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洗礼 編
推します!
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「あの人たちいつも女子社員を値踏みして、自分の〝下〟だったら陰でドン引きするような事を言ってるんです。口が悪くて本当にびっくりしますよ。育ちを疑います。〝下〟じゃなくても、上村さんや丸木さんみたいに太刀打ちできない美人だと、やっぱり悔し紛れに陰口叩くんですよね。ホント、何をしても悪態しか出てこないので、相手にしなくていいと思います」
「おお……」
彼女は大人しそうな雰囲気だけれど、割と手厳しい事を言う。
「そのくせ、若くて顔立ちの整った男性社員には媚び売るんですよね。そうじゃない人の事は悪く言ったり『私の胸見てた』とか自意識過剰で……」
彼女は深い溜め息をついてから、「あっ」と顔を上げる。
「すみません、つい愚痴が」
「ううん」
私を微笑んで首を横に振る。
初対面の私にポロポロ愚痴をこぼしてしまうぐらい、多分毎日我慢してるんだろうな。
「あっ、すみません。私、総務部の西川紗綾って言います。歳は二十三歳です」
「あっ、これはご丁寧にありがとうございます。商品開発部、企画三課の上村朱里です」
私たちはペコペコとお辞儀し合う。
「とにかく、ああいう性格ブスは何をしても文句を言いますけど、私が仲良くしている人とか、四十代、五十代の先輩は『良かったね』って反応です。速水部長は確かに素敵でファンが大勢いますけど、皆が皆ガチ勢じゃないですから」
「うん、ありがとう」
お礼を言うと、紗綾ちゃん顔を近づけてヒソッと尋ねてきた。
「……で、上村さんと速水部長って、やっぱり付き合ってるんですか? あっ、どっちであっても絶対他言しません! 私、推しの迷惑になる事はしないんで!」
ビシッと掌を向けられ、私は「う、うん」と頷く。
(どうしようかな)
私は「付き合っているのか」と問われて、どう答えるべきか悩む。
(今後、結婚したら嫌でもバレる訳だし、その辺の話は尊さんとも前にしたよな……。で、今夜は綾子さん達を相手に色々聞かれるし)
考えたあと、私は覚悟を決めて溜め息をつき、微笑んだ。
「うん、お付き合いしてます。今までは内緒にしてたけど、今後の事を色々考えて今回の辞令みたいな結果になったの」
すると紗綾ちゃんは無言で叫び、プルプルと打ち震えてからピョンピョンと跳びはねる。
「推す! 推します! 断然推します!」
彼女は両手でサムズアップし、なんだかとても可愛い。
「ありがとうね、紗綾ちゃん。なんか元気出た」
お礼を言うと、彼女はグッと両手で拳を握る。
「これから風当たり強くなると思いますけど、全員が敵じゃないって覚えていてくださいね」
「うん、ありがとう。すっごく心強い」
「それで、もしも良かったら今度お茶してください」
コソッと言った紗綾ちゃんは、また「言っちゃったー!」とピョンピョン跳びはねる。
「私で良かったらぜひ。……じゃあ、連絡先交換しちゃう?」
「女神ー!」
テンションMAXで喜ぶ紗綾ちゃんと連絡先を交換したあと、そろそろデスクに戻らないとならなくなったので、「また」と別れた。
デスクに戻って残り時間でスマホをチェックすると、尊さんからメッセージが入っていた。
【お疲れ。まぁ、そういう事が起こるだろうなとは思ってた。店が決まったら教えてくれ。念のため近くに控えて、修羅場っぽくなったら行く。俺が行ったら余計にこじれるかもしれないが、もう部署を離れる訳だし、身綺麗にする覚悟を決めよう。中村さんにも連絡して、彼女にも連携をとってもらう】
ぬかりのない尊さんの返事に安心した私は、【了解です】というスタンプを送ってスマホをしまう。
(なるべく自分で、平和的に解決できたらいいんだけどな)
溜め息をついた私はチラッと恵を見て、いつも側にいてくれる彼女に感謝した。
恵が同じ会社にいてくれるのは、もともとは尊さん絡みだけど、彼女の意志があっての事でもある。
ある意味、私は二人にずっと守られてきた。
秘書になって職場が変わっても恵とは親友だし、今まで通り頻繁に連絡を取り合ってお茶やらご飯やら行きたい。
(秘書になったあとはエミリさんに教えを請う事になるけど、うまくやっていけるよう頑張ろう)
