【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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二次会 編

無欲に近い

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「朱里は本当に食うのが好きだからな。……まぁ、中には食べる事に興味がないって人もいるし、生きるだけのエネルギーを摂取できればいいって人もいるしな。涼は色んな面で恵まれて生まれたから、ガツガツした欲がないんだと思う」

 尊さんにそう言われても、涼さんは特に反論しなかった。

「確かに『どうしても何かがしたい』って強く願った事はないかな。いやみって言われるだろうけど、金には困ってないし、衣食住も満たされてる。旅行も気になった所は大体行ったし、美食は飽きるほど食ったし」

「……それでゲテモノに走ったんですね」

 ボソッと突っ込むと、涼さんは「よく知ってるね」と笑った。

「家のために誰かと結婚して子供を作らないとな、とは思ってるけど、寄ってくる女性はどれも同じに思えて、女性の魅力っていうものが分からなくなった。その辺のメイクした〝美人〟より、俺のほうがナチュラルに美形だし、見た目をどんだけ盛ってもあまり意味がないんだよ」

「あはは! 確かに!」

 涼さんは本当に美形で、芸能人の中でも〝国宝的イケメン〟と呼ばれる人に匹敵する。

 加えて身長が高いし財力もあるわで、彼が望んで手には入らないものはほぼないんだろう。

 美形の人を恋人、配偶者にほしい心理って、美しい顔を見ていたい気持ちもあるだろうし、自分のステータスを上げるためでもある気がする。

 だから自分一人ですべてが完結している涼さんには、相手の美醜はあまり意味がないんだろう。

「胃袋を掴むつもりで『手料理作ってあげる』って言われても、俺も料理はできる。尊と一緒にプロから料理を学んだし、縫い物もできる。部屋の掃除なんかは人を雇えば素人がやる以上に綺麗にしてくれるし、家事ができるってアドバンテージは俺にとって意味がない。結局……、言葉は凄く悪いけど、生物学的に女性である事ぐらいしか求めてないんだ」

「はぁ……、人が持つ魅力をそぎ落としていくと、そうなるんですね」

 本人はいやみに思われる事を気にしているみたいだけど、ここまでくると逆に感心するしかなくなる。

 多分人って、自分より僅差の人に対しては嫉妬するけど、ずば抜けて秀でている人にはあまり嫉妬する感情が湧かないんじゃないだろうか。

 ……いや、でもSNSで有名人に噛み付いている変な人はいるから、全部が全部とは言えないけど。ネットの場合、距離感がバグっちゃうんだろうな。

 多分実際にこうして対面したり、豪邸を拝見する機会があると、得る感覚は違ってくる気がする。

「だから無欲に近いって言われると、そうかも。最近は性欲のほうも、運動して健康的な飯を食ってたらそれほど感じなくなって、『ちょっとヤバいな』と思いつつも『健康的でいいのかな』と諦めてきたり……」

「なんの話してるんだよ」

 尊さんは呆れて溜め息をつく。

「だから女性と同室になっても、アクシデントなしに宿泊できる自信があるって事なんですね。確かにその状況になったら、涼さんを意識するのは女性側かも」

 言ってから恵を思いだし、「彼女の好きな人は私だしな……」となる。

 そもそも恵も中学生の時に痴漢に遭ってから、男性に対して少し懐疑的になっている。

 私を好きになってくれたとはいえ、今も彼女は皆の人気者で、男友達も多いし、なんなら告白される事もあるそうだ。

 でも「興味ない」の一言で断っているらしく、「そんな彼女が涼さんと会ったら、興味ない同士でどんな作用が働くんだろう?」と興味を持ってしまう。

「だから大体の人には、フラットに接する事ができる自信があるよ。あからさまに好意を見せてくる女性には、ちょっと塩対応になると思うけど」

 その言葉を聞いて、「あ……」と感じた事があった。

 嫉妬する人たちが『あいつ自慢してる』と僻む時、相手は本当にナチュラルに普段通りの行動をしているだけなんだろう。

 そもそも、涼さんたちみたいに満たされている人は、何かを自慢してマウントをとる必要がないんだよな……。

(やっぱり受け取り手の問題だ。私もちょっと体調悪かったり、ムシャクシャしてると、どうでもいい事に腹立ててしまうから気をつけよう)

 そう思いつつ、私は恵の事を紹介する。

「一緒に行きたいと思ってる人、中学生からの親友で、会社の同僚の中村恵っていう子なんです。彼女も基本的に男性に興味はないので、涼さんが危惧する事態にはならないと思います」

「そっか、じゃあランドいつでも楽しみにしてるよ。中村さんも俺も、お互いなんとも思っていないとしても、同じ部屋に泊まるのは気まずいから、女子同士で泊まったほうがいいと思うけど」

「は、はい。……ソウシマス……」

 先ほどのナチュラルな勘違いを指摘され、私は赤面して頷く。

 私は照れ隠しにカクテルを飲んだあと、おつまみの唐揚げに手を伸ばしつつ話題を変える。

「大学生時代の尊さんの情報、他にも聞きたいです」

 そう言うと、尊さんは大きな溜め息をつき、涼さんは楽しそうに笑った。
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