、危ない。本当にうっかり誘うところでした」
ごまかし笑いをすると、尊さんは少し残念そうに言う。
「そんなに『うっかり』を連発するなよ。朱里からなら、沢山デートに誘われたい」
「じゃあ、今度『もののはずみで』デートに誘いますね」
「こんにゃろ」
「うひひ」
尊さんに両ほっぺをモチモチと引っ張られた私は、構ってもらえるのが嬉しくてクスクス笑った。
家に帰ってお風呂に入ったあと、私は大きめのロンTにスウェット地のショーパン姿でプレゼントを開封していた。
豪邸に住み、普段から尊さんに色んな物をプレゼントしてもらっているとはいえ、やっぱり人から何かもらえると嬉しい。
「おお……」
綾子さんのプレゼントはジバンシィのマットリップで、ベルベットのカバーがついていて高級感がある。
色はヌードベージュで、どんなシーンでも使えそうだ。
瑠美さん、美智香さんと一緒に買いに行ったらしく「勘違いさせたお詫びの意味も込めて」ちょっといい物にしたそうだ。
なんだか申し訳ないような、ありがたいような。
ちなみに瑠美さんはイソップのボディスクラブ、美智香さんはティファニーのハンドクリームをくれた。
「ありがたく使わせてもらう」
そして時沢係長がくれた資生堂パーラーのお菓子の詰め合わせを見てホクホクし、成田課長がくれたプレスバターサンドを見て「うひひ」と笑う。
成田課長は『娘が美味いと言っていた。俺はよく知らん』と言っていたけど、娘さんに聞いてくれる気遣いが嬉しい。
尊さんもお花をもらっていたので、家中お花まみれになってしまった。
その中でも、やっぱり神くんのくれた花束は色合いのセンスが良く、多分彼が懇意にしてる高級花屋さんの物なのかな? と考える。
「綺麗だなぁ……」
花瓶に植えられたお花を見て写真を撮っていると、スマホを手にした尊さんが、少しつまらなさそうに言う。
「……よくやるな」
「えっ? 何がです?」
別に彼に他意はなかったと思うし、お花をくれたぐらいいいのでは……、と思ったのだけれど。
「あいつ、結構いい性格してるよ。これ以上朱里に迫る事はないと思うけど……」
そこまで言い、尊さんはスマホを見る。
「黄色いダリア『優美』『栄華』、アプリコットのトルコキキョウ『優美』、……オレンジのカーネーション『純粋な愛』『熱烈な愛』。……日比谷花壇より」
彼が読み上げた言葉を聞き、私は少し固まってから「またまたぁ~!」と明るく言う。
「考えすぎですよ。男性の全員が、尊さんみたいに花言葉男じゃないんですから」
「おい、ひでぇ言いようだな」
思わず突っ込んだ彼に、私はケラケラ笑う。
「……まぁ、これぐらいで終わるならいいけどな」
そう言われ、私は神くんからもらった紙袋の底にあった物を思いだし、無意識に唇を突き出し、頬を少し膨らませる。
「…………なんだ、その顔は」
「どんな顔ですか」
「犬が飼い主に黙って、口におやつを咥えてるような、後ろめたい顔だよ」
「…………なんも……」
「目を逸らすな。まだ神に何かされたか? 餌付けか?」
「……んー……、ま、まぁ……、そんな感じですけど……」
疑い深そうに私を見ていた尊さんは、神くんからもらった紙袋を見て「やけにでかいな」と言い、立ちあがった。
「いいえ。今、うっかり尊さんをデートに誘おうとしたんですけど、そういえば以前に出かけるって聞いていたので、予定を入れていたんです。あやうくダブルブッキングするところでした」
これは本当で、ゆっくり過ごそうかと思ったけれど、あの広いマンションで一人で過ごすと寂しさが半端ない気がして、予定を入れたのだ。
だから、かねてから春日さんとエミリさんに恵を紹介したいと思っていたので、両者からOKをもらった上で「それなら週末に会おうか」という話になっていた。
「危ない、危ない。本当にうっかり誘うところでした」
ごまかし笑いをすると、尊さんは少し残念そうに言う。
「そんなに『うっかり』を連発するなよ。朱里からなら、沢山デートに誘われたい」
「じゃあ、今度『もののはずみで』デートに誘いますね」
「こんにゃろ」
「うひひ」
尊さんに両ほっぺをモチモチと引っ張られた私は、構ってもらえるのが嬉しくてクスクス笑った。
家に帰ってお風呂に入ったあと、私は大きめのロンTにスウェット地のショーパン姿でプレゼントを開封していた。
豪邸に住み、普段から尊さんに色んな物をプレゼントしてもらっているとはいえ、やっぱり人から何かもらえると嬉しい。
「おお……」
綾子さんのプレゼントはジバンシィのマットリップで、ベルベットのカバーがついていて高級感がある。
色はヌードベージュで、どんなシーンでも使えそうだ。
瑠美さん、美智香さんと一緒に買いに行ったらしく「勘違いさせたお詫びの意味も込めて」ちょっといい物にしたそうだ。
なんだか申し訳ないような、ありがたいような。
ちなみに瑠美さんはイソップのボディスクラブ、美智香さんはティファニーのハンドクリームをくれた。
「ありがたく使わせてもらう」
そして時沢係長がくれた資生堂パーラーのお菓子の詰め合わせを見てホクホクし、成田課長がくれたプレスバターサンドを見て「うひひ」と笑う。
成田課長は『娘が美味いと言っていた。俺はよく知らん』と言っていたけど、娘さんに聞いてくれる気遣いが嬉しい。
尊さんもお花をもらっていたので、家中お花まみれになってしまった。
その中でも、やっぱり神くんのくれた花束は色合いのセンスが良く、多分彼が懇意にしてる高級花屋さんの物なのかな? と考える。
「綺麗だなぁ……」
花瓶に植えられたお花を見て写真を撮っていると、スマホを手にした尊さんが、少しつまらなさそうに言う。
「……よくやるな」
「えっ? 何がです?」
別に彼に他意はなかったと思うし、お花をくれたぐらいいいのでは……、と思ったのだけれど。
「あいつ、結構いい性格してるよ。これ以上朱里に迫る事はないと思うけど……」
そこまで言い、尊さんはスマホを見る。
「黄色いダリア『優美』『栄華』、アプリコットのトルコキキョウ『優美』、……オレンジのカーネーション『純粋な愛』『熱烈な愛』。……日比谷花壇より」
彼が読み上げた言葉を聞き、私は少し固まってから「またまたぁ~!」と明るく言う。
「考えすぎですよ。男性の全員が、尊さんみたいに花言葉男じゃないんですから」
「おい、ひでぇ言いようだな」
思わず突っ込んだ彼に、私はケラケラ笑う。
「……まぁ、これぐらいで終わるならいいけどな」
そう言われ、私は神くんからもらった紙袋の底にあった物を思いだし、無意識に唇を突き出し、頬を少し膨らませる。
「…………なんだ、その顔は」
「どんな顔ですか」
「犬が飼い主に黙って、口におやつを咥えてるような、後ろめたい顔だよ」
「…………なんも……」
「目を逸らすな。まだ神に何かされたか? 餌付けか?」
「……んー……、ま、まぁ……、そんな感じですけど……」
疑い深そうに私を見ていた尊さんは、神くんからもらった紙袋を見て「やけにでかいな」と言い、立ちあがった。
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