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女子会 編

すき焼きパーティー

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 ポンと送信してから、「我ながら可愛げのないメッセージだな」と反省した。

 尊さんは私が兄妹と仲良くやっていく事を望んでいる。

 彼の望みを叶えて安心させてあげたいのに、まだ私の心には燻りが残っていた。

(……だって本当に、買い物してる時に近くに立たれるとか、怖かったし嫌だったんだもん)

 亮平と和解したのはちょっと前だし、積もりに積もった鬱憤を「今日からなかった事にしましょう」とするのは、ちょっと無理がある。

(『すぐには無理だけど、努力する』って言おう)

 尊さんの言う事はすべて聞き入れたいけど、どうしても生理的に無理な事もある。

 そこはお互い、話し合っていけたらな、と思った。



**



 家に帰ると町田さんが来ていて、尊さんからすでに連絡を受けていたのか、すき焼きの準備を始めていた。

「アルコールも入るかと思うので、おつまみも作っています」

 町田さんはそう言って、キッチンでテキパキと働いていた。

「……亮平、……兄は車なんですが、どうでしょう……」

 町田さんの了解を得てサーモンのカナッペを一つつまんで尋ねると、彼女は微笑んだ。

「速水さんの事ですから、運転代行サービスを頼まれるかもしれませんね。勿論、お兄様の了承があればですが」

「あ、なるほど……」

 確かに、気遣いの人尊さんらしい選択だ。

 多分、恵が帰る時もタクシー代を渡しそうな気がする。……恵は「パパ活か」って突っ込みそうだけど……。

「お手伝いしますね」

「あら、ありがとうございます」

 私は着替えたあとに手を洗い、町田さんの手伝いを始めた。





 ほどなくして恵が来て彼女も手伝いに参加し、尊さんが帰宅してお土産を持った亮平も現れた。

 尊さんは「サシ肉の脂がきつい」というので、彼は赤身肉でのすき焼きとなり、私たちはサシの入ったA4ランクのお肉を「うまいうまい」と言ってつつき、ビールを空けた。

 恵にお土産を渡し、車を持ってるから私より頻繁に実家に行ける亮平にも、皆の分のお土産を託した。

「朱里~、今度は私と女子旅しようね~」

 酔っぱらった恵が私の腕を組み、尊さんを挑戦的に見ながらわざとらしく言う。

「行く行く!」

 そんな私たちを、尊さんはじっとりとした目で見る。

「みと子はハブにするの?」

「ぶっふぉん!」

 尊さんがいきなり〝みと子〟と名乗り始め、私は盛大に噴きだしてからテーブルをバシバシ叩いて笑う。

「亮子も連れてって」

 亮平まで悪乗りしてきたけど、私はスンッと真顔になって「キモい」と言っておいた。

 そんな感じで急遽集まってのすき焼きパーティーは和やかに行われ、町田さんが予想していたように、亮平は運転代行で帰り、恵は「パパ活」と言いながら尊さんにタクシー代を渡され、タクシーで帰っていった。



**



 一週間が過ぎるのはあっという間で、つよつよ女たちによる女子会当日となった。

 土曜日のお昼過ぎ、私は東京駅まで行って『シャングリ・ラ東京』のザ・ロビーラウンジに向かう。

 ロビーと言うと一階を想像しがちだけど、このホテルはビルの上階にあるので、向かったのは二十八階だ。

 私は黒いタートルネックニットに黒いロングタイトスカート、その上にチェックのダブルボタンジャケットを着ていった。

 五つ星ホテルに入って緊張していると、窓際の席で春日さんが手を挙げてニコニコしている。

(わ……、二人とも装いがフェミニンだ)

 春日さんは髪をハーフアップにして巻き、ヌードカラーのワンピース、エミリさんはアレンジ纏め髪に、紺色に小花柄のついた大人っぽいシフォンワンピースを着ている。

 私は一人だけマニッシュになってしまい、「場違いだったかな」とちょっと恥ずかしくなってしまった。

「ちょっとぶり!」

 春日さんは立ちあがって私にハイタッチしてきて、どんなテンションなのかよく分からないまま、私もハイタッチ
を返す。
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