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女子会 編

御利益

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「今頃どうしてると思う?」

「可愛い恋人の太腿を見て、ムラムラしちゃってたりして! ヒヒヒヒ!」

 大喜びしている春日さんを見て、私はアカリンが尊さんによってもみくちゃにされている妄想をする。……いやいや。

(それにしても、春日さんにいい相手が見つかるといいけどな。誰か紹介できたらいいけど、私にはそんなツテはないし……)

 そう思った時、フワッと神くんの顔が思い浮かんだ。

「ん?」

 思わず口に出してから、私はスナック菓子をサクサク囓ってから「うん」と頷く。

 いいかもしれない。

 ……でも神くんは曲がりなりにも私を好きだと言ってくれた訳で、私から彼に「春日さんってお嬢様がいるんだけど、どう?」なんて残酷でなかなか言えないな……。

(でも、なんとなく合いそうな気がする。神くんはオラオラじゃないし、物腰柔らかなほう。でもしっかりしてるし自分の意見も持ってるから、彼ならバブちゃんにはならないんじゃないかな。それに御曹司にお嬢様で、いいんじゃない?)

 とてもいいカップルに思えたけれど、問題はどう引き合わせるかだ。

(二人とも自分の矜持を持っているから、下手な事はできないな……。そして何より、私から働きかける事は神くんへの裏切りだ)

 仮に私が尊さんに片思いしているとして、振られたのに彼から「いい相手がいるんだけど、どう?」なんて言われたら、悲しさと屈辱でおかしくなってしまう。

(あの時、神くんは軽い感じで話してたけど、どれぐらい私を真剣に想ってくれていたんだろう? 御曹司の彼なら、親御さんが相手を用意してもおかしくないし……)

 考えれば考えるほど、神くんとよく話しておけばよかったと後悔してしまう。

(けど今の私には、彼に『話できない?』と言える権利はない。尊さんに相談してみる? でも彼に神くんの相談をするのも変な話だし……)

 グルグル考えていると、春日さんに押し倒されてしまった。

「えっ!? ちょっ……」

 びっくりしたままソファの上に仰向けになると、春日さんが髪を掻き上げニヤニヤ笑っている。

「悪いのはこのぱいか!」

「ぱいは無実!」

 知らない間に話が転がっていったらしく、私は両手でバッと胸元を守る。

「???」

 訳が分からずエミリさんを見ると、裂けるチーズを丁寧に裂いてフサフサにしている彼女は首を竦めた。

「難しい顔をして黙ってたけど、考え事? こっちはサカリティなミコティの話で持ちきりだったんだけど」

「朱里さんは自慢のぱいがあるからいいわよねぇ……。柔らかくて愛撫のしがいがあるわ。私はいつだったか、男に『アスリートみたいな体をしてるね』って言われたわ……」

 春日さんは自分の胸に手をやり、溜め息をつく。

「……という事で、巨乳に触ったら御利益があると思って……」

「ないないなー……、ファ!」

 片手を顔の前でブンブンと振っている隙を突かれ、春日さんに両手で胸を揉まれてしまった。

「っあ~~~~……、やぁらかいわぁ……。このひと揉みのために生きてる」

「「おっさんか!!」」

 私とエミリさんの声がハモった。

「でも速水さんだってそう思ってるに決まってるわよ。極上だもの、この乳は。揉みごたえ抜群、健康と安眠も促進してくれそう」

「や、そんな御利益ないっす」

「あ~~~、この乳私のものにしたい。どう? うちの子にならない? 可愛がるわよ? エステでピカピカにしてあげる」

「や、私の乳は私のもんなので、所有権は渡さないっす」

「やーん、朱里さんごとほしい! レンタルさせて!」

「尊さんに聞いてください! もぉ!」

 強引に起き上がった私は、春日さんの両頬を摘まんでムニムニする。

「このこのこの!」

「きゃ~!」

 友達にこういう事をされた事がないのか、春日さんはめちゃくちゃ嬉しそうに声を上げる。

「ぱんちぱんちぱんちぱんち!」

 調子に乗った私は、さらに春日さんの肩を両手でポンポコとパンチラッシュした。

「ヒヒヒヒヒヒ」

「お、喜んだ」

 エミリさんが突っ込み、その様子を動画に撮っている。

「速水尊、送信」

「えっ!?」

 まさかまた尊さんに送られると思っていなかったので、私は声を上げてエミリさんを見た。
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