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女子会 編
〝そっち〟の話
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「いいわね、結婚前の挨拶。で、速水さんとはラブラブ? エミリさんも、風磨さんとラブラブ? お泊まりで女子会なんだから、〝そっち〟の話も勿論してくれるわよね?」
そう言って、春日さんはわざとらしくリング状のスナック菓子を指に嵌めて、スポスポする。
……この人、思った以上におっさんだ!
私は思わずエミリさんと顔を見合わせ、「困ったぞ……?」という顔をする。
「『奢ってるんだから』アピールはしたくないけど、お代として何か一つエピソードはちょうだいよ。私、そういうのに飢えてるの!」
いい感じに酔いが回ってる彼女は、胡座をかいている太腿を両手でバンバンと叩く。
「……っていうか、春日さんはどうなんですか? ホテル代も払ったって事は、〝そういう事〟してるんでしょう? 私たち、バブちゃんになった男が、どういうプレイをするのか気になってるんですよね~」
自分の話ならしやすいだろうと思って、エミリさんが水を向けたけれど、春日さんは上を向いて大きな口を開け、生ハムを投入……しようとして固まった。
……おや?
固まったあと、春日さんは生ハムを口に入れ、もっしゃもっしゃと食べながら、私たちを見ずに遠くに視線を向ける。
「……何かありました?」
コソッと囁くと、彼女はもんのすごい顔をして私を見てきた。
はい、何かあった顔ですね。
「この女子会でしか吐けない愚痴がある」
エミリさんが何かのキャッチコピーのように言い、キリッとした顔で春日さんにサムズアップしてみせる。
「言いづらい事かもしれないけど、吐くなら今ですよ? すべてここだけの話ですし、外部には広がりません。愚痴を吐くなら今!」
私もテレビショッピングの司会のように畳みかける。
春日さんはしばらく私を見て固まっていたけれど、ガクッと項垂れて呟く。
「………………ないの…………」
「はい?」
よく聞き取れなかった私は、彼女の顔を覗き込む。
すると、春日さんはガバッと顔を上げ、私の両手を掴んで訴えかけてきた。
「してないの!」
「はい!?」
「セックス! してない!」
春日さんはこの世の終わりみたいな顔をして白状したあと、「ああああああ……」と呪いのビデオから出てくるような声を上げて私に寄りかかってくる。
エミリさんはオリーブをポンと放って口でキャッチし、冷静に言う。
「ド下手だったんですか?」
彼女はエミリさんに助けを求めるような目を向けてから、私の手を握ったままボソボソと言い始めた。
「……してないから、処女で慣れてない訳よ。乳首なんて舐められても、慣れてないから痛いし、アソコに触られても羞恥のほうが上回って、怒りに似た感情がこみ上げてくるの」
……あぁ、大分こじらせてる。
「しかも『気持ちいい?』なんてハァハァしながら尋ねてくるから、くっそ腹立って、めっちゃ低い声で『気持ちくないわよ、ど下手くそ』って言っちゃうの。……一発で泣いて帰るわね。…………そのあとルームサービスで頼んだ、シャンパンの苦さときたら……」
しみじみと言う春日さんの話を聞き、エミリさんが耐えきれずに噴き出し、咳き込んでから笑い始めた。
「……っ、ごめ……っ! 駄目だ……っ、おっかし……っ」
「むっぷん」
我慢してたのに、エミリさんが笑うもんだから、私も横を向いて全力で口をひん曲げ、鼻水をブヒュッと噴射してしまった。
「ほら笑った~~~~」
ぶっすー! とふてくされた春日さんは、パーティー開けしてあるポテチを鷲掴みにして、口の中に突っ込んだ。
私たちが笑い転げてる間、春日さんはバリバリとポテチを食べ、シャンパンを手酌して一気飲みしてから言った。
「だから私は成功者の話を聞きたいの! 恥を忍んで私の話をしたんだから、言え!」
あまり虐めるのも可哀想なので、ひとしきり笑った私とエミリさんは、顔を見合わせてから「どっちから言う?」と視線を交わし合う。
笑ったあとは申し訳なくなったので、私から先に挙手して口を開いた。
「私、そんな人様に偉そうに言える経験者じゃないんですよ。尊さんは二人目の彼氏で、一人目は……うーん……、独りよがりな感じで痛かったんです。いわゆるガシガシ系で、一人で盛り上がって一人で先にイッて、私の気持ちよさなんて考えてくれなかった。それこそ、春日さんのお相手みたいに『気持ちいい?』って聞くだけ聞いて、あとは無視……みたいな感じでしたね」
「……でも速水さん、上手いんでしょ? あの人は顔がやらしい」
「ぶふぉっ」
「顔がやらしい」と言われて、私は吹きだしてしまい、ちょっとツボに入ってソファに倒れ込んでプルプル震える。
そう言って、春日さんはわざとらしくリング状のスナック菓子を指に嵌めて、スポスポする。
……この人、思った以上におっさんだ!