彼女は酸いも甘いもかみ分けた大人だから、私に合わせてくれると思う。
でもその好意に甘えすぎないようにしないと。
(さしあたって、今夜のミッションを無事こなしてから……か)
私は綾子さんたちをチラッと見たあと、深呼吸してメールチェックを始めた。
**
「おお……」
彼女は大人しそうな雰囲気だけれど、割と手厳しい事を言う。
「そのくせ、若くて顔立ちの整った男性社員には媚び売るんですよね。そうじゃない人の事は悪く言ったり『私の胸見てた』とか自意識過剰で……」
彼女は深い溜め息をついてから、「あっ」と顔を上げる。
「すみません、つい愚痴が」
「ううん」
私を微笑んで首を横に振る。
初対面の私にポロポロ愚痴をこぼしてしまうぐらい、多分毎日我慢してるんだろうな。
「あっ、すみません。私、総務部の西川紗綾って言います。歳は二十三歳です」
「あっ、これはご丁寧にありがとうございます。商品開発部、企画三課の上村朱里です」
私たちはペコペコとお辞儀し合う。
「とにかく、ああいう性格ブスは何をしても文句を言いますけど、私が仲良くしている人とか、四十代、五十代の先輩は『良かったね』って反応です。速水部長は確かに素敵でファンが大勢いますけど、皆が皆ガチ勢じゃないですから」
「うん、ありがとう」
お礼を言うと、紗綾ちゃん顔を近づけてヒソッと尋ねてきた。
「……で、上村さんと速水部長って、やっぱり付き合ってるんですか? あっ、どっちであっても絶対他言しません! 私、推しの迷惑になる事はしないんで!」
ビシッと掌を向けられ、私は「う、うん」と頷く。
(どうしようかな)
私は「付き合っているのか」と問われて、どう答えるべきか悩む。
(今後、結婚したら嫌でもバレる訳だし、その辺の話は尊さんとも前にしたよな……。で、今夜は綾子さん達を相手に色々聞かれるし)
考えたあと、私は覚悟を決めて溜め息をつき、微笑んだ。
「うん、お付き合いしてます。今までは内緒にしてたけど、今後の事を色々考えて今回の辞令みたいな結果になったの」
すると紗綾ちゃんは無言で叫び、プルプルと打ち震えてからピョンピョンと跳びはねる。
「推す! 推します! 断然推します!」
彼女は両手でサムズアップし、なんだかとても可愛い。
「ありがとうね、紗綾ちゃん。なんか元気出た」
お礼を言うと、彼女はグッと両手で拳を握る。
「これから風当たり強くなると思いますけど、全員が敵じゃないって覚えていてくださいね」
「うん、ありがとう。すっごく心強い」
「それで、もしも良かったら今度お茶してください」
コソッと言った紗綾ちゃんは、また「言っちゃったー!」とピョンピョン跳びはねる。
「私で良かったらぜひ。……じゃあ、連絡先交換しちゃう?」
「女神ー!」
テンションMAXで喜ぶ紗綾ちゃんと連絡先を交換したあと、そろそろデスクに戻らないとならなくなったので、「また」と別れた。
デスクに戻って残り時間でスマホをチェックすると、尊さんからメッセージが入っていた。
【お疲れ。まぁ、そういう事が起こるだろうなとは思ってた。店が決まったら教えてくれ。念のため近くに控えて、修羅場っぽくなったら行く。俺が行ったら余計にこじれるかもしれないが、もう部署を離れる訳だし、身綺麗にする覚悟を決めよう。中村さんにも連絡して、彼女にも連携をとってもらう】
ぬかりのない尊さんの返事に安心した私は、【了解です】というスタンプを送ってスマホをしまう。
(なるべく自分で、平和的に解決できたらいいんだけどな)
溜め息をついた私はチラッと恵を見て、いつも側にいてくれる彼女に感謝した。
恵が同じ会社にいてくれるのは、もともとは尊さん絡みだけど、彼女の意志があっての事でもある。
ある意味、私は二人にずっと守られてきた。
秘書になって職場が変わっても恵とは親友だし、今まで通り頻繁に連絡を取り合ってお茶やらご飯やら行きたい。
(秘書になったあとはエミリさんに教えを請う事になるけど、うまくやっていけるよう頑張ろう)
彼女は酸いも甘いもかみ分けた大人だから、私に合わせてくれると思う。
でもその好意に甘えすぎないようにしないと。
(さしあたって、今夜のミッションを無事こなしてから……か)
私は綾子さんたちをチラッと見たあと、深呼吸してメールチェックを始めた。
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