私は思わずエミリさんと顔を見合わせ、「困ったぞ……?」という顔をする。
「『奢ってるんだから』アピールはしたくないけど、お代として何か一つエピソードはちょうだいよ。私、そういうのに飢えてるの!」
いい感じに酔いが回ってる彼女は、胡座をかいている太腿を両手でバンバンと叩く。
「……っていうか、春日さんはどうなんですか? ホテル代も払ったって事は、〝そういう事〟してるんでしょう? 私たち、バブちゃんになった男が、どういうプレイをするのか気になってるんですよね~」
自分の話ならしやすいだろうと思って、エミリさんが水を向けたけれど、春日さんは上を向いて大きな口を開け、生ハムを投入……しようとして固まった。
……おや?
固まったあと、春日さんは生ハムを口に入れ、もっしゃもっしゃと食べながら、私たちを見ずに遠くに視線を向ける。
「……何かありました?」
コソッと囁くと、彼女はもんのすごい顔をして私を見てきた。
はい、何かあった顔ですね。
「この女子会でしか吐けない愚痴がある」
エミリさんが何かのキャッチコピーのように言い、キリッとした顔で春日さんにサムズアップしてみせる。
「言いづらい事かもしれないけど、吐くなら今ですよ? すべてここだけの話ですし、外部には広がりません。愚痴を吐くなら今!」
私もテレビショッピングの司会のように畳みかける。
春日さんはしばらく私を見て固まっていたけれど、ガクッと項垂れて呟く。
「………………ないの…………」
「はい?」
よく聞き取れなかった私は、彼女の顔を覗き込む。
すると、春日さんはガバッと顔を上げ、私の両手を掴んで訴えかけてきた。
「してないの!」
「はい!?」
「セックス! してない!」
春日さんはこの世の終わりみたいな顔をして白状したあと、「ああああああ……」と呪いのビデオから出てくるような声を上げて私に寄りかかってくる。
エミリさんはオリーブをポンと放って口でキャッチし、冷静に言う。
「ド下手だったんですか?」
彼女はエミリさんに助けを求めるような目を向けてから、私の手を握ったままボソボソと言い始めた。
「……してないから、処女で慣れてない訳よ。乳首なんて舐められても、慣れてないから痛いし、アソコに触られても羞恥のほうが上回って、怒りに似た感情がこみ上げてくるの」
……あぁ、大分こじらせてる。
「しかも『気持ちいい?』なんてハァハァしながら尋ねてくるから、くっそ腹立って、めっちゃ低い声で『気持ちくないわよ、ど下手くそ』って言っちゃうの。……一発で泣いて帰るわね。…………そのあとルームサービスで頼んだ、シャンパンの苦さときたら……」
しみじみと言う春日さんの話を聞き、エミリさんが耐えきれずに噴き出し、咳き込んでから笑い始めた。
「……っ、ごめ……っ! 駄目だ……っ、おっかし……っ」
「むっぷん」
我慢してたのに、エミリさんが笑うもんだから、私も横を向いて全力で口をひん曲げ、鼻水をブヒュッと噴射してしまった。
「ほら笑った~~~~」
ぶっすー! とふてくされた春日さんは、パーティー開けしてあるポテチを鷲掴みにして、口の中に突っ込んだ。
私たちが笑い転げてる間、春日さんはバリバリとポテチを食べ、シャンパンを手酌して一気飲みしてから言った。
「だから私は成功者の話を聞きたいの! 恥を忍んで私の話をしたんだから、言え!」
あまり虐めるのも可哀想なので、ひとしきり笑った私とエミリさんは、顔を見合わせてから「どっちから言う?」と視線を交わし合う。
笑ったあとは申し訳なくなったので、私から先に挙手して口を開いた。
「私、そんな人様に偉そうに言える経験者じゃないんですよ。尊さんは二人目の彼氏で、一人目は……うーん……、独りよがりな感じで痛かったんです。いわゆるガシガシ系で、一人で盛り上がって一人で先にイッて、私の気持ちよさなんて考えてくれなかった。それこそ、春日さんのお相手みたいに『気持ちいい?』って聞くだけ聞いて、あとは無視……みたいな感じでしたね」
「……でも速水さん、上手いんでしょ? あの人は顔がやらしい」
「ぶふぉっ」
